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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
142/233

第141話 ん?そうだ。私はドラグマン・レッドだ

 テスト期間に入ってしまった。さすがに、試験勉強を優先します。


【自称、シャン・レン=ワン家の末妹の婚約者】


 めんどくせぇ! 何でこんな事になってるんだよっ!


 ダリアに会えるからシャン・レン=ワン家の護衛の仕事を受けて、わざわざユウツオまで来たってのによぉ! お互いに忙しくて、2人きりで会う時間が全く無いじゃねぇか!

 やぁっと、今日、時間ができたってのに、今度は怪人が出ただと?

 ふざけんなよっ!


「ガオレン! 何処に向かってるんだ? ダリア嬢様は、我々に人々を助けてと願って送りだしてくれたんだぞ!」

「うるせぇなダリウス! そんな事は、分かってるよ!」

「怪人がいるのは、中央広場だぞ? 何処に行くつもりだ!」

「英雄広場だよっ!」

「なっ。なんだと!」

「ダリウス殿! ガオレン様は聡明な人です。よく考えた練った行動なのです」


 さすが、ウンラン。長年、俺の世話係をやってきた、だけはあるぜ。

 ダリウスの奴は相変わらず、うるさい奴だ。兎獣に乗ってる俺達に合わせて走ってるのに、よく喋れるな。


 ダリアの気持ちは分かる。アイツは愛する俺の為に動いてくれた。


 この期に、俺に手柄を立てさせようとしてくれたんだろう。ユウツオにはアナガリスも来てるし、ダリアの兄や姉、シャン・レン=ワン家の大貴族が多く来ている。

 ここで活躍できれば、俺の評価は上がる。俺とダリアが結婚する為の助けになる。俺は思いつかなかったが、すぐに動いてくれるなんて……


 ダリアの奴…… 俺の為に……


 可愛い奴じゃないか。


 ちゃんと俺が死なないように最低限の人数も用意してくれてる。

 まずはウンラン、俺の右腕だ。そしてダリウス、こいつは口うるさいが戦闘力は頼りになる。それからユウツオ兵団から3人。

 あと、よく分からんシャン・ギ=オウ家の侍女だ。


 7人もいるが、怪人を相手に7人しかいないとも言える。このメンバーで怪人を相手できるとは思えない。何より俺が死んだらどうするんだよ。


 怪人なんか、相手してられっか! 適当に街を見回って、負傷者がいたら安全そうな建物に避難させて、それで戻ればいいだろう。


 ユウツオの最強戦力の騎士団長デルドリエが中央広場に向かって行ったんだ。A級冒険者らしいし、向こうにはB級冒険者も数人いるらしいから大丈夫だろ。


「英雄広場のギルドに向かう! 冒険者ギルドは要だ。情報が集まるだろうし、避難箇所にもなるだろう? まずはギルドが機能してるのか? 情報はあるのか? 確認しに行く」

「むぅ。まぁ、確かに」

「さすが、ガオレン様です」


 ギルドに行けば、戦力補充もできるかもしれないしな。


「皆様! 武器を構えて下さい。英雄広場の建物が崩れています」

「なんだって!? お前、見えるのか?」

「はい。私は魔闘気で視覚を強化できますので」


 この侍女。結構、強いのか?


「全員、速度少し緩めろ! ダリウス先行しろ! ダリウスの後を兵団が行け!」

「分かった」

「「「了解です」」」


 怪人がいるのか? 中央広場にいるハズ。移動したのか?


「おい、怪人は見えるか?」

「見えません」


 英雄広場で暴れてから、中央広場に移動したと考えるべきか。

 警戒しすぎかもしれん。早く行って、早く帰ろう。


「やっぱり、全員で行くぞ! 速度を上げろ!」


 すぐに兵団には追いついたが、牛獣人のダリウスまでは追いつけない。まったく、直進だけなら速い奴だぜ。


 なんとか追いついたら、英雄広場に到着してしまった。


 中央の英雄の像は壊れていないが、周囲の建物はいくつも崩れている。


 肝心なギルドは……


 なんだ? ギルドの入口にいる、あの黒い奴は!


「あれは怪人だぞ! ギルドの中に入ろうとしてるのか? 止めるぞ!」


 ダリウスの大声が周囲に響く。


 最悪だ! なんで、ここに怪人がいるんだよっ!


「あの尻尾を引くぞ! 全員ついてこい!」


 ダリウスの号令で兵団が兎獣から降りて、3人と1匹で尻尾に組み付く。けど俺は、愛兎ダーリアに乗ったまま動かない。

 怪人とやり合うってのかよっ! 絶対に嫌だね。少し指示を出したら、すぐに撤退命令だしてやる!


「引っ張り出せー。広い所で戦うんだ。広場に出てきたら全員で、かかるぞぉ~」


 もちろん全員に俺は含まれない。


 ダリウス達が尻尾を掴んで、しばらく引くと、最悪な事に怪人は自ら後方上空に回転しながら跳躍して、3人と1匹の背後に着地しやがった。


 全身から冷や汗が流れる。


 こんな奴と戦うなんて、頭おかしいんじゃないのか?


 死体のように黒くくすんだ皮膚に、血のように赤い模様がある身体。上半身と同じ大きさの頭には大きな口に鋭い牙が並んでいて、まるでサンダイルみたいだ。そして、感じた者に恐怖させる不快な魔力。


「一時撤退だ!」


 俺が叫んだ時には遅く、怪人は突進。さらに両腕振り払い、兵団の3人を薙ぎ飛ばすと、そのままダリウスに掴みかかる。

 かろうじてダリウスは受け止め、互いの両腕を掴み合い、力押しになるが、流石は牛獣人。力負けする事はないみたいだぜ。

 だが、怪人の口が大きく開かれる。体の大きいダリウスでも上半身は収まってしまいそうだ。


 アイツが死ねば、次は俺か? 今のうちに逃げるしかない。


 急いで愛兎ダーリアを後に反転させる。


「ウンラン、女、引くぞ!」

「ガオレン様、変態が来ました!」

「はぁ? 変態?!」


 振り返ると、そこにはアホがいる。


 膝下までの黒いズボンだけ、上半身は裸、さらに裸足、武器も持たず、防具らしき物は股間に1枚のみ。何故か顔は頭部を覆う龍面をしている。

 なのに、そいつは、ダリウスを食おうとしてる怪人の上顎と下顎を両手で押さえている。


 なんなんだコイツ?!



【かつて、シャン・レン=ワン家の末妹の奴隷獣人だった牛獣人】


 助かった。


 噛まれても、それで死ぬ事は無いと思うが、致命傷を受けるところだった。


「誰だか知らぬが、感謝する!」

「久しいな、牛獣人の方よ」


 何っ?! 私を知ってるのか? 今、「久しい」と言ったか?


 誰だ? 横顔を見る限りは……


 顔が見えない。


「投げる。力を抜け!」

「何っ?」


 龍面の男が怪人の両顎を引いたようだ。押し合いをしてたので、こちらが負けてしまう。


「力を抜け! 合わせろ!」

「ぐっ。む、無理だ」


 このままでは押し倒される。そしたら、あの鋭い牙の餌食になってしまう。


「ぬぅぉぉおおお!」


 右腕を下げ、左腕を上げて、怪人の力を流しつつ、正面での押し合いを右方向へと変える。


「よし、私が合わせる!」


 龍面の男は怪人の顎を同じように右側へと引き、なんと、自らが側転をして、無理矢理に回転ををかけて怪人を地面へと投げ転がした。

 引き離す瞬間に手を引っ掻かれてしまい、手の甲から少しだけ血が溢れる。


 怪人との戦闘経験は1度、帝都で経験した事がある。基本的には消耗戦だ。


 コイツ等は、頭部以外は再生する。しかし、体力なのか魔力を消費するのか、徐々に再生速度が遅くなっていく。さらにスピードやパワーも低下していく。

 長時間の戦闘をした後に、弱ってきたら頭部を破壊する事で怪人は倒せる。

 だが、それは、こちらの消耗より怪人の弱体化が早い場合なのだが。


 大平原や大砂漠にいる強力な怪人共は、1週間の間、戦闘を続けても弱らない。人間側の消耗が激しいので戦闘が続けられなくなる。


 なんせ、こちらの消耗は血と肉と命だ。


「うおっ! 来やがった。ウンラン!」

「ガオレン! 動け! 止まるな!」


 マズイ。ガオレンの方に転がった怪人が、体勢を立て直した。

 ここにいる人数で消耗戦ができるのか?


 消耗される命は、私になるだろう。だが、やるしかない。


「私が削る! ガオレン、トドメは任せるぞ!」


 ウンランが前に出ている。突進して、私と挟み撃ちにして消耗させる!

 だが、怪人は予想外の動きをした。


 近くにいるガオレン達3人を無視して、英雄広場に沿って大回りし、龍面の男に突撃して行く。


 急制動をかけるが、怪人のほうが早い!


「危ない!」


 口を開き飛びついた怪人に対して、龍面の男は右腕を差し出した。当然のように噛まれ、血が吹き出す。

 しかし、噛まれた腕を振り上げ、怪人のスピードを利用して、怪人を振り上げる。さらに、遠心力と重力を利用して、地面へと叩きつけた。


「キャィィイイ!」


 両腕が折れ曲がった怪人が悲鳴をあげて、地面を数回バウンドして、這いつくばっている。


 この龍面の男。凄い戦闘センスだ。

 今の動きを狙って出来る者は少ないだろう。しかも武器を使わずに、素手で行うとは……


 何故、武器を持ってないのか?


 なんとも奇怪な格好をしている。頭部は龍面で覆い、上半身は裸。下半身もほぼ裸に近い状態で、股間には1枚の防具がついている。


 ん?


 変態的な格好で、素手で強敵と戦い、誰かを助ける為に行動する。


 どこかで見た気がするが…… まさか!


「レッド殿か!」

「ん? そうだ。私はドラグマン・レッドだ」


 軽い感じで返事をしながらも、怪人の2度目の突撃を、1度目と同じようにして、崩れた建物へと投げ飛ばしている。


 再び辺りに血が撒き散る。レッドの右腕は血だらけになってるが、まさか、その腕を消耗するつもりなのか?


「レッド! 負傷者を運ぶ準備が整ったわ」

「よし。怪人は私に任せろ。中央広場にでも連れて行く。あそこは広いからな!」


 ギルドから女性が出てきた。服装からすると受付嬢のようだな。


「ぐるるるぅぅうう!」


 瓦礫から飛び出した怪人が、レッド殿へと突進し、すれ違いざまに腹部を切り裂いた。さらに、そのまま英雄広場を駆け回る。

 どうやら、噛みつけば投げられる事を理解したらしいな。今度はスピードで使って一撃離脱を繰り返すようだ。

 それにしても謎だ。何故、レッド殿だけを狙うのか?


「おっと、危ない。どうやらコイツは私と遊んで欲しいようだな! こちらとしては好都合だ!」

「レッド。中央広場に行くなら気をつけて! 向こうにも怪人がいるわ!」

「なんだと?!」

「ギルドにいたD級以上の冒険者のほとんどが中央広場に向かったの。だから、ここには冒険者が少ないのよ!」


 なんて事だ…… 怪人は2体いるのか!


「レッド殿! 助太刀します。ガオレンも援護をするんだ!」


 ん? ガオレンは、何処に行った?


「私は問題ない! それよりもギルド嬢の手伝いを頼みたい。この先にある我儘亭に負傷者を運んでくれ!」


 大丈夫だと? 攻撃を受ける度に、血吹き出していて、腹部も両足も右腕も血まみれじゃないか。傷は浅そうだが、このままでは失血死してしまうぞ!


「大丈夫には見えない! 私も共に怪人と戦いましょうぞ」

「私は大丈夫だ! それよりも負傷者が優先だ。ここにいる者達と我儘亭の者達を守らなければならない。2体目がいるという事は、3体目の可能性もある。だから、ここを貴方に託したい!」

「3体目だと……」

「絶対に無いとは言いきれない!」


 怪人が2体同時に街に現れるなど、聞いた事ないのに、3体目はありえない。

 レッドは、とにかく、ここの人々の安全を心配しているようだ。ならば、応えようではないか。彼は1人でサンダイルを倒す男、怪人すらも1人で、なんとかしてしまうかもしれん。


 だが、2体同時に相手するつもりなのか? いや、中央広場には腕利きの冒険者も大勢いるハズ。まとめて相手したほうが良いのかもしれん。


「分かりました! ですが、ここの安全が確保されたら、必ず私達も向かいますので!」


 10何回目の怪人の攻撃はレッドに当たらなかった。上手く身体を捻り、鋭い爪を避けると、レッドは怪人に強烈な蹴りを腹部に突き刺した。おそらく狙ったと思われる、中央広場へと繋がってる南英雄大通りに、怪人は蹴り飛ばされていた。


「頼んだぞ! さぁ、ワン公! 私と広場まで散歩しようか! お前の仲間も待ってるらしいぞ!」


 レッドが南へと走り出すと、怪人も後を追って中央広場へと向かって行ってしまった。


 よし、レッドの力になる為にも、急がねば。


「ギルドの受付嬢さん。牛獣人のダリウスと申します。さぁ、何なんりと申し付けて下さい。我々は元々、4大貴族であられるダリア=シャン・レン=ワン様の命令にて、人々の救助に来たのです」


 ギルドの入口に近づくと、隣の建物の瓦礫の中から人が立ち上がってきた。


「貴族区画へ避難できます」

「我々が護衛します」


 怪人に一撃で飛ばされてた兵団の3人は生きていたようだ。


「おぉ、兵団の方々。大丈夫でしたか」

「なんとか。瓦礫に埋もれて奇襲をかけるつもりでしたが、タイミングが無かった」

「いや、怪人相手では、仕方あるまい。レッド殿はかなりの実力者のようだ」

「皆さん、ありがとう。私はルーファン。ギルドの運営者よ。とりあえずは、レッドが言ったように負傷者を我儘亭へと移動させたいわ。お願いできるかしら?」

「貴族区画へは、行かないのですか?」

「我儘亭には、おそらく冒険者育成学校のジンリー=クワンランがいるわ。あの子は治癒魔闘気の凄い使い手なのよ」

「なるほど。さすが、レッド殿ですな。よく考えている。だが、私は我儘亭の場所が分からない」

「俺が案内しよう。兵団はユウツオの道は全て把握してるから、任せろ」

「負傷者は20人ぐらいだ。動けるE級冒険者とF級冒険者が10人ぐらいいるから、2往復すれば問題なさそうだぜ?」

「ガオレン!?」


 途中から姿が見えなくなったと思っていたら、何故、ギルドの中から出てくるだ?


「おーい! お前等。怪人はいないぞ! 出てこい、避難するんだ! ダリウス、後はお前達だけで大丈夫だな?」

「今まで、何処に行ってたんだ!」

「裏口からギルドに入って状況を確認してたんだよ! 貴族区画の奴等は正確な情報を持ってねぇ。怪人が2体もいる事を伝えてねぇといけないだろ? ギルドの状態も確認しておかないといけねぇ。どうやら、ギルドマスターは不在みたいだぜ?」


 うむ…… 確かに言う通りではある。


「俺は貴族区画に戻るぜ? 後の事は任せるぞ」

「何を言ってるんだ!」

「お前が何を言ってるんだよ! 言ったろ? 情報を持って帰らねぇとな! それに戦力が足りない。俺が貴族区画から騎士団と兵団の補充要因を連れてくるからよぉ。これは貴族の護衛なんてしてる場合じゃなねぇ! って説得してくる。奴隷獣人のお前にそれが出来るのか?」

「むぅ、そうだな。ガオレンに頼むしかない」

「なにより、このチームの隊長は俺だ。俺に従え!」

「わ、分かった」


 コイツは、いつも正しい事をしている。だが、真に正しいとは思えない。今、本当にやるべきは、助けを求める人々の為に動く事では無いのか?


「美しいギルドの受付嬢さん。どうするかい? 貴族区画に逃げるなら一緒に連れ行ってもいいぜ?」

「いいえ、結構よ。私達ギルドの運営者はギルドに残るわ」

「ふ~ん。そうかよ」

「危険では? せめて、我儘亭に避難しましょう」

「ここに人がいる事が大事なの。ここは冒険者ギルド、ユウツオ支部よ。何かあれば、冒険者達はここを頼って来るわ。命を賭けてユウツオを守る冒険をしてる彼等に対して、同じように命を賭けてギルドの運営をするのが私達の役目よ」


 素晴らしい。なんて気高き精神だ。


「分かりました。では、怪我人の移動が終わり次第、私達がギルドの護衛に加わりましょう。ガオレン、問題無いな?」

「それは構わねぇよ。好きにしな。それじゃ俺達は行くぜ」


 まったく、コイツは……

 何故、こんなのがダリア嬢様の婚約者になってしまったのだ。


 そういえば、レッド殿が宝剣を壊していまったのが原因でしたな。

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