暴君 ~休息編~
ルーゲンブさんの厚意で、一時の休息を得られる事になった主人公一行。
さて、魔族の拠点とは如何なるものなのでございましょうか?
第四章 第七部<暴君 ~休息編~>、どうぞ最後までお楽しみにくださいませ。
それから、ルーゲンブさん達の先導の下、魔族の拠点の1つという場所を目指して進み、到着した頃にはもう周囲は薄闇に包まれ始めていた。
正直、もう疲れた。モンスターがほとんど出てこない上に、出てきてもルーゲンブさん達が瞬殺するもんだから、俺達のやる事と言えば、森の中の道無き道をただひたすらに進むだけ。しかも、森の中だけに足場が良くない。これは精神的にも肉体的にも堪えるぞ。
まぁ、ルーゲンブさん達は俺達に気を遣ってくれてモンスターを自分達だけで片付けてくれてたんだろうから、文句は言えないんだけど。
と言うか、そうでなくても言えねぇ。ルーゲンブさん達、強過ぎ。なんでオーガを素手で撲殺とかできるんだよ。素手で立ち向かおうって気になる意味が分からん。俺なんか未だにオーガの雄叫びにすらビビるってのに。やっぱ、魔族、パネェっす。
「拠点って、これ?」
目の前の館を見て、呆然とした口調で言うジェラルリード。
「うむ。なかなかの物だろう? 建てるのに4日もかかってしまったがな」
「たった4日!?」
「ああ。なに、我ら魔族やエルフにとってはそう難しいものでもない。ゴーレム作成魔法の応用で造れば外観だけならば半日も要さんよ」
俺の驚愕の声に、愉快そうにサラリと言うルーゲンブさん。
「しかし、そういう反応を返してくれると心地よい。タカシ殿は人を喜ばせる術に長けているな」
「いやいやいや、純粋に驚いただけだって。驚くって、普通は」
「しかし、タカシ殿の魔法の腕前は我らを遥かに凌ぐとレーシャ達から報告を受けているが?」
「何か異常だとか言われたけど、こういう発想はなかったよ。腕前云々よりも、こういう発想ができるってのが凄いよ」
それに、俺の魔法の扱いに関してはチートのおかげで異常ってだけだし。
「ははははは。やはり、タカシ殿は人を喜ばせるのが巧い。思わず乗せられてしまいそうだ」
「・・・あんたってホントに変なトコは素直よねぇ・・・」
「失礼な。普段から素直に生きてるっての」
「たまにイジワルですけどね? ご主人様は」
「捻くれてるトコもあるしね~」
いたずらっぽく笑いながら言うセレアと、楽しそうに言葉を続けてくるシャーン。
にゃろう・・・何も言い返せねぇ・・・俺に切り返しをさせんとは生意気な。安全の確認ができたら徹底的に可愛がりまくってやる。
「・・・・本当に仲が良いのだな・・・・」
「はいっ。タカシ様は本当に優しくて懐も深くて、お心の暖かい私の最愛の方ですから」
「あたし達の、ですっ。まるで自分だけみたいな言い方しないでよっ」
「あ、バレました?」
「バレバレ。まったく」
「こ、こらこら。そんなトコをアピールせんでいい。ハズイ」
「良いではないか。男冥利に尽きるというものだろう? さて、こんな所で立ち話をしていても仕方あるまい。中を案内しよう」
ルーゲンブさんの言葉に従って、全員揃って館の中へ入り、一通り案内してもらった。
感想。
こんなのゲリラ戦の拠点ぢゃねぇ。旅館だ。
内装はシンプルで実用性重視。飾りっ気こそないものの、メチャクチャしっかりした造りになってる。それに、全体的に清潔感があってかなり落ち着く。複数人用の大部屋から個室まで完備されてて、部屋数は今までに泊まったどの宿よりも多い。しかも、食堂には食材まで用意してくれているとの事。至れり尽くせりである。
さらに、館の裏手には、なんと天然温泉の露天風呂。しかも、十数人が同時に入れる程に広い。なんでも、この辺りの地下深くには温泉の源泉が多くあるらしく、それを魔法で探知して掘り出したそうだ。魔族の魔法の使い方は本当に多彩で凄い。人間族には真似ができないレベルでの魔力操作力があるからこそなんだろうけど。
余談だけど、温泉に案内された時のセレア達の目の輝きと期待に満ちた視線が理性を揺さぶりまくった。いやまぁ、確かに俺も喜んだけど、そんな風に喜ばれるとやっぱり死ぬ程照れくさい。
「こんなところだな。すまんが、食事の準備などは自分達で頼む」
「いや、もうここまでしてくれれば、マジで充分過ぎるくらいだよ。ありがとう」
「そう言ってもらえると助かる。では、充分な休息が取れたら連絡を寄越してくれ。それからどこに向かうかの話し合いをしよう」
「ああ。こっちの意見はまとめておくよ」
「? タカシ殿の意見で決めるのではないのか?」
「俺の独断では決められないよ。それぞれの今後に関わる話だ」
「ご主人様のいらっしゃる所が私の居場所ですから、私はどのような結論でも問題ありません」
「同じくです。何があっても生きて一生タカシ様をお守りすると約束しましたし」
「はい。主様と一緒なら何でもいいです」
「あたしも~」
「らしいわよ? ここの意見はまとまってるから、あとはあんたの意見1つじゃない?」
セレア達の言葉に続いてサラリというジェラルリード。
「いや、あの・・・すっげぇ嬉しいんだけど、俺がどうしたいかってのを聞いたら、それを止めたくなるかもしんないじゃん?」
「何か危険な事をされるおつもりなのでしょうか?」
俺の言葉に、セレアが低い声で問いかけてくる。
いや、あの、セレアさん、怖いっす。怒んないで。と言うか、止めたくなるのは俺が危険な事をする場合だけですか? もっといろいろあるような気がするんだけど。
「いや、あの、勇者と決着をつけるつもりだから・・・」
「勇者とやり合うつもりなわけ!?」
「あんなモン、放置できるか。まぁ、真正面からぶつかるつもりはないけど。危な過ぎるから」
「会わないようにして街を出たから、てっきりもう放置するものだとばっかり思ってました」
「そうなんですか? 出発する方面がいずれは伝わるようにされてましたから、タカシ様は体勢を整えてから迎え撃つおつもりなんだと思ってたんですけど」
「はい。私もそういうつもりでいました」
「マジか、あんた達・・・」
リアの予想と、それに対してサラリと同意を示したセレアに脱力した様子で言葉を返すジェラルリード。
「ま、まぁ、だからこっちにも話し合いは必要だろ?」
「ハァ。確かにね。まぁ、何にしてもあんたと一緒にいるのは絶対に変わんないけど」
「・・・意外だな。タカシ殿が1番の実力者なのだろう? 押し通せば良いではないか」
「やだよ、そんなの。何をするにしても、俺は強制すんのは嫌いなんだ。まぁ、我儘を押し通す事は多々あるけど」
「いつもお優しい我儘ばかり、ですけれどね」
嬉しそうに言いながら俺に肩を寄せるセレア。
「ふむ・・・従者の意見を取り入れるという発想は我ら魔族にはないものだな。いや、タカシ殿達の場合はただの従者ではないからこそ、か?」
「まぁ、立場上は奴隷と主人って事にはなってるけど、本質的には単純に恋人だからなぁ」
俺の言葉に、視界の端でセレア達が一気に真っ赤になってしまう。
え~いっ! いちいち可愛いリアクションをするんじゃないっ! 言ってて恥ずかしくなるだろっ!
しかし、魔族はワンマンな感じなのかね? 別に意見が言えないって感じでもなさそうだけど。
「なるほどな。では、これで失礼する。連絡を待っているぞ」
「ああ。近い内に」
ルーゲンブさんは軽く頷き、そのまま去っていった。
「・・・ご主人様。少なくとも、臭いで分かる範囲にはルーゲンブさん達以外の魔族はいません。この館の中に隠し部屋などが無い限りには、ですが」
「ありがと。ちょうど確認してもらおうと思ってたトコだ」
「あら。一応、警戒はしてるのね。結構フレンドリーにしてたのに」
「まぁ、一応はな。俺には関係ないって言っても、相手にとっては同じ人間族。それに、ルーゲンブさんは結構な立場にいるっぽいからな。個人としての意見と組織の上の立場としての意見が同じと限らない、なんてのはよくある話だ」
「そうなの?」
首を傾げて問いかけてくるシャーン。
「ああ。組織への利点、利益を考えて行動するのは上の義務だからな。それが個人の感情とかとは逆ベクトルになってる事もある。まぁ、そうなった時にどっちを優先するかはそいつ次第だけど」
「ふぅん。なんか難しい・・・」
「ははは。まぁ、俺達には無縁な話だよ」
「うん」
「さて、とりあえずは飯にしよっか。買い込んだ食糧にはなるけど」
「食材は用意してくださっているとの話でしたから、お作りしますよ?」
「いや、それはもう少し様子を見てからにしよう。食材に毒とか睡眠薬とかが仕込まれてたら厄介だ」
「あ、はい。分かりました」
「意外・・・あんまり信用してないのね」
「信用って言うか、油断したくないだけ。最悪の状況を想定しておけば、足下を掬われる事もないだろ? ルーゲンブさん自身が考えてなくても、一部の魔族が人間族に拠点を貸す事に反発して勝手な行動に出てる事も有り得るんだし」
「あ、確かに・・・さすがはタカシ様ですね。そんな所にまで注意が向いてらっしゃるなんて」
「基本的にビビりのヘタレだからな、俺は。石橋を叩き過ぎて壊しちまう方だ」
「ハァ・・・ホンットにあんたはカッコつけようとしないわねぇ」
「え? こんな風に謙虚に仰るご主人様も素敵ですよ?」
「そうですよねっ。控え目なタカシ様も可愛くて凄く素敵ですよねっ」
「はいっ。抱き締めたくなってしまいますっ」
呆れた口調で言うジェラルリードに意外そうな声を上げるセレアとセレアに激しく同意するリア。
いや、あの、物凄く照れくさいから本人を前にしてそういう事言わないで。ニヤニヤしちゃうだろ。
「いやまぁ、悪くはないんだけどねぇ。力が抜けちゃうわよ、あたしは」
「そうなんですか? いつもそんな風に言いながら頬っぺた緩んでますよ?」
「ほ、ほっといてよっ! って言うか、そんな事には気付かなくていいのよっ!」
シャーネのツッコミに真っ赤になってしまうジェラルリード。
ジェラルリードも大概照れ屋だよなぁ。軽いツンデレな感じか? いや、それにしてはデレ要素が強過ぎか。
それから、大部屋に移動して食事を開始。日保ちする携帯食糧は味気ないけど、今は仕方ない。もう少し時間を置いて、ルーゲンブさんの言った通りに魔族達が本当に接触を図ってこなかったら、用意してくれている食料を使わせてもらおう。まぁ、その前に出発する事になるかもだけど。
「で? どうすんの?」
「とりあえず、勇者には元の世界の常識とか良識ってのを思い出してもらう。死ぬような目に遭わなきゃ考えを改められんってのなら、死んだ方がマシだって思えるような目に遭わせてでもだ」
「な、なんか、主様には珍しいくらいに過激じゃないですか?」
「う、うん。それに、勇者が主さまと同じ世界にいたってなんで分かるの? 知り合いです?」
「いや、面識はないよ。でも、この世界に来たばっかりの時にあいつが着てた服は見慣れたメーカーの服だったからな」
「<めーかー>? 何? それ」
「あ~・・・なんて言えばいいんだろ・・・会社っていうデッカイ組織がいろんな物を大量生産してるんだけど、その組織も複数あるんだ。んで、その商品が自分達の会社が作った物だって分かるようにする為に作った印みたいなモンだ」
「なるほど。その印があるんだったら、タカシと別の世界から来たってのはまず有り得ないわよね」
「そゆこと。だから、この世界の住人には理解できなくても、あいつには俺が気に入らん理由は分かる筈だ。分からないんなら、分かるまで叩きのめす」
「同じ世界にいた人だからこそ許せない事がある、という事でしょうか?」
「まぁ、そんな感じかな。だから、ルーゲンブさんは勇者の目の届かない所まで逃がしてくれるって言ってたけど、それを受け入れる気はない。まぁ、それに、まだ俺は国王と大臣に復讐も果たせてないしな」
「そうですね。国王と大臣に然るべき報いを受けさせるには王都からはあまり離れられません。ご主人様を蔑ろに扱った報いは必ず受けるべきです」
「そういう意味では勇者は元凶の1つでもありますからね。叩いておく必要はあります」
「いやまぁ、確かにそうかもしれないけど、そこは許しといてやっていいんじゃないのか? 別にあいつの意志でもないんだし、あいつが勇者認定されてなかったらセレア達にも会えなかったかもしれないんだし」
「あ、そっか。そういう風に考えたら、勇者は恩人だね」
「そうね。主様に会えなかったら、こうしてシャーンと一緒にいられる事もなかったでしょうし、こんな幸せな時間もなかったんだから」
「ん~・・・そう言われると、半死半生くらいで許してあげてもいいような気もしますけど・・・」
「それでも半死半生まではやるんだ・・・」
「当然です。タカシ様を一時とは言え、路頭に迷わせる原因になったんですから。もし、勇者が勇者として認められた後にタカシ様の身の上を庇っていれば、そんな事にはならなかった筈です。ましてや、同じ世界の住人ならそれくらいの気遣いがあってもいいと思いませんか?」
「あ、確かに言われてみたら・・・・うん。半殺しにしちゃってもいいわね。っても、仮にも勇者よ?飛竜の巣から無事に帰ってくるようなバケモノ相手にどう戦うのよ?」
「あたしとシャーンの羽根弾丸とリアさんとジェラルリードさんの魔法で勇者の魔法を抑えるのって難しいですか?」
「威力よりも発動の速さを重視した魔法なら、ほとんどタイムラグ無しで連射できるかと思います。波状攻撃に徹すれば何とかなるんじゃないでしょうか?」
「ダメね。レーシャ達が言ってたでしょ? そもそもの魔法のレベルが違うんだから、こっちが手数重視にしても、相手はそこに威力も重ねてこれるのよ?」
「隙を作っていただく事をメインにしていただいて、私が近接で仕留めるのはどうでしょうか? 前回は魔法の発動前を狙って失敗してしまいましたけれど、発動直後ならと思うのですが」
「ん~・・・確かに、連射の隙を突ければ上手くいくかもしれないけど、万一を考えたら、やっぱり危ないわよ。<ちーと>って本気で理不尽極まりないんだから」
何故か俺を戦力に含めない形での勇者対策の話を進めるセレア達。
何故に俺を戦闘に出させようとしない? そんなに戦わせたくありませんか?
「それに関しては、ご主人様を頼らせていただきたいと思います」
「あ、よかった。完全に俺抜きで戦るつもりかと思った」
「できればそうさせていただきたいんですが、確実と言い切れる自信がありませんので」
「・・・何故にそんなに俺を前線に立たせるのを嫌がる?」
「無茶をされるからです・・・ご主人様のお姿が消えてしまった時は、本当に死んでしまいそうな程に怖かったんですから・・・・」
セレアの言葉の語尾が涙声になってしまう。
う・・・転移魔法で跳んだアレか・・・心配させちまっただろうとは思ってたけど、これは軽くトラウマなくらいにキてるっぽいな・・・・罪悪感が半端ない・・・
「わ、悪かったよ。次はもうあんな心配させるような真似はしないから。な?」
隣に座るセレアの頭を撫でながら言うと、セレアは俺の腕に縋り付くように顔を埋めてくる。
「・・・はい・・・はい・・・」
「でも、今の皆の戦略じゃ危険過ぎる。ジェラルリードならそれが分かってるよな?」
嘆息混じりに首肯するジェラルリード。
セレア達は少しチートを甘く見過ぎてる。先代の勇者を知るジェラルリードなら分かってると思ったんだけど、案の定みたいだ。さっきから止める方向の意見を出してたし。
「まぁ、そうね・・・・先代の勇者と同じくらいの<ちーと>があるって考えたら、正直、太刀打ちできないと思うわ。いくらタカシのフォローがあっても危ないのは変わりないわね」
「そんなに強かったんですか? 先代の勇者は」
「真祖吸血鬼だった頃のあたしが負けたって言えば、どれくらいの強さか想像できる?」
リアの問いに対するジェラルリードの答えに、俺を除く全員が絶句する。
「固有能力で魔法の連射には間断無し、多少の大怪我も超再生で治癒、動きの速さなら今のセレア級、腕力は魔族10人分以上。そんなのでもあのクソガキにはボロボロにされたわ。まぁ、相手もズタボロにしてやったけど」
ジェラルリードの言葉に、誰も言葉を返せず、少しの間、重い沈黙が流れる。
うむぅ。この空気は正直、耐えられん。
「ま、だから、正面からはやり合わない。真っ向からはリスクが高過ぎるんだよ」
「あ・・・問題というのは、真正面から立ち向かう事を前提にしていた事、ということでしょうか?」
セレアの問いに頷いてみせる。
「・・・正面からではなく・・・・あっ! セレアさんに頼るんですね!」
リアの上げた声に、セレアはきょとんとした顔をする。
「私、ですか?」
「そう。セレアの索敵能力は他の誰よりも高い。それを頼りにしたい」
「あ!」
「そっか。勇者が気付いてないトコで、遠くからぶっ飛ばしちゃうんだ」
「いえ、それだと勇者の魔法で防がれる可能性が高いです」
「え? それじゃどうするの?」
「ご主人様の転移魔法、ですよね?」
「当たり」
「え? え? どういう事ですぅ?」
「つまりだな、セレアにあいつの居場所を特定してもらって、そこに俺の転移魔法で全員まとめて跳ぶ。あいつの前に出た瞬間にタコ殴りにして、あいつが反撃に出ようとした瞬間にまた俺の転移魔法で全員まとめて退却。そういう通り魔的な感じで追い詰めるんだよ」
「うわぁ・・・繰り返すつもりなんだ、それ」
「え、えげつない・・・」
「さすがはご主人様ですっ。それなら、対策の打ちようがありませんし、備えておくのもほぼ不可能ですねっ」
「確実に勇者を追い込めますし、私達のリスクも限りなく低くなりますっ。タカシ様は本当に凄いですっ」
「主さま、賢~い♪」
引き気味のジェラルリードとシャーネに対して、絶賛の声を上げるセレア、リア、シャーン。
いやいやいや、セレア、リア、シャーンよ? 反応がおかしい。ジェラルリードとシャーネの反応が正常だと思うぞ? 我ながら、限りなく性格の悪い手段思いつくなぁって思ってたのに。
「まぁ、タカシの危険もあたし達の危険も低くなるんだし、別にいっか。相手は勇者だし」
「ですね」
何気に酷い事を言うジェラルリードに、サラリと同意を示すシャーネ。
をい。お前らもか。あっさり受け入れ過ぎじゃね? 自分で提案しといて難だけど、これ、かなり非人道的ですよ? いや、別に引いてほしいわけじゃないからいいんだけどね?
そんな感じに俺達の今後の方向性が決定して、食事も済んだところで、セレアが不意に抱きついてきた。
「ん? どうかしたか?」
「・・・その・・・」
セレアは赤くなりながら潤んだ瞳で俺を見上げてくる。耳がぺたんと垂れて、尻尾はくるりと巻かれたままにゆっくりと左右に揺れてたりする。
あ、理性がブッ飛ばされる予感。ホントにこいつは徹底して可愛いな、おい。
「しゅ、周囲には魔族を含めて特に何もいませんから、えと・・・」
もじもじするセレアを抱き締める。
「ん、一緒に入ろうか。風呂」
「はっ、はいっ!!」
嬉しそうに表情を輝かせて俺をぎゅっと抱き締め返してくるセレア。
「セレアさんばかりズルいですよぉ。私も我慢してたんですからぁ」
「あたしもぉっ。主さまっ」
リア口を尖らせて横から俺に抱きつき、シャーンもリアの反対側から抱きついてくる。
「ちょ、ちょっとぉっ! シャーンとリアさんまでぇっ!」
「あんた達、こういう時の動きは異常に速くない!? タカシもデレデレしてないで、こっちもちゃんと構いなさいよ!」
膨れながら言うシャーネと、地団駄を踏みながら言うジェラルリード。
いや、デレるなとか、絶対に無理だからっ。こんなの一生デレ続けるってのっ。慣れれるわけがないっ!
それから、全員で露天風呂へ。
我慢してた期間がいつもよりも長かったせいもあって、理性と自制心は瞬殺されました。露天風呂で開戦。寝室に戻ってからもさらに2回戦目に突入。
ただ、各人、疲れはやっぱり抜けきってなかったらしく、シャーン、ジェラルリード、シャーネという順番に寝落ちした。
「やっぱり疲れは抜けきってないよなぁ」
「そうですね。リブラレールまでの道中もハードでしたし、街でもゆっくりとは休めませんでしたから」
「ご主人様は大丈夫ですか?」
「さすがに眠気が襲ってきてるよ。寝落ちする程じゃないけど」
「タカシ様って本当にタフですよね。私達全員を同じだけ可愛がってくださるんですから」
嬉しそうに俺の胸に頬を擦り寄せながら言うリア。
「そこは自分でも驚いてる。まぁ、セレアもリアもシャーネ達も可愛いからな。復活も早くなるってもんだ」
そう言うと、セレアもリアも一気に真っ赤になってしまう。
「ほ、本当ですか? わ、私も、その、ご主人様のお好みに沿えていますか?」
「わ、私も、ですか?」
「当たり前だっての。俺の普段からのデレ具合で分かっててくれよな」
2人をぎゅっと抱き締める。
「心底、惚れてるんだ。今までにこんなに人を好きになった事なんかなかった。自分でも、こんなに人を好きになる事があるなんて思ってもみなかったんだぞ?」
「「はっ、はいっ!!!」」
返事と同時に2人で俺をおもいきり抱き締め返してくる。
「私もっ、ご主人様を心の底からっ! あっ、愛していますっ!!」
「全部っ、私の全部を捧げても足りないくらいに愛してますっ!! タカシ様っ!!」
「愛してるよ。セレア。リア」
言ってから、セレアとリアの唇をそれぞれ塞ぐ。心底嬉しそうに、幸せそうな顔で笑ってくれるセレアとリア。
あぁ、マジでこんなに人を好きになる事なんかあるんだな。何を引き換えにしてでも、こいつらだけは守りたい。絶対に失いたくない。こいつらに手を出そうとする奴がいたら、マジで殺してしまう気がする。
小心者な主人公は常に最悪のケースを想定しております。大体が杞憂に終わるのでございますが、それでもセレア達と行動を共にする限りには過剰なまでに最悪に対する対処を想定し続けるのでございます。
それでは、<小心者の物語>第四章 第七部、今回のお楽しみはここまでにございます。




