13 ペティット村
朝8時。この時間に自然と体が起きる。
「んーーー!」
大きく伸びをして、布団を出る。
いつものようにパンを一枚トーストして、適当にあるものを頬張る。
窓を見ると、空が綺麗に澄み渡っていた。
「うん、今日は釣り日和だな!」
服を着替え、村に売りに行くための魚を釣るため、丘を下って海に向かった。
相変わらず気持ちのいい浜辺だ。
「…なんだ、あれは?」
海岸に降りてすぐに気がついた。
何か、黒い物体が浜辺に打ち上げられてる。
たまに船の残骸が打ち上げられてることはあるが、こんなものは今まで見たことがない。中は機械仕掛けだ。
「ははーん…こりゃあれだな?どっか遠い国でなんかの実験中、途中力尽きてここに流れ着いたんだろ?」
あたしはまじまじとそれを観察した。
「こりゃすげーな。売れば相当な高くつくぞ…村のやつには内緒でこっそり売りに行こう…ん?」
すると、あたしは箱のようなものが一つあることに気がついた。
財宝でも入ってんのかと思って蓋を開けたが、そんなウキウキした気分は一瞬にして消えた。
「ガ、ガキ!?!?」
な、なんでこんなとこにガキが???
いや、それよりも。
あたしはそいつの額に手を当てた。
体が燃えるように熱い。
「ハァ…ハァ……」
苦しそうに息をしている。
(クッソ、全力で走ってもこっから病院まで30分はかかるぞ…)
迷っている暇はなかった。あたしはそいつをそっと抱えて走り出した。
「くそ……おい!!くたばんじゃねぇぞ!!」
・・・
頭が霞んだようにぼーっとする。
「…!!!」
辺りが騒がしい。人の声がする。
(ゃん……じょぅちゃん……!)
遠くから声がする。その方に顔をゆっくり向けると、知らない男の人が隣に座っていた。
細身で白髪。長い髭と長い髪を上品に束ねている。
「お嬢ちゃん!あぁ、よかった!おいドクター!お嬢ちゃんが目を覚ましたぞ!!」
男の人はそう言うと、扉の奥から白衣を着たドクターと思われる男の人が現れた。
「あぁ本当によかった!お前さん3日間も高熱を出し続けてたんだぞ?何度命を落としかけてたか…」
「ここは…?」
「おっとそうじゃ、まずは自己紹介をせねばな?シトラトス」
「そうだな」
そう言うと髭の男性は席を立ち、丁寧にあたしに挨拶をした。
「初めまして。私の名はシトラトス・ド・フレイユ。この村の村長をしている。そしてこちらがドクター。この村唯一の医者だ」
「…ここはどこ?」
「ここはジョワブル王国の外れにあるペティット村。3日前、お嬢ちゃんは向こうの海岸で見つかったんだ。箱の中に入ってたと聞いたぞ?(‼︎)」
(そうだ、あたし…!)
記憶が早送りでフラッシュバックされる。
「カノンさんは!?みんなはどこにいるの!?」
「…残念だが、お嬢ちゃん以外は誰も乗っとらんかったぞ(⁉︎)」
あたしは肩をがっくりと落とした。
やっぱり、みんなはあの島に残っていったのか…
「ふむ。ではこの"カノン"というのはお嬢ちゃんの大切な人ということか。君の名前は…アレンで間違いないな?(‼︎)」
「どうしてあたしの名前を…?」
そう言って、シトラトスさんは手紙をあたしの前に取り出した。
「君と一緒に箱の中に入っていたんだ。いろんなことが書かれているぞ?アレンちゃんのことや養護施設のこと…そこで虐待を受け、逃げ延びるためにあの船に乗っていたことまでね(‼︎)」
手紙を受け取り、中身を見た。
文字は読めなかった。だけどそれは間違いなくカノンさんの字だった。
多分、実験のことやあの島のことは書かなかったんだ。
あたしが違う場所でも上手く生きていけるために…
あたしは手紙をギュッと抱きしめた。
いろんな想いが込み上げてくる。
あたしが物思いに更けているのを他所に、外はガヤガヤと騒がしくなっていた。
「そうだアレンちゃん。君に紹介しなければならない人物がいる。君の第一発見者だ」
「第一発見者…?」
「熱を出しているアレンちゃんを見つけて、ここまで運んできてくれたんだ。君の命の恩人だよ(‼︎)」
「痛ってぇな!!だからあたしはそいつの生存確認さえできればそれ以上関わる気は…!」
ドクターによって連れられて来たのは真っ赤な口紅をした若い女の人だった。高い位置で束ねているのに、髪はお尻の位置まで伸びている。髪の一部はピンク色に染まっていた。
「アレン、彼女はリン。リン・フェリキタス。リン、彼女はアレンだ」
「初めまして…リンさん。あたしを助けてくれたんですよね?その、ありがとうござ…」
「フンっ!昔のクセさ。恩義なんざ感じる必要ねぇよ(‼︎)」
あたしは震え上がった。
(こ、怖い…!女の人なのになんて口調で話すんだ!)
「リン、彼女はお前に感謝してるだけだ。その態度はないだろ。見ろ、アレンちゃんが怖がっているじゃないか」
「知るか!他人にどう思われようとざあたしの勝手だ」
するとドクターがあたしに「すまんな、昔から口調だけは人一倍悪いんだ」と小さく耳打ちした。
リンさんと村長がガミガミとケンカしてる。
こうして見ると改めて感じる。
あぁ、あたし、外に出たんだ。知らない場所、知らない人達の中で生きてかなきゃいけないんだ。
(こうしちゃいられない…)
「あの!この村にいさせてください!!(‼︎)」
そう言うと、3人はあたしに視線を向けた。
「何でもします!あたし、お父さんとお母さんを探さなきゃいけないの。2人を見つけるまであたし、生きなきゃいけないの!!」
そう言うと、村長はドクターと目を合わせて困った顔を浮かべた。
「ここにいるのは構わないんだが…」
「すまんがわしゃ無理だぞ!患者の看病で手いっぱいなんだ」
「どこだって平気よ!いさせてくれるだけでいいの!」
「だがこんな小さな娘を放っておくわけにもいかんだろ…うむ……」
村長はしばらく考えて「そうだ、リン!」とリンさんの名前を呼ぶ。
そして…とんでもない提案をあたし達にしてきた。
「お前がこの子を育てなさい(⁉︎)」
微笑ましく笑っていたが、あたし達は全く同じタイミングで反応をしてしまった。
「は!?!?」「え!?!?」
新章始まりました!これからもドキドキワクワクな展開が待ってるのでお見逃しなく!
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