14 リン・フェリキタス
「おい村長!!一体どういうつもりだ!?」
「仕事を依頼しているだけだ、リン。それに前に言ってただろ?仕事を手伝える人手が欲しいと」
「たしかに言ったけど!こんなヒョロヒョロ娘に何ができんのさ!?見るからに弱っちぃ。それに…」
と、2人は後ろを向いてヒソヒソ声で話し始めた。
「知ってるだろ?あたしは貧乏なんだ。ガキ一人育てる金なんてどこにもねぇよ」
「そこに妙案だ!リン。彼女が乗っていた無機物。あれの売買権をお前にやろう」
「本当か!?」
「あぁ、依頼料として受け取ってくれ。その代わり、責任を持って彼女を育てるんだぞ」
すると、リンさんはクルッとあたしに向きを変えた。
「お前を家に置いてやっても構わんことになった」
「え?」
「あとはお前の意思だ。無理強いはしねぇ。来んのか?来ねぇのか?」
あたしが戸惑っていると、村長とドクターがあたしに声をかけた。
「大丈夫だ、アレンちゃん。リンは元軍人。子供のお前を卑下に扱うことはない」
「あいつは見た目よりいいやつさ」
「ほんとうに…?」
「あぁ!もし何かあったらいつでも私の元に来なさい。歓迎するよ、アレンちゃん(‼︎)」
(今の言葉…本心じゃない)
悪い人ではないのかもしれない。
実際あたしの看病をしてくれた優しい人たちだ。
でもこの人たちは完全に、あたしをリンさんに押し付けようとしてる。
「…」
あたしは勇気を出して言った。
「リンさん、あたしを家に置いてください」
するとリンさんは村長の方を向いて
「…村長。さっきの話、忘れんなよ」と釘を刺した。
「もちろんさ」
「来い」
リンさんは顎であたしに指示をした。
ドクターはもう一度あたしのおでこに手を当てると
「熱は下がったな。すごい回復だ。おめでとう、退院だよ」
「…ありがとうございます」
ベッドを降りて外に出ると、そこには建物をたくさんの人が取り囲んでいた。
人々はあたしを見ると、ワァー!!と歓声を上げた。
「な、何??」
「ここの村人たちさ。君を歓迎してるんだよ」
みんながあたしに声をかけてくれる。
「よく頑張ったな少女ー!」
「大変だったでしょ?ゆっくり休みなさいね!」
かけられるのはどれも温かい言葉ばかりだ。
素直に嬉しかった。けど。
「おい!早くしろ!!(‼︎)」
リンさんの声がその声を掻き消す。あたしは思わず肩をビクッとさせてしまった。
「い、今行きます!」
あたしは群衆に向かって一例し、リンさんの元に向かった。
「リンなんかに任せて平気なの?」
「可哀想に。下手なことが無ければいいが」
去り際、そんな不安な言葉だけが最後にあたしの耳に残った。
・・・・・
「ハァ…ハァ…」
遠い。こんな険しい道を何分歩いてるだろうか。
リンさんはペースを落とさずさっさと進んじゃう。見失わないので精一杯だ。
(でも弱音を吐いたらきっと捨てられちゃう…とにかくついてくんだ!)
それからさらに時間が経ち、リンさんは足を止めた。
「着いたぞ」
「ハァ…!」
辿り着いたのは丘の上の小さな家だ。
「意外とタフだな。辺鄙な道を選んだつもりだったが」
「わざだったの!?」
「そうさ、途中でへばってついてこないと思ったからな」
「あたしを試してたの!?」
「そうだと言ったろ?悪いが、あたしは弱い奴が大嫌いだ。あたしんとこに居たいなら、常にてめでが強いことを証明しろ。でなけりゃ出てけ」
吐き捨てるようにそう言って、リンさんは家に入った。
どうしよう、この人と上手くやってける気がない。でも。
あたしは意を決して家の扉に手をかけた。
部屋は本当に小さかった。ウッド調でこじんまりとしている。でも不思議と居心地が悪いとは思わなかった。
「そこ、座れ」と、あたしは椅子を勧められた。
「簡単な質問すんぞ。名前は?」
「アレン」
「歳は?」
「6歳」
「どっから来た」
「1年中雪が降る島。無人島…って言ってたかな」
「親は?」
「いないよ」
「親を探してぇって言ってたな。いねぇ親をなんで探すんだ」
「カノンさんと約束したから。あたしに名前を付けてくれた親を探すって。それに…あたしも会ってみたいし」
「お前を捨てた親に、か?」
「絶対理由があるはずなんだ。そうじゃなきゃお包みにわざわざ子供の名前なんて書かない」
あたしは力強く言った。するとリンさんは、「ふーん」と小さく呟いた。
あたしの顔をじーっと見ている。そして唐突に
「なぁ、あたしが怖くないのか?」と、聞いた。
「え?」
「さっきから顔に書いてる。別に家なんていくらでもあんだ。あたしのこと本当に怖いって思うなら無理している必要はねぇ。出てけ。こっちも不愉快だ」
リンさんはプイッとそっぽを向いた。
(本当に不器用な人だな…)
あたしは恐る恐る、言葉を選びながら伝えた。
「怖くないって言ったら…嘘になる」
「じゃあ…」
「でも信じれるの。あなたの心は綺麗だから(‼︎)」
そう言うと、リンさんは目線だけこちらを向いて
「心が綺麗?」とあたしの言葉を繰り返した。
「リンさんは、あたしをあの船から助けてくれたんでしょう?人助けをする人が悪い人なはずがない。だからあたしはここに来たの」
これはあたしの心からの言葉だった。
そう言うと、リンさんはあたしから目を逸らした。
「…言ったろ。一回助けたくらいで恩義なんか感じんな」
「ご、ごめんなさい…」
しばらく沈黙が続き、リンさんが再び口を開く。
「どうしても、家がいいのか」
「うん」
「もっと裕福な家だってあるぞ」
「別にいい」
「あたしがこの村のハミ出し者でもか?」
「あたしの方がハミ出し者だよ(‼︎)」
そう言うと、リンさんはハァとため息を漏らした。
「分かった。なら、あたしから一つ提案だ」
そして、身を乗り出してあたしに言った。
「ここに住みたいなら、あたしと契約を結べ(⁉︎)」
今週もありがとうございます!
新しく登場したリンさん。これからの活躍が楽しみですねぇ〜。これからどんどんいいキャラになってくので乞うご期待!
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