暴君 ~行動開始編~
束の間の休息の時間を得た主人公一行。主人公の魔族達に対する警戒は、果たして杞憂で済むのでございましょうか?
第四章 第八部<暴君 ~行動開始編~>、どうぞ最後までお楽しみにくださいませ。
それから、3日間。徹底して怠惰な時間を過ごした。
勇者との戦いが長期化する可能性考えて、しばらくはゆっくりと可愛がってもらえなくかもしれないからというセレアの言葉に、全員がこれから先の分の前倒しを希望。俺を筆頭に快楽に溺れまくったのだ。例の危険な服も出番を与えられて、俺の理性は完全消滅。食事中と睡眠中意外の時間の9割は誰かと繋がっていたんじゃなかろうか。
我ながら、どんだけだ。10代の頃でも、ここまで元気じゃなかったぞ。この回復力は絶対にチートが働いてる。
まぁ、セレアの蕩けたような表情が筆舌に尽くし難いくらいにエロ可愛いせいでもあるんだけど。この表情が見たいが為にセレアを徹底的にイジメてしまった。それをリア達がおもいきり妬くんだけど、妬き方がまた超絶に可愛いんだよ。おかげで、ブレーキをかけるどころか、加速に加速がかかって止まれない、止まらない。
そんな感じに連戦が続いたんだけど、インターバルというものが必要ないってのは素晴らしい。魔法とか戦闘とか、チートのおかげでいろいろ助かってるけど、何よりもこれに関してが俺にとっては最高に嬉しいかもしんない。
「なんか、ヤればヤるだけハマってくから、前倒しにしても結局欲求不満になりそうよねぇ」
「うん。でも、勇者を殺っちゃうのはダメだもんね」
「勇者さんは王国が召喚して迎え入れた方なだけに、殺してしまうと返って落ち着けなくなりそうですから仕方がありません。何より、ご主人様が望んでらっしゃいませんから」
「まぁな。やっぱり殺人ってのには抵抗強いから」
「こちらの世界でも戦闘以外での殺人はご法度ですから、タカシ様のお気持ちは分かっているつもりです。ですから、その点は安心してくださいね」
「ありがと、リア。でも、自分の身が危ない時は別だからな? 俺のいた世界は平和ボケできる環境だったけど、ここではそうじゃないのは理解してる。何よりも大切なのは皆の命だ」
「「「「はいっ」」」」
「うん。それじゃ、もう呼ぶ? ルーゲンブ達を」
「そうだな。無理矢理に区切らないと、この生活をいつまでも続けちまいそうだし」
「あ、でも、その・・・勇者さんの件が片付きましたら、またこのような時間が欲しいです」
耳と尻尾を丸めて赤くなりながら言うセレア。
あぁっ、もうっ! 本気で理不尽なくらいに可愛いなぁっ!!
「うん。俺もそうだよ。だから、無理にでも区切らないと中断もできないんだしな」
「はっ、はいっ」
「でしたら、慎重に充分気を付けて、早くに終わらせないとですね」
「うんっ。主さまに触れてもらったり触れたりするの、大好きだもん」
「ん、んん。んじゃ、ジェラルリード、頼む」
リアとシャーンの明るい調子の声に顔が少し熱くなってしまい、話を逸らすようにしてジェラルリードに遠話の魔法を頼む。
いちいち照れくさくなるような事を言うんじゃないっ。またニヤニヤしちゃうだろっ。
「はいはい。≪彼の者に我が声を届けよ≫」
『む? タカシ殿達か?』
「ええ。ありがと。ゆっくりと休ませてもらったわ」
『うむ。それならばよかった。では、そちらに向かわせてもらおう。着いてから話を進めさせてもらいたい』
「りょーかい。どれくらいで着くのかしら?」
『半日弱、といったところだな』
「おっけー。じゃ、待ってるわ」
『ではな』
「だってさ。ちょっと時間あるわね」
「そうだな。まぁ、ゆっくりしよう。話が終わったら行動に移すんだしな」
「「「「はい」」」です」「うん」
全員の返事が重なり、自然と理性が飛ばない程度にイチャイチャして時間を潰す事に。
これが日常化してるなぁ。メチャクチャ照れくさいけど、幸せ
そして、夕暮れ前にルーゲンブさん達が到着。食堂で向かい合って座る。
「さて、では結論を聞かせてもらおう」
「ああ。せっかくの申し出だけど、俺達は逃げない。勇者の性根を叩き直す方向で動くよ」
俺の言葉に、ルーゲンブさんは渋い顔をする。
「言わせてもらうが、考えが甘いのではないか? タカシ殿達をここに連れてきた後、1度だけだが、あのバケモノと対峙した。アレは少数で対抗できるようなものではないぞ」
「なに、真正面からぶつかるつもりはないさ。俺は臆病者なんだ」
「臆病者だというのならば、なおさら奴とは事を構えるべきではないぞ。我らは一族総出で奴を討つ。逃げるのが矜持が許さんというのならば、せめてそれに加わってはどうだ?」
「おいおい。いくら何でも共闘は無理だろ。魔族全体にとっては、俺は敵対種族の1人に過ぎないんだから、確実に混乱を招くぞ」
「しかし、妹の命の恩人を黙って死地に赴かせるわけにはいかん。考え直せ」
「ふむぅ・・・心配はありがたいんだけど、俺達の事、ちょっと見縊ってるんじゃないか? ≪望む場所へ導け≫」
転移魔法が発動して、俺の姿がルーゲンブさんの後ろに現れる。それを見て、ルーゲンブさん達全員が絶句する。
「俺も大概バケモノだと思うぜ?」
「ご主人様は何かと規格外ではありますが、バケモノなどではありませんっ」
「響きが悪過ぎますっ。冗談でもご自身の事をそんな風に言わないでくださいっ」
俺の似合わないと自覚ありな強気なセリフに、セレアとリアから即行でダメ出しがきてしまった。2人共、ちょっとマジで怒ってるし、ジェラルリード達からも睨まれてたりする。
いや、あの、単に勇者に対抗できるよ~って意味で同じ単語を使っただけだったんだけど・・・まさかそこにそんな反応をされるとは・・・
「ご、ごめんごめん。単に勇者と同格だって表現をしただけだったんだけど」
セレア達に謝りながら元の席に戻る。
「だからって、勇者と同じように言わないでよ。言葉の上だけでもあのクソガキと同じにされるのは胸糞悪いったらないわ」
「うぃ。気を付けます」
俺の言葉の後に、何故かルーゲンブさんは頭を抱えてしまう。
「・・・・少なくとも、タカシ殿の魔法の腕前はレーシャ達の報告以上のものだというのは理解したが・・タカシ殿の振る舞いは、やはり強者のそれとは掛け離れているな・・・・種族としての慣習の違いもあろうが、もう少し何とかならんのか? 見ていて、強さを誇る我らが何やら愚かにすら思えてきてしまうぞ」
「まぁ、そこは俺の性格上の問題だろうからなぁ。テキトーにスルーしといてくれ」
「ハァ・・・・まぁ、よい。話が逸れてしまったな。では、タカシ殿の意志は変わらぬのだな?」
「ああ。好意を無下にして悪いけど」
「・・・分かった。もうこれ以上は言うまい。武運を祈る」
「ありがとう。まぁ、策もあるし、なんとかなるさ」
「うむ。では、具体的にはこれからどうする?」
「とりあえずは、リブラレールを物資補給の拠点にして、あとは通り魔的な感じで勇者を痛め付ける。あぁ、念の為に言っとくけど、殺す気はないぞ。人殺しは御免被るからな」
「通り魔とはまた・・・しかし、それでは満足に休む場所も得られんのではないか?」
「そんなに長期に渡るとは思ってないし、そうなっちまいそうなら適当に中断と再開を繰り返すだけさ」
「では、この拠点を使ってはどうだ? 我らは我らで奴を討つつもりではいるが、当面は戦力の増強に時間を費やす事になろう。そうなれば、この拠点は当分は空き家となるだけだからな」
「マジで? いいのか?」
「構わんよ。我らの行動が開始されるまでの期間にはなるがな」
「助かる。甘えさせてもらうよ」
「なに。これはこちらの利があっての申し出だ。貴殿らが勇者の戦力を削ってくれるのならば、我らとしてもありがたい」
サラリと言うルーゲンブさん。
なるほど。俺達が勝とうが負けようが、勇者と戦闘になって少しでもあいつに痛手を与えてくれれば自分達の被害を減らせるって考えてるわけか。それなら、中途半端に中断されるよりも継続的に戦ってくれてる方がいいわな。しっかりしてる。
それからさらに、物資の補給|(主に食料と水)を申し出てくれて、それを俺があっさりと受けた後、ルーゲンブさん達は去っていった。
「いいの? 物資の補給なんて受けちゃって。アレ、完全に手駒にする気満々よ?」
「利害は一致してるから問題ないよ。俺達は寝食を得られて、ルーゲンブさん達は失っても痛手のない戦力を得られる。ここはリブラレールからそんなに離れてもいないしな」
「では、早速始められますか?」
「ああ。まずは、街の中にあいつがいないか確認。街の中にいるようなら、出てくるまで待ち伏せ。街のの外にいるなら、発見次第に転移魔法で移動。あ、最初の1回だけは俺1人で行くからな」
「どっ、どうしてですか!? ご主人様お1人なんて、いくらなんでも危険過ぎますっ!!」
「これから俺達があいつを痛め付ける理由を伝える為だよ。理由が分からないままに痛め付けられるだけじゃ、考えを改める事なんてできっこないだろ?」
「そ、それはそうですが・・・・」
「主さま1人じゃないとダメなの?」
不安そうな顔で俺を見つめるセレア達。
「最初は話だけで、手を出さずに退却するからな。大勢で行く意味がない。むしろ、ただ危険なだけだ。意味の無い危険は犯す必要は無いよ」
「・・・まぁ、確かにそう言われちゃうと反論のしようもないんだけど」
「・・・・嫌、です」
「セレア?」
「嫌ですっ。ご主人様だけが危険な所に行かれてしまって、万一の事があったら・・・・」
「セレア・・・」
「タカシ様。転移魔法の発動にはお1人の時と複数の時とで差はありますか?」
リアが震える声を絞り出すようにして問いかけてくる。
「いや、無いよ。この3日で何回か皆で転移してみたろ? それとさっきのとで差がまったく感じられなかった」
「ではっ、やっぱり私達も連れていってくださいっ。タカシ様の危険が増すのでなかったら、側にいたいですっ」
涙声で言うリア。
うむぅ・・・やっぱり単独行動は心配かけ過ぎるか。でも、そうなると、しっかりと意図を伝えられる余裕がなくなるのは間違いない。国のお抱えである勇者に取り巻きがいないワケがない。レーシャさんの話でも複数を相手にしたって事だったし。話をしてる最中とかにそいつらが襲ってきたら、話ができてなくても撤退しざるを得なくなる。
「・・・セレアもリアも、我儘言ってタカシを困らせるんじゃないの。確かに、転移魔法の発動に単独と複数とで差が無いなんてムチャクチャな事をサラッと言うくらいだから、ついていってもそんなに危険じゃないと思うわ。でも、話を充分にできなくなる可能性はある。分かるわよね?」
ジェラルリードの堅い声の言葉に、俯いてしまうセレアとリア。
「死ぬ程心配なのはあたしもおんなじ。でも、それでタカシの邪魔になってどうすんのよ? 我慢しなさい。で、タカシは絶対に無事で、掠り傷1つ無しで、短時間で戻ってくる事」
「ん、ああ。グダグダと喋るつもりはないから、すぐに戻る。約束するよ」
「ぶ・じ・にっ、掠り傷1つ無しでっ!!」
言いながらグイィッと詰め寄ってくるジェラルリード。
め、目が超真剣。ちょっと怖いっす。
まったく、こいつも本気で心配してくれてる癖に、俺の意図を尊重する為に大人な判断を下してくれて・・・ヤな役させちまったな。
「おう。無事に無傷記録更新してすぐに戻ってくる。絶対にだ。だから、今回だけは待っててくれるか?」
「・・・はい・・・すみません、我儘を言ってしまって・・」
「すみません」
シュンとなりながら頭を下げるセレアとリア。
「謝る事なんかないって。心配して言ってくれてるんだから。ごめんな、ジェラルリード。ヤな役させちまって」
「・・・仕方ないじゃない。一応最年長なんだから」
「ははは。見た目は1番幼いんだけどなぁ」
「幼いって言うなぁっ! 人間に戻ったんだから、これから成長すんのよっ! 直に胸だって大きくなるんだからっ!!」
「お、おぅ。気にしてんの?」
「フンッ。別にぃ。ホラッ、そうと決まったらとっとと」
ジェラルリードのセリフを遮るように抱き寄せて唇を塞ぐ。
「怒んなよ。俺は全然気にしてないぞ? ジェラルリードも反応可愛いんだし」
キスをされて緩んだジェラルリードの顔が、俺の言葉で一気に耳まで真っ赤になる。
「ば、ばか・・・」
「ホラ、セレアとリアも、もう気にしないで元気出して」
シュンとなったままのセレアとリアも抱き寄せてキスをする。
「ご主人様・・・」
「えぅ、あ、の、えと、は、はいっ」
目を潤ませるセレアと赤くなってアタフタするリア。
「主さまぁ。あたし達はぁ?」
「セレアさん達だけズルいですよぉ」
言いながら後ろから抱きついてくるシャーネとシャーン。
いや、あの、何気に俺もかなり照れながらやってるからね? 多少の耐性がついたとはいえ、女性に縁がなかった時間の方が圧倒的に長いんだからね?
「ん、んん。あんまり照れさせんなよ。大概いつも頭がクラックラしてんだから」
嬉しそうに頬を擦り寄せてきているシャーンと、少し赤くなりながらもぎゅっと俺を抱き締めるシャーネにもキスをする。
うん、ヤバイ。このままイチャイチャしてたら、絶対に行動開始が延々と先送りになる。既に俺の理性は再度の消滅の危機に瀕してるぞ。動かねば。どうせなら、完全に落ち着いて何の憂いもなくなってから、徹底的に溺れたいし。
先の欲望の為に消滅しかけの理性を再生させて、リブラレールへ向かい拠点を出発した。
夕暮れが近くなるとモンスターが多少出てきたけど、機嫌が直ったジェラルリードと元気を取り戻したセレアとリア、上機嫌のシャーネとシャーンの前には紙屑程度の障害でしかなかったりする。
テンション高いなぁ。っつーか、相変わらず俺の出番は無しですか? いやまぁ、そんな気はしてたけど。
順調に進んでいく中で、突然遠くから爆音が響いてきて全員足を止める。
「結構遠いよな? これ」
「はい」
「・・・何度も続いてますね。確か、レーシャさん達の話では、勇者は追い回して嬲るような事をしていたんですよね?」
「だったな。ビンゴかもしれない。行ってみよう」
「「「「はいっ」」」」「おっけー」
全員の返事を受けて、爆音の響き続ける方向へと進路を変える。
なんだか、猛烈に嫌な予感がする。セレア達を待機させる事にしといてよかったかもな。俺1人ならなんとでもなる。無傷記録だけは更新させなきゃ後が怖いけどな。
主人公の警戒は全くの杞憂で済んだ休息の時間でございましたが、行動を開始した主人公一行の先には何やら不穏な空気が待ち構えているのでございます。
爆音の元へと向かう主人公一行。鬼が出るか蛇が出るか。
それでは、<小心者の物語>第四章 第八部、今回のお楽しみはここまでにございます。




