揉め事の予感
今回、魔族を追撃していた者達の主となる人物が明らかとなるのでございますが、それは主人公とはとある因縁のある相手でございました。
第四章 第二部<揉め事の予感>、どうぞ最後までお楽しみにくださいませ。
「それじゃ、悪いけど、ジェラルリードは結界を頼むよ。んで、リアは治療を頼んでいいか?」
「はい。お任せください。」
「りょーか~い。」
「セレア達は俺と一緒にこの人達の挙動の警戒。不審な行動を取ったら、容赦はしなくていい。」
「「「はい。」」」
返事をして、それぞれが行動を開始してくれる。
強引に話を纏めて、それぞれに動いてもらう事にしたけど、みんな意外にあっさりと動いてくれたなぁ。こっち側は多少の説得とか必要かと思ってたんだけど。何せ、敵対種族を治療しようってんだから。なんで抗議すら無しなんだろ?
「はい。結界はこれでよし。すぐ側を通っても見つかるどころか、気付かれもしない筈よ。」
「ありがと。あ、それじゃ、リアの治療の手伝いも頼んでいいか?その銀髪のお姉さんも強がってはいるけど、多分、結構マズイ状態だ。」
「なっ!?」
「はいはーい。」
驚愕に固まる銀髪女性魔族をスルーして、ジェラルリードも治療に加わってくれる。
「な、何故、私も深手を負っていると・・・」
「・・・・そういや、なんでだろ?なんとなく?」
「あんたねぇ・・・」
銀髪女性魔族への返答に、ジェラルリードは治癒魔法をかけながら呆れた声を上げる。
仕方ないだろぉ。ホントになんとなくそんな気がしただけなんだから。呆れた顔をしないでもらいたい。
「あたし達相手ならともかく、他にはそういう返答は止めときなさいよ。隠し事してるようにしか聞こえないんだから。不信感、増すわよ?」
「あ、それもそっか。」
「どーせまた<ちーと>なんでしょうけど、とりあえず、こういう時はテキトーにもっともらしい事言うようにしときなさい。」
「うん。そうしとく。」
「でも、相手の前でそういう事言っちゃっていいのですぅ?」
「余計に警戒心が増す気が・・・」
「いーのよ。もう警戒心全開の相手なんだから。」
シャーンとシャーネの指摘をサラッと流すジェラルリード。
まぁ、確かに、もう警戒されまくってる以上は大差がないと言えば大差がないんだろうけど、魔族の面々がなんだか呆れた顔をしてるのは気のせいか?
「・・・本当に、変わった人間族だな・・・・」
「ほっといてくれ。よく言われてる。」
「・・・・私達に何を望む?人間族。」
「そうだな・・・・とりあえず、追手が消えたらこのまま姿を消してくれりゃいいよ。んで、できればあんた達だけで構わないから、今後、俺達を襲ってくるような事はしないでもらえると助かるな。」
「・・・・他には?」
「他に?ん~・・・何かある?」
「いいえ。」
「主さまがないんなら、あたしもないよ~。」
「セレアさんとシャーンに同じくです。」
「リアとジェラルリードは?」
「私も同じく意見です。」
「そうね。」
「分かった。って事だから、それだけで充分だ。」
俺の返答を受けて、銀髪女性魔族のレーシャさんは何故か仲間に目を向ける。見つめられた仲間の面々も、何故か困惑顔で首を振る。
何故にそんな反応?何か変な事言ってるか?
「困惑されるのも無理はないと思いますけど、タカシ様はこういう方ですから。」
「はい。ご主人様はとてもお優しく、懐の深い方なんです。ですから、その言葉をそのままに受け取っていただいて結構ですよ。」
治療を続けながらリアが魔族一同に声を掛けて、それにセレアが言葉を繋げる。
「こういう方って・・・」
倒れた2人の内の1人の茶髪ショート女性魔族が戸惑いの声を漏らす。
「・・・私達が魔族なのを分かっているのか?」
「まぁ、話に聞いた外見の特徴がピッタリだから、そうだろうとは思ってた。初めて会うけど。」
「そういう意味じゃないって。この国とは敵対関係にあるのを分かってるのかって意味よ。」
「あぁ、そういう事か。分かってなきゃ襲ってくるななんて事は言わないよ。でも、この国が魔族と敵対してようが、他の連中が魔族にどういう対応をしてようが、俺には関係無い。よく知りもしない相手と敵対する意味が分からんし、何より、あんた達は相当に強いって聞いてる。道中のリスクをわざわざ上げるメリットがない。まぁ、襲われたら対処するけど。」
「王国に尽くす義理はない、と?」
「王国に、尽くす?・・・ふ、フフフフフ・・・・あいつらに尽くす、ねぇぇぇ?」
思わず暗い声が漏れると、問いかけてきたレーシャさんがビクゥッとなる。
「嫌がらせの限りを尽くす義理ならあるぞ?地味ぃにウザったい事を、徹底的に繰り返して最終的に禿げさせてやりたくはあるわなぁ・・・」
「うわぁ・・・主さまが怖い・・・」
「ここだけは許せないポイントみたいだから、仕方ないんじゃない?あたしも腹は立ってるし。」
「当然です。本来なら、それ相応の報いがあって然るべきな事をされているのですから。」
「事を大きくするのはタカシ様の本意じゃないですから、あまり大胆な事はできませんけどね。」
「いや、大胆な事って・・・あんた達の勢いだと、本気で国王暗殺くらいやりそうで怖いんだけど。」
「王宮ごと吹き飛ばすとかは考えましたよ?タカシ様に止められましたからやりませんけど。」
「羽根弾丸もダメって言われちゃったし。」
「あ、いやまぁ、確かに腹には据えかねてるけど、マジでそういうのは止めような?その先が危ないから。」
「はい。でも、気が変わったらいつでも仰ってください。ご主人様のご意向があれば、いつでも狩ってきます。」
いや、あの、セレアさん?狩るって・・・目がマジだし・・・
「まぁ、とにかく、あたし達は王国に何の義理もないし、魔族に対してどうこうってのもないから。」
「う、うむ・・・大きな借りになるな・・・」
戸惑いながらも、ジェラルリードの言葉に首肯するレーシャさん。
「気にすんな。この先であんた達だけでも襲撃を控えてくれりゃ、道中の危険も少しは減るんだし。」
「いやしかし、命を助けられておいて何の見返りも無しというのはな・・・私達にも面子というものがある。」
難しい顔で言うレーシャさん。
うむぅ・・・それならラッキーってくらいに軽く済ませられないもんなんだろうか?面子とかそういうのって、ぶっちゃけた話、メンドクセェ・・・
「あ、それなら、1つ情報提供してくれないか?気にかかる事がある。」
「なんだ?答えられる限りには答えよう。」
「さっき、そっちの人が<人間族にあんなバケモノがいるなんて>って言ってたよな?」
「あ、ああ。」
リアの治療を受けながら、そのセリフを口にした当人の赤髪ショート女性魔族が答える。
「あぁ、まだ辛いだろ?答えは治療が終わってからで構わない。」
「いや、会話くらいなら問題ない。もうかなり良くなってきている。かなりの腕を持ったエルフのようだな。」
「無理はよくありませんよ。全快にはまだ程遠いんですから。」
「あ、それなら、あたしも見てるし、あたしが答えるよ。あたしが1番軽傷だし。」
黒髪セミロングの女性魔族が申し出てくれる。
「んじゃ、聞かせてもらうけど、その<バケモノ>って、まさかとは思うけど、茶髪で長身の若いイケメンな感じの奴だったりするか?」
俺の言葉に、レーシャさん一同の表情が堅くなる。
「・・・知り合い、なのね?」
声音を低くして問う黒髪セミロング女性魔族。その言葉に、俺は思わず頭を抱えて蹲ってしまう。
うわぁ・・・当たっちゃったよ、おい・・・ほぼ間違いなく、あの勇者認定された奴だ・・・しかも、確実にチート発動してやがる。そうじゃなかったら、俺と同じタイミングで召喚された奴が種族として恐ろしく強いって言われてる魔族から、バケモノなんて評価が出るワケないし。しかも、王国の手先になって暴れてると見た。厄介な事この上ないじゃねぇか・・・・
「ご、ご主人様?どうされましたか?」
「い、いや、最悪の予想が的中したっぽいから、思わずな・・・」
俺は頭を軽く振って立ち上がる。
「最悪の予想、ですか?」
「多分、それ、勇者くんだよ。」
「「「「「え!?」」」」」
セレア達の驚きの声が重なる。
「俺が見たあいつの特徴と一致してるみたいだからな。先に言っとくけど、勇者くんと事を構える羽目になったら、絶対に手は出すなよ。多分、俺以外には多分太刀打ちできない。」
「し、しかし」
「ダメだ。こればっかりはリスクが大き過ぎる。それこそ、本気の俺に勝てるくらいじゃないとな。俺の異常さは分かってるだろ?」
「う・・・」
セレアは言葉に詰まって俯いてしまう。
「まぁ、だからって俺1人で対処する気もないけどな。周りには取り巻きもいるだろうし、そっちを全面的に任せたい。まぁ、あくまでもそうなったらって話だけどな。」
「悔しそうに拳を固めるセレアの頭を優しく撫でてやる。
「・・・はい。しかし」
「分かってるよ。ムチャはしない。ヤバそうだったら、全力で逃げるって。」
「・・・やはり勇者もタカシ様のように強いのでしょうか?」
「そうじゃなきゃ、バケモノなんて評価は出ないだろ?」
「・・・・分かりました。でも、いざとなれば加勢するのは許してくれますよね?」
「まぁ、逃げる為にって事ならな。勿論、事を構えないで済むように動くのが前提だから、あくまでも最悪の場合の話だよ。今の内からそう深刻になる事もないって。」
「でも、主さま、勇者が酷い事してたらブッ飛ばしちゃいそうな気がするです・・」
「少なくとも、喧嘩は売る気がしますよ?」
「ましてや、王国の犬になって暴れてる感じっぽいじゃない?先代の勇者とおんなじクズな気がして堪らないんだけど。」
「う・・・」
シャーン達のツッコミに、返す言葉を失ってしまう俺。
皆さん、ホントに俺の事をよくお分かりのようで・・・いや、でも、今回はさすがに自重するぞ。同じようにチート発動してる相手とやり合うなんて、危険極まりないんだから。それに、向こうは勇者認定された、物語なら主役に該当する位置取り。チートの内容自体が俺よりもさらにとんでもない可能性もあるんだ。少なくとも、セレア達を巻き込むような事だけはしないようにしないと。
「ご主人様。1つだけ、お願いしてもよろしいですか?」
「ん?」
セレアが真剣な表情で俺を見つめる。
「もし、勇者さんと相対する事になったら、その時はどうか私もお連れください。」
「っ・・・参ったなぁ・・・」
苦笑いを浮かべて、後頭部を掻く俺。
何故にこいつはこんなに察しがいい?マジで心でも読めるんじゃないだろうなぁ?
「決して無理も無茶もしないとお約束します。ですから、どうか・・・」
涙目になりながら言うセレアの頭を撫でてやる。
「分かった。約束する。置いていったりしないよ。」
「ご主人様・・・・」
「そこはできれば<私達>って言ってほしいんですけど。」
「主さまだけ危ない事させるなんて絶対ダメだもん。あたし達だってついてくですぅ。」
不満の声を上げるリアとシャーン。ジェラルリードとシャーネも思いっきり頷いてたりする。
「え?あ、す、すみません。つい・・・」
「わ、分かってるって。そうなっちまったら、リア達も置いていったりしないよ。」
「「「はいっ。」」」
「当然よね。」
「・・・え?何?まさか、あのバケモノと敵対してるの?魔族のあたし達とは敵対しないのに?」
俺達のやりとりを見ていた魔族一同は呆気に取られた顔をして、黒髪セミロング女性魔族が信じられないといった口調で問いかけてくる。
「いや、別に敵対してるわけじゃないけど。」
「まぁ、いろいろあってね。王国の関係者とか勇者にはいい印象を持ってないのよ、あたし達。」
「うむぅ・・・何かと珍しいパーティーのようだな・・・」
レーシャさんが半信半疑といった口調で言う。
まぁ、普通は信じられんわな。勇者って言えば、普通は好印象な位置取りの役柄だし、これまでにもこの人達は人間族と戦ってきてるんだから。
「まぁ、その辺に関しては好きに想像しといてくれ。それで、そのバケモノみたいな奴ってどんな感じだった?」
「どんなって、質問が漠然とし過ぎてて何を答えればいいのか分からないんだけど・・・」
「あぁ、ごめんごめん。戦い方とか雰囲気とか、まぁ、何でもいいんだ。会話ができたんなら、そこから感じた人柄とかでも今後の対応の参考にはなるし。」
「あぁ、そういう事。そうね・・・魔法の威力がとにかく異常だったわ。発動までの時間も異常に短いし、あんなのエルフの高位術士を相手にしてる以上よ。こっちの防御が全然間に合わないんだから。」
「エルフ以上、ですか?」
リアが疑念の混じった声を上げる。
「ええ。俄には信じられないでしょうけど。」
「・・・いえ。実際に相手をした方が言うんですから、間違いないでしょう。」
リアはチラリと俺を見てから、黒髪セミロング女性魔族の言葉に首肯する。
「あと、取り巻きが大勢いたわね。冒険者から正規兵まで、30人近くいたかしら。」
「さ、さんじゅうにんッスか?多勢に無勢にも程があるだろ・・・」
「私達も元は10人いたわよ。散り散りになって退却したから、他のメンバーがどうなったのか分からないけど。まぁ、あたし達が敵の主力を引き付けてたから、多分無事でしょ。おかげで、あなた達みたいな人に会えなかったら、確実に殺されてたでしょうけどね。」
「それでも、3倍近い人数差ってムチャにも程がないか?」
「大体はそういう感じよ。元々あたし達は数が多くないし。」
「あぁ、そっか。種族として圧倒してるんだっけか。」
「そうね。普通なら、3倍程度の人数差なら問題にならないわ。」
軽く言う黒髪セミロング女性魔族。
うわぁ・・・やっぱり魔族って鬼のように強いんじゃん。俺なら殺さずに無力化できるとか言ってくれてたけど、全然自信ない。
「あら?それって、あたし達程度の人数ならどうとでもできるって意味かしら?」
剣呑な口調で言うジェラルリード。
「勘違いしないでよ。治療までしてくれてる相手をどうこうするつもりなんてないわ。最初は疑ってたけど、罠に嵌めるつもりなら治療をする意味がないくらいの事は分かるし、恩を仇で返すつもりもないわ。」
「そうしてくれ。こう言っちゃ怒るかもしれないけど、女性相手に切った張ったをするのは趣味じゃないんだ。」
俺の言葉にキョトンとした顔をする黒髪セミロング女性魔族。
「・・・ホンットに変わった人間族ねぇ・・・・魔族を女扱いする人間族なんて見た事も聞いた事もないわよ?」
「ほっとけ。いろいろ規格外なんだよ、俺は。」
「ふふ。自分で言ってりゃ世話ないわね。あぁ、話が逸れたわね。そのバケモノみたいな奴、あたし達を追い回してる時、メチャクチャ楽しそうだったわよ。笑いながらわざと直撃させないように魔法を撃ってきてた。嬲り殺しにでもするつもりだったんでしょうね。」
「マジでか・・・」
黒髪セミロング女性魔族の追加情報に、思わず脱力する俺。
それ、完全に人格破綻者じゃねぇか・・・敵対種族とはいえ、女性を嬲るような真似するとか最悪だろ・・・ダメだ、揉める未来しか見えない。遭遇しない事を祈ろう。
「・・・ねぇ?なんか、もうトラブルになる予感しかしないんだけど?」
「ジェラルリード、言うな。今、遭遇しないように祈ってたトコなんだから。」
「いや、無理でしょ。確実に同じ街に滞在する事になるんだし。」
「リブラレールでは余計な滞在期間は作らん。リアと正式契約をしたら、できるだけ早くに街を離れる。あ、悪い。そんなトコか?そいつに関する話って。」
「ええ。あ、そう言えば、そいつ、勇者とかって呼ばれてたかも。ハッキリとは聞こえなかったけど。」
最後の情報に、俺は完全に脱力して四つん這いになってしまう。
「ご、ご主人様っ!?」
セレアが慌てて膝をついて俺に寄り添うように側にくる。
「完全にあいつだ。あのガキ、チート発動で調子に乗りまくってやがるんだ。青い顔して震えてたくせに、後ろ楯と肩書き手に入れて増長しまくってやがるに違いないぞ。」
「だ、大丈夫ですか?」
「・・・いかん、マジで揉める未来しか見えてこねぇ・・・」
「大丈夫です。ご主人様は必ず私達がお守りしますから。」
セレアは言いながら、俺の頭を抱き包んで優しく撫でてくれる。
「ん・・・悪い。取り乱した。大丈夫。」
「いいえ。」
セレアは俺の言葉に首を振りながら、ぎゅっと抱き締めてくる。
俺が落ち着かせてもらってどうするよ・・・ったく、情けない。俺がこいつらを守ってやんなきゃなんないのに、ここで現状を悲観してても仕方ない。トラブルにならないように動きつつ、揉めた時の対処も考えておこう。少なくとも、セレア達には手は出させん。
セレアを抱き締め返しながら、セレアの背中をぽんぽんと叩く。
「ありがと。やっとちゃんと頭が回り始めた。」
「はいっ。」
セレアは名残惜しそうに俺を離して、俺と共に立ち上がる。
「もう少しだけそいつに関して知ってたら教えてほしいんだけど、構わないか?」
「え?あ、ええ。何?」
「近接戦闘はしてた?それとも、魔法での遠距離攻撃だけ?」
「魔法だけだったわよ?こっちを見つけた瞬間に撃ってきた感じだったし、魔法の発動が早過ぎて近付く事もできなかったし。」
「魔法発動までの時間って、俺の魔法と比べてどうかって判断できる?使う魔法は同じじゃないだろうし、あんまり派手なのをやると追手を寄せかねないから、地味なのにはなるけど。」
「ん~・・・普通より早いかどうかくらいなら判断できると思うけど・・・」
「じゃあ、それでも構わない。≪影よ。導け。≫」
足下の影に俺の姿が沈むように消えて、リアの影から出てきてみせる。それを見て、魔族一同は顔を驚愕に染めて硬直する。
あ、あれ?ショボ過ぎて判断材料にならなかったかな?
「て、転移、魔法・・・?影を媒介に・・・?」
「発動までが短いなんてレベルの話じゃないぞ・・・・」
「お、お前、一体何者だ?転移魔法なんて超高等魔法を人間族で扱えるなど、聞いた事もない。しかも、極近距離とはいえ、魔想域の完成の為に時間をまるで要さないなど、伝説の真祖吸血鬼、紅と漆黒の美姫にしかできんような芸当だぞ。」
「ブッ!?」
レーシャさんの言葉に、思わず吹き出してしまうジェラルリード。それを見て、怪訝な表情を浮かべる魔族一同。
まぁ、ここでそんな二つ名が出てくるなんて予想外だわな。というか、魔族の間にまでジェラルリードの物語は広まってるのか。よっぽど見境なく暴れてたんだろうなぁ。
「あ、アハハハ。何でもない何でもない。ごめんごめん。」
パタパタと手を振るジェラルリード。表情が微妙に緩んでる所を見ると、人間に戻った後でも自分の物語を知ってる奴がいるのは嬉しいらしい。
「まぁ、言ってた通りさ。何かと規格外なんだよ、俺は。で、どう?多少は対抗できると思うか?」
「え?あ、い、いや、すまない。次元が違い過ぎて、正直あたしじゃレベルを推し量り切れないよ。でも、どっちも充分に異常だと思う。」
混乱気味にいう黒髪セミロング女性魔族。
まぁ、この感じなら多少の対抗はできると考えてもよさそうだな。だけど、異常って響きはやっぱりなんかヤダなぁ。
魔族に手当てを施す事になった事にセレア達が何の異論も唱えなかったのは、セレア達が主人公の性格をもうしっかりと理解していたからなのでございます。仲間想いの人達を見捨てる事ができない主人公の気持ちは、主人公を深く理解しているセレア達にとって察するまでもないような事だったのでございます。
それでは、<小心者の物語>第四章 第二部、今回のお楽しみはここまでにございます。




