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国境の街 リブラレール

思わぬ出会いを経た主人公一行は、ようやくリブラレールの街に到着するのでございます。揉め事の予感を感じながらも、譲れぬ目的はリアと正式な奴隷契約を交わす事。


第四章 第三部<国境の街 リブラレール>、どうぞ最後までお楽しみにくださいませ。

それから少しの時間を掛けて、レーシャさん達の傷を完全に癒した。


思い返してみると、俺達はほとんど怪我らしい怪我をする事もなかったんだよな。それだけに、治癒魔法をまともに見る機会はなかったんだけど、改めて魔法って凄い。細かい擦り傷なんかも含めて痕も残さず綺麗になって、どこを怪我してたのかすら分からなくなるんだもんなぁ。


「お疲れさん。リア。ジェラルリード。」

「はいっ。」

「軽い軽い。」

嬉しそうに笑顔を浮かべるリアと、テレくさそうに手をパタパタと振るジェラルリード。

「改めて礼を言わせてもらう。助かった。この恩には必ず報いさせてもらうつもりだ」

復調したレーシャさんを先頭に、魔族一同が頭を下げてくる。

「いいえ。こちらも勇者の情報をいただきましたから、もう貸し借り無しという事でいいですよ。ですよね?タカシ様」

「ああ。あとは、お互いに立場もあるけど、できる事ならこの先で戦わなくて済むように願うだけだ」

「ああ。私達も、可能ならば恩人達に刃を向けたくはない。しかし、あのバケモノの話だけで貸し借り無しというには些か無理がある。命の対価としては安過ぎる」

「そうだな。もし、あなた達が本当に魔族に嫌悪を持たないのならば、私達の国に招待したいところなんだが」

赤髪ショート女性魔族の言葉に、俺は苦笑を浮かべる。

「いや、別に嫌悪とかは全く無いけど、それは遠慮させてもらうよ。いくら俺達には関係ないって言っても、この国の人間族は魔族と争ってる最中だ。休戦協定を結んだとは聞いてるけど、実際には小競り合いが続いてるとも聞いてる。そんな中で、言ってしまえば、敵地に当たる所に乗り込むなんてリスクが大き過ぎる。俺は臆病なんでね」

「ふふ。そうね。あなたの言う通りだと思うわ」

「・・・・やっぱり変な人間族よねぇ・・・・大体の冒険者なんて無闇にプライドばっかり高そうな感じの奴ばっかりだったのに、自分で自分を臆病だなんて言うし」

俺の回答に、黒髪セミロング女性魔族は軽く笑みを浮かべながら同意の言葉口にして、茶髪ショート女性魔族が呆れたように言う。

「変とか言わないでくれるかぁ? 自分に対して自覚的なだけだっての」

「あはは。ごめんごめん」

「お前達、恩人に対して無礼が過ぎるぞ。第一、少しばかり気安すぎはせんか?確かに、信用して良さそうな者達だとは思うが・・・」

呆れたように言うレーシャさん。


確かに、敵対種族と向き合ってるってのに、最初にあった警戒心がほぼ皆無と言っていいくらいの雰囲気になってる気はする。こっちも最初こそ不審な行動を取らないか警戒してたけど、心配無さそうだってのが感じられてからはほぼ普段通りだし。


「いやだって、こんな裏がなさそうな相手を警戒してる方が馬鹿馬鹿しいわよ。敵対種族って思ってないのが丸分かりじゃない」

「特に、タカシさん、だっけ? この人、魔族を前にしてるっていうのに、あんまりにも普通なんだもの」

半ば呆れ気味に言う黒髪セミロング女性魔族と、肩を竦めながら言う茶髪ショート女性魔族。

「気持ちは分からんではないがな・・・しかし、礼を欠くものではないぞ」

やれやれといった口調で同意を示しつつ、仲間を嗜めるレーシャさん。


まぁ、堅苦しいのは苦手だから、気安いのは構わないんだけどな。しかし、警戒するのが馬鹿馬鹿しいってのはどうなんだろ?信用してくれてるって捉えりゃ悪くはないんだけど、なんだかなぁ。別に考え無しに行動してるわけじゃないんですが。




それから、追手が近くから姿を消すまでの時間潰しにと互いに自己紹介と雑談開始。

赤髪ショートのルーイさん、茶髪ショートのシェイラさん、黒髪セミロングのガレールさん、口数が少ないルルーナさんに、銀髪のレーシャさん。皆さんなかなかに良い感じの人達で、この国の奴らが何故に敵対するのかがサッパリ分からない。まぁ、個人と集団とではいろいろ問題になる部分は違うんだろうけど。


リブラレール周辺で小競り合いが絶えない理由も聞けた。

事の発端は、人間族の冒険者と魔族の冒険者が同じ遺跡でかち合ってしまった事。その時点ではそれぞれのパーティー同士のいざこざってだけだったものが、相手を撃退する為に徒党を組むようになり、時間の経過と共に人数が膨らみ、最終的に一個中隊規模の衝突に発展。そこまでいけば、もう休戦協定なんて有って無いようなもの。人間族側は数に物を言わせて魔族をこの地域から追い出しにかかり、魔族もそれに対抗する為にゲリラ戦を開始。ただ、表向きには休戦協定を結んでいる為に、双方の国は基本的に正規兵は使えず、冒険者が依頼の遂行という形で戦っているんだとか。


魔族の国にも冒険者の制度がある事にはちょっと驚いた。この国独自のシステムだと思ってたからな。

それはセレア達も同じだったみたいで、大概は俺だけが知らない事ばっかりなだけに、俺と同じように驚いてたのはちょっと新鮮な感覚だった。


対するレーシャさん達は街中でのスパイ活動も行ってるらしいから、人間族の冒険者ギルドのシステムもある程度は把握してるとの事。

見た目で一発で魔族だって分かるのに、どうやってスパイ活動なんかしてるのかと思ったら、化粧で肌の色を隠してしまえば全然気付かれないって言うもんだから大爆笑。リブラレールの街の連中、注意力なさ過ぎ。確かに、しっかり観察しなけりゃ肌の色以外にエルフとの違いは分からないかもしれないけど、街中にはエルフもいるのに、何故に違和感を覚えん?差別意識に凝り固まって、相手をちゃんと見てないから足下を掬われるような事になるんだよ、バーカって感じだ。


「ん?でも、そんな話、俺達にしていいのか? 一応、敵国の人間族だぞ?」

「確かに、本来ならまずいのだろうが、タカシ殿達ならば問題あるまい。わざわざ街の連中に忠告するようにも思えん。むしろ、現場を見て笑いを堪えている所の方が想像できるぞ」

「あ~、確かに。こいつ、馬鹿相手には結構キツイから」

「誰がそんなキツイ事したよ?」

「宝飾品店でおもいっきり巻き上げたのって誰だっけ?」

「う・・・・」

「それに、宿とか飲食店とかでも、セレア達の扱いが悪かったらおもいっきり威圧感全開にして態度改めさせるし、ギルドでも冒険者証叩き付けて震え上がらせるじゃない」

「へぇ。結構やるのねぇ。優しそうな雰囲気なのに」

「い、いや、だってアレは全部相手が悪いぞ。あんな態度、看過できるわけないだろ」

「ふふ。本当に、いろいろと規格外なのね。奴隷をそんなに大切にしてる人間族の冒険者なんて初めて見るわ。まぁ、仲が良いのはもう充分に見せてもらってるけれどね」

「惚れた女を大切にするのは当然だろ。特別な事じゃない」

俺の言葉に、セレア達は嬉しそうに頬を赤くして緩ませる。両隣に座っているセレアとリアは肩を寄せて。

「うぅ・・・街の中だったらおもいっきり抱きついてるのに・・・・」

「我慢しなさい、シャーン。いくら結界の中って言っても、外で気を緩めすぎたら危ないんだから。セレアさん達だって、押し倒したいくらいなのを我慢してるんだから」

「はぁい」

「さすがに外では膝の上もマズイもんねぇ・・・あんた達、時間があったらあとで交代しなさいよね」

「はい。満足できたら交代できます」

「それ、交代できないって事!?」

「離れたら死んじゃうんです。今は」

「こ、この子達はぁぁぁ・・・タカシの事になると心が狭くなるんだから、もう・・・・」

セレアとリアの回答に、脱力しまくるジェラルリードと、恨みがましそうな目で見つめるシャーネとシャーン。


いや、あのね?物凄くテレくさいから、そういうのは宿でだけにしてくださいませんか?嬉しくてニヤけ面が止めらんないから。


「・・・・いいなぁ・・・こんなラブラブなのって。いい男、どっかにいないかなぁ、ホントに」

「こんな優しい雰囲気の人、珍しい。魔族にはなかなかいない」

シェイラさんがぼやくように言った言葉に、ルルーナさんが言葉を続ける。

「確かにな。優しい雰囲気ではあるが、軟弱ではない。セレア殿達が好意を寄せるのも頷ける」

「レーシャが男を誉めるなんてな。珍しい事もあるもんだ。惚れたか?」

「冗談でも止めてくれ、ルーイ。セレア殿達の反感を買ってしまうだろうが」

「いいえ。むしろ、ご主人様の魅力が分かる方には当然の事だと思います」

「コ、コラコラ。過大評価は止めなさいっての。ハズイ・・・」

「過大評価なんかではありません。私にとって、ご主人様は最高の男性でこの上なく愛しい方なんですから」

言いながら俺の腕に頬を擦り寄せるセレア。


ホンットに無駄にいちいち可愛いなぁっ!!もうっ!!


「ん、んん。ま、まぁ、それはともかくとして、そろそろ追手の連中も諦めた頃合いなんでない?」

「あ、そうだな。結構話し込んでいたから、いい加減諦めていてもおかしくはないだろう」

「んじゃ、結界を解くわ。セレア、嗅覚が利くようになるから、索敵をお願い」

「はい。お任せください」

ジェラルリードの依頼に、セレアは俺から体を離して表情を引き締める。

「いくわよ? ≪遮りしもの。解き放て≫」

「・・・・・少なくとも、近くには人間族の臭いはしません。離れた場所にいる場合は風向きの加減で把握できていない可能性もありますが、すぐに見つかるような範囲にはいない筈です」

「よし。人間族以外の臭いは?」

「魔族の臭いが複数、こちらの方角、かなり離れた所にあります。移動している感じではありません。あと、そこまでの途中に、オーガが3匹。別の方角に向かっています。以上ですね」

「ありがと。んじゃ、ここで解散だな」

「ああ。では、改めて礼を言わせてもらう。タカシ殿達に会わなければ、私達は確実に死んでいただろう。この場で恩を返せないのが何とも心苦しいのだが、この恩は決して忘れないぞ」

「この先もレーシャさん達と戦う事にならなきゃ、それだけで充分だよ。そうしなきゃならないような事態にならない事を願っててくれ」

レーシャが手を差し出してきて、俺はその手を取って固い握手を交わす。

「無論だ。それは私達も望むものでもはない」

「タカシさん達みたいな人ばっかりなら、小競り合いもすぐに終わるんだろうけどねぇ」

(あるじ)さまみたいな人なんかいないよぉ。人間族にも有翼族にも」

「特殊な子だからねぇ、この子は」

「あはは。だろうねぇ。魔族にもこんなに面白い人いないもん」

「誉められてると思っとくよ」

「あはは。うん。」

「あなた達とはまた会いたいわ。勿論、戦いの場以外で」

「はい。今度は安心できる所でもっとゆっくりお話ししたいです」

「うん。是非。あなた達といるの、楽しい」

「さて、名残惜しいが、行くとしよう。あのバケモノがまた捜しに出てこないとも限らん」

「そうだな。では、旅の無事を祈っている」

「そっちも、元気でな」

レーシャさん達はセレアが示した魔族の臭いが集まっている方向へと姿を姿を消していき、俺達もリブラレールへと再出発する。


魔族は好戦的って話だったけど、全然普通の人達だったなぁ。むしろ、獣人族や亜人族に差別的な姿勢がない分、人間族よりも好感度高いくらいだ。まぁ、人間族にもアンナちゃんやエラーデさんみたいな人もいるんだから、魔族も人それぞれなんだろうけど。


「魔族ってもっと怖い感じの人達だと思ってたけど、全然いい人達だったね」

「そうね。噂はやっぱりだたの噂って事なんでしょうね」

「むしろ、悪意的に魔族の話を歪めているのではないでしょうか?私が耳にした魔族の話は血も涙もない好戦的な種族だというものでしたから」

「まぁ、敵対種族の事をあえて良く言う奴は普通いないだろ。それに、戦闘になったら敵には容赦無いのが普通だろうし」

「強さには自信ありって感じだったもんねぇ」

「ホントに。人数差3倍が問題無しとか笑えないっての」

「しかし、そんな魔族からバケモノと言われる勇者さんは一体どれほどの強さをしているのでしょうか?」

「そうね。一切の関わりを持たずに済めばいいんだけど」

セレアの言葉に、ウンザリといった感じに言葉を返すジェラルリード。


ジェラルリードの勇者嫌いは相変わらずだな。先代の勇者といろいろあったんだろうなぁ。しかも、今代の勇者も人格に問題有りっぽいし。マジで関わりたくねぇぇぇぇぇっ!




そして、日が暮れかけてきた頃になって俺達はリブラレールに到着。

普段なら、まずは宿屋の情報収集をしてから宿を取るんだけど、ここでは満場一致で可能な限りに滞在時間を削れるように行動する事に決定。リアの先導の下、即行でリアの販売元の奴隷商会に足を向ける。


「皆さん、お疲れなのに・・・すみません。元はと言えば、私の契約のせいで・・・」

「それを言うなら、俺が何よりもリアとの正式契約をする事を優先してるせいだよ。まだ期間に余裕はあるんだから、一旦先延ばしにするっていう選択もあるのに、早くしたいからってだけで強行してるんだからな」

隣を歩くリアの頭を撫でてやる。

「タカシ様・・・」

嬉しそうで申し訳なさそうな複雑な顔をするリア。

「そんな顔をするなって。名実共にリアを俺のものにしたいから最優先で動いてる、ってのがそんなに変か?」

ボッと音がする勢いで真っ赤になるリア。

「いっ、いいえっ。凄く、その・・・・嬉しい、です」

言いながら、耳までさらに赤くなって俯いてしまうリア。

「そう言ってくれると俺も嬉しいよ」

リアは俺の腕を取って、寄り添うように体を寄せてくる。そこに、セレアもそっとさりげなく肩を寄せてくる。

「セレア?」

「え? あっ、い、いえ、その・・・」

セレアは一瞬戸惑ったかのような顔をしてから、赤くなって俯いてしまう。

「・・・ご主人様がそうお考えなのは察していますから、当然の事だと思っているんですけど・・ただ、その・・・少しだけ、ヤキモチ、です、多分」

もじもじしながら言葉を続けるセレア。


多分って、え? もしかして、無意識にくっついてきてくれてたの? ナニソレ? 俺を悶え死にさせたいわけ?可ッ愛いなぁっ!もぉ!!


(あるじ)さま、またデレ~ってなってるですよぉ?」

「・・・いいですもん。今は私との事を最優先にしてくださってるって言ってくれましたもん」

シャーンの恨みがましそうな言葉に、少しだけ不満そうな顔で言葉を繋げながら、ぎゅっと俺の腕を抱き締めるリア。

「2人ともズルイですよぉ。レーシャさん達といた時間もくっついてたのにぃ」

「満足できてませんから、仕方がないんです」

「譲り合いはできないんです。これだけは」

「ホンットにタカシの事になったら心が狭すぎ・・・」

シャーネの不満の言葉に、サラッと答えるセレアとリア。それにおもいきり脱力するジェラルリード。


メチャクチャテレくさいから外ではホントに止めてください。皆、可愛い事言い過ぎ・・・全く、男冥利に尽きるってのはこの事だよなぁ。

極一部の相手ではございますが、魔族との友好関係を築いた主人公達。街に到着後は、トラブル回避の為に普段と違う行動を取りつつも、主人公達の間のやり取りには大きな違いはございません。周囲に甘い空気を撒き散らしつつ、目的を達する為に歩を進める主人公達なのでございました。


それでは、<小心者の物語>第四章 第三部、今回のお楽しみはここまでにございます。

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