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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第232話 死は罪を償う事になると思うか?

「これ、どーすんのさっ!」

「すみません」

「ニャぁぁぁぁ嗚呼!」


 俺は正座をして叱咤を受けた。


「こんなんじゃ、何も聞き出せないよ!」

「はい。そうです」

「うぅぅぅう、ニャぁぁぁぁ!」


 クズ野郎が起きないか? 耳元で大声を出したり、家の水瓶から水を取ってきてかけたり、くすぐったり、してみたがダメそうだ。

 その間、カゲトラの呼吸はだんだんと弱くなっていき、エーコは泣き続けている。


「そこの虎っ! うるさいよ!」

「うにぁ。姉ニャ、姉ニァぁぁああ」


 2匹の虎獣人は間違いなく敵だった。俺とシェンユを殺そう襲ってきた。なによりも龍支配の空賊のメンバーだ。

 だが、俺もシェンユも死んでいない。しかも、奴隷使いの命令に従わせられていた可能性が高い。ただの戦闘用のコマとして酷い扱いをされていたと思う。さらに、姉の方は瀕死の状態だ。


 何かしてやれないか? と思ってしまう。


 それには絶対にシェンユとの相談が必要なのだが、ピンクの旋風はオコである。


「ふぅ~。怒ってもしょうがないね。さて、次の作戦を考えようか?」

「そうだな」


 もう、切り替えたかな? タイミングは今か?


「なぁ、シェンユ」

「何っ? 何か良い案を思いついた?」

「この奴隷獣人を助けてやれないだろうか?」

「はぁぁ?」

「ニャっ……」


 シェンユは今までに見た事ない、すっごい不機嫌そうな顔になった。

 エーコの方は、何が起きたのか分からない。という驚いた顔をしている。


「なんでだよっ!」

「な、な、何でもしますニャぁぁ!」


 エーコがヨタヨタと希望にすがるように寄ってきた。


「姉ニャを助けて下さいニャ! 何でもしますニャ! 何でも話しますニャ!」

「ちょ、ちょ、ちょっと、待ってよ」

「タツキと話が出来ないじゃないか! 黙れ!」

「うぅぅぅ」

「シェンユの気持ちは分かる」

「分からないね! 絶対に」


 うっ…… そうだな。

 親も兄弟も親戚も、一族を皆殺しにされたんだ。今の言葉は軽率だった。俺がシェンユの痛みや苦しみを分かるハズがない。


「今のは俺が悪かった。すまない」

「謝って欲しいんじゃないよ。コイツ等は、そのまましてたら死ぬ。奴隷契約は繋がっている誰かが死ねば全員が死ぬ。ほっとけば良いじゃないか! 死んで当然の事をしてきた奴等なんだ!」

「ニャぁぁああ」

「うるさい! 泣くなっ!」


 その考えはシェンユにとっては正しいだろう。


 きっと、俺が別の世界から来たから悩むんだ。

 前の世界では、犯罪者でも簡単には死刑にならない。罪を償う機会が与えられる。ヒーローも悪党をやっつけるが命までは取らない。なんてシュチュエーションは、よくある。

 時々、ニュースで見てた酷い事件で、コイツは死ぬべきだ。とか思った事はあるけど。その関係のある近い立場になったら、躊躇ってしまうもんなんだな。


 命を奪う。ってのは簡単にやっていい事じゃない。

 

「死は罪を償う事になると思うか?」

「罪を償う?」

「そう。罪を犯したら償うべきだろ?」

「そうかもしれない。でも、それを行えるのは有事では無い時だけだよ。それに、そういう事が出来るのは、ギルドとか領主様とか国とかが、やるんだよ」

「なら、今は有事だから殺してもいいのか? こういう時は人殺しが許されるのか?」

「そうだよ。やっぱり、タツキは変わってるね」


 俺が間違ってるのか……


「死は、突然やってくる。訳もわからず殺される事がある。それで、殺さないといけなくて、また殺して、それが続くんだよ。それが嫌なら強くなるしかない。誰にも殺されないぐらいに強く」

「な、何を言ってるんだ?」

「タツキこそ、何を言ってるの? それが普通なんだよ。いつだって死は近くにあったじゃないか? 冒険者をやってれば、危険な依頼はたくさんある。街で安全に暮らしてても、ドラゴンは気まぐれに襲ってくるし、怪人は突然に現れるし、人間が起こす事件だってある。だから、強くならなきゃいけないんだ」


 これは、倫理観の違いなのか?


「もちろん、大切な人を失えば許せないし、憎いし、怨みが残るよ。でも止められないんだ。突然やってくる死は簡単には防げない。それを跳ね除けるぐらいに強くない限りはね」

「お前の言う強さってのは、間違ってるよ。それは本当の強さだと俺は思わない」

「じゃぁ、教えてよ! どうしたら、こんな悲惨な事は辞めさせられるんだよっ! 酷い襲撃は止められるんだよ! 悲しい死を無くせるんだよっ!」

「教えてやるよっ! 今! ここで!」

「なんだって?」


 まるで、常に戦争中みたいな考えだ。

 自分を殺しにくる相手だから殺す。仲間を殺す相手だから殺す。その行動だけで、戦う理由を知らずに殺し合うのか! それは間違ってる。少なくとも俺は、そんな事はできない!


「俺は決めた。この奴隷獣人は殺さない、死なせない!」

「何で!?」

「これで2つの悲しい死が無くなった。これが、強さの形の1つだ!」

「そんなの、納得できないよぉぉお」


 今度はシェンユが泣き出した。

 これは、予想外だ。ちょっと強引すぎた。


「オイラには、タツキしか頼れないのにぃぃ。一緒にピンツオを救って欲しいのにぃぃいい」

「ぐっ。いや、落ち着け。それは救うぞ! もちろん一緒に戦うから、頼ってくれ!」

「うぅぅぅう」

「分かった! わかったから。コイツ等をギルドに引き渡そう。それで裁いてもらおう」

「ギルドにぃ?」


 シェンユが泣き止んでくれた。


「そうだ。とりあえずは可能な限り生け取りにする。それでギルドに判断を委ねるんだ。それで、もし、死刑になるのであれば、俺も何も言わないから」

「本当?」

「あぁ、約束する。でも、ギルドが死刑にしないで、別の形で罪を償うように判断したら、その時はシェンユも納得してくれ」

「……分かった」


 ふぅ。なんとか話がまとまった。


「すみませんニャ。あの、その、姉ニャが白目になってしまったニャぁ。何でもするので助けて欲しいニャ」


 マズイ! 時間がかかってしまった!

 カゲトラの隣で縮こまってたエーコが、必死な目をして悲痛な想いを訴えきた。


「シェンユ、カゲトラを助けたい。お前の魔力を変換する力で、魔力を与える事はできない?」

「はぁ。オイラがやるのか……」

「すまん。俺も頼れるのはシェンユしかいない」

「分かったよ。でも、そのやり方は出来ない。魔力を自在に自分の力に変えるのは、オイラ自身にしか出来ないんだ」

「そうなのか」


 くそっ。シェンユの能力で助けられると思ってたのに! ダメなのか。


「他に何か手は無いのか……」

「うぅぅぅ、姉ニャぁぁ」

「……」


 シェンユの左手が俺の右手を掴んだ。そのまま引っ張ってエーコの近づいていく。


「1つだけある。上手くいく保証は無いけど」

「本当か! やってくれ!」

「お願いですニャぁぁ」


 シェンユは俺の手を掴んだまましゃがんで、右手でカゲトラの首を掴んだ。


「説明だけはさせて」

「分かった。手短に頼む」

「獣人は人間の何倍も自然治癒能力が高い。それで奴隷獣人は主から魔力供給をしてもらう事で、ある程度の損傷を修復する事ができる」

「それは、なんとなく。さっきのエーコとアイツとのやり取りで分かった」

「でも今、あの主は意識が無くて出来ない。まぁ、あっても出来なさそうだけど。それなら、魔力があって供給する意識がある新しい主を用意するんだ」

「でも! それは出来ないですニャ。奴隷契約解除は奴隷獣人の望みがあって、奴隷使いの許可が必要ニャ。今は、どっちも、無理そうニャ……」

「そうだよ。けど、オイラなら解決できる。奴隷法に引っかかるから本当はダメなんだけど。今回だけ特別にやるから、今後はアテにしないでね」


 シェンユが困ったような難しい顔をした。やると、かなりマズイ事なのかもしれん。

 それでも、2人助けるのに、それをしてくれるのは、凄くありがたい。


「オイラの能力は、魔力の形を別の形に変える事ができる。奴隷紋は人間側が操ってる物じゃない。獣人側が操る魔力でできた特殊物なんだ。奴隷紋を壊して消す事はできないんだけど、その契約の形を変える事はできるんだよ」

「ニャ。ニャぁ?」


 俺にはシェンユがやろうとしている事が分かった。


「覚悟はできてる。やってくれ!」

「分かった。ノアちゃんに怒られても、オイラは知らないからね!」


 コタツで温められたように、右手が柔らかい熱を待つ。手の甲に黒い模様が浮かび、それが手首を通って肘を少し過ぎた辺りまで伸びていく。


「ニャ、ニャ? 奴隷紋が!」

「はい。これでカゲトラの主はタツキに変わったよ。どう? 大丈夫?」

「うん。特に問題ないな。なんとなく魔力を吸われている気はするけど、なんともない」

「ニャ! 姉ニャ? 姉ニャが、目を開いているニャ。あ、ありがとうございますニャぁぁああ」


 カゲトラが頭を上げて俺を見た。呼吸が穏やかになってるのが分かる。


「すぐには無理だと思うけど、時間をかければ歩けるようにはなると思う」

「シェンユ、エーコの奴隷紋も変えてくれ」

「えっ? いいの?」

「2人は一緒が良いと思うんだ。それに、あのクズ野郎を主にはしておかない。エーコ、良いか?」

「は、は、はいですニャ! 何でも言う通りにしますニャ」


 エーコはお尻を上げて頭を地面につけて、膝立ち土下座みたいなポーズを取った。たぶん最大級の服従を示したつもりだろう。

 だが、変なポーズのせいでポンチョが巻かれて、しなやかな背中と、尻尾の生えた可愛らしいお尻が見えてしまった。

 シェンユは何故かエーコのケツを1発引っ叩いてポンチョを引き直した。そして、何故か俺を睨んだ。


 良いモノを見た。ありがとう。

 にしても、シェンユってウブだよな。


 カゲトラの時と同じように右手が熱を持って、新しい奴隷紋が刻まれる。手の甲の部分は重なっているのか、黒くなってしまった。


「タツキ、どう?」

「別に変わった感じはしないな」

「やっぱり凄いね。奴隷契約は初めてだよね?」

「そうだな」

「それは凄いよ。普通は初めてだと目眩や立ち眩みを起こすって聞くよ。前に気づいたけど、タツキって魔力保有量は、ズバ抜けてるのかもね」


 うむ。そうだろうな。なんたって、神から魔力を供給されているんだから、無限に等しいハズだ。


 無限の魔力か……


 奴隷紋が刻まれた自分の右腕を見つめながら思案する。ふっと、ある考えが浮かんできた。


「エーコ、ちょっと聞きたい」

「はいニャ。何でも答えますニャ」

「今この町に来ている奴隷獣人は、みんな、お前達みたいなのか?」

「種族は色々ですニャ。特殊な能力を持つ者も何匹かいて、兄弟や姉妹もいれば、そうでないのもいますニャ」

「聞きたいのは、そういう事じゃない」


 ちょっと…… 妙案を思いついたかもしれん。

 

「酷い扱いをされているのか? 無理矢理、奴隷使いに従って、こんな事をしているのか?」

「……そうですニャ」

「信じられないね!」

「うっ。うぅぅうう、その、この状況に染まってしまって楽しんでいる奴隷獣人もいますニャ。それは事実ですニャ。人間を殺した事のある者もいますニャ。でも、ほとんどは嫌で従ってますニャ! 信じて下さい!」

「それじゃぁ、お前達は何をしてるのさ!」

「エーコと姉ニャの仕事は、奴隷使い達の性欲の処理ですニャ、それと、逃げる奴を捕まえて閉じ込めるですニャ。でも! 殺してた事は無いですニャ。傷つけた事はありますけど、命を奪った事は1度もないですニャ! 信じて欲しいですニャぁぁあ」


 そんな気がしてた。

 エーコもカゲトラも致命傷は避けていた。俺の頭や喉元を狙った噛み付く事もできたハズ。


「そんな事、言われても」

「信じる!」

「タツキっ!」

「主様、ありがとうございますニャ」

「エーコの今の話が本当なら、ピンツオの町の人達は、どっかに集められて監禁されているのか?」

「そうですニャ。中央の広場に全ての町の人達を集めていて、奴隷使いと奴隷獣人は、その見張りをしていますニャ。路地とか細道から逃げ出さないように、周りの建物に火をつけて囲っていますニャ」

「えっ? 本当に? みんな生きてるの?」

「はいニャ」


 まだ、町の人達は生きている。助けられる。


 右手で拳を握る。その次に左手でも拳を作る。

 俺の身体はまだ動く。シェンユもいるし、情報を持ってるエーコもいる。最強アンドロイドのノアもいる。


 でも、流石に数の差が大き過ぎる。この問題さえ何とかできれば、この町で苦しんでいる全員を救えるかもしれない。


「2人とも聞いてくれ。作戦がある! 上手くいけば、町にいる多くを助けられるかもしれん。2人の協力が必要だ!」

「もちろんだよ!」

「何なりと命令して下さいニャ。主様は、エーコと姉ニャの命の恩人ですから、どんな事でもしますニャ」

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