11 最後の希望
「くそっ…!」
ダスクとハーヴィの猛攻からレイブンは抜け出せないでいた。
カノンさんはなんとか立ち上がったものの、ガクンと膝が折れた。
倒れかけたところを何とかあたしが支える。
「カノンさん!!」
「ごめん…大丈夫」
カノンさんは再び体勢を整え、あたしと手を繋いだ。
「行こう…2人が時間を稼いでくれてる」
「でもどこに?船はもうどこにも…」
「いえ、あと一つだけ…本当に一つだけある(‼︎)」
カノンさんは空いている片方の手で壁をつたってラボの裏口に回った。
まだこっちまで火は回っていなかった。
しばらくして止まり、壁についている雪を払い、そこにあったボタンを押した。
ウィーーンと小さな扉が開く。
「ここは?」
「備品倉庫。私が過去に失敗したガラクタがしまわれてる」
カノンさんはそしてその中の一つを点検し始めた。
「それが船?」
「えぇ、そうよ」
カノンさんが船と呼ぶそれは、あたしが思い浮かぶ船とは全く形が異なっていた。
「これは私が一番最初に作った全自動船。普段使ってる生活物資を輸送している船の前身よ」
「いつも使ってるやつはどこにあるの??」
「破壊されたわ。でも、ここにこれがあることはさすがに父も覚えてなかったみたいね」
点検が終わって、カノンさんはスイッチを入れた。船の電源が入る。
「アレン、この箱の中に入って。この中には断熱材が入ってるから…島を囲む火に炙られることはない」
「わかった」
あたしは言われた通り箱の中に入った。
「どうしてこれが失敗作か、分かる?」
「ううん」
「ブレーキが効かないの。一度エンジンをかけるとどこかにぶつかるか、エンジンが完全に停止するまでこの船は止まらない」
「え、じゃあ次の島に辿り着く前に止まっちゃったら…」
急に不安が襲いかかる。
「大丈夫。燃料の量と風向き、潮の流れからこの船があなたを連れて行ける最大の距離を計算した。必ず人のいる島に辿り着ける」
「そっか…カノンさんが言うなら間違い無いね!」
カノンさんは悲しく笑った。
「じゃあ、エンジンをかけるわよ…」
「待って、カノンさんは?」
そう言うと、カノンさんはピタッと手の動きを止めた。そして小さく「ごめん…」と呟く。
「私は一緒に行けない(⁉︎)」
突然の告白に、あたしは動揺を隠せなかった。
「なんで!?どうして!?」
「あの子達がまだ戦ってる。置いて逃げれるわけないでしょう?」
「だったらあたしも残る!!」
「いいえ、あなたは行くのよ」
口調からして、カノンさんはずっと前からそう決めていたようだった。
「あなたをここから逃がすことが…私たちの使命なんだから」
「じ、じゃあ、みんなで逃げよ!まだ燃えてない船があるかもしれない!!」
「ふふっ、無茶言わないで…この島で残ってる船はこれ一隻よ。全員で乗るには小さすぎる」
そんな…他に方法は…!
思い詰めてると、カノンさんはあたしの頬にピタッと右手を当てた。
その手は、溶けてしまうくらい温かくて…
「ここでお別れよ、アレン(⁉︎)」
今週もご愛読いただきありがとうございました!
次回、ラボ編来週回です。2人の運命はいかに…!
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