第132話 トイレだ
ノア3とノア4との3人での生活は、あっと言う間に過ぎていった。
5日後にはノアがワナン国へ旅立ってしまう不安を抱いてはいた。だが、マジで夜は3人一緒に寝てくれるし、身体拭くのはノア4がやってくれるし、早朝のトレーニングに1度だけ三つ巴戦をやったり、エクシィでノア4と組んでノア3を相手したり、かなり楽しい日々だった。
もちろん、基本的にノア4は押入れに隠れていて、ちゃんと誰にも悟られないようにした。
学校も問題なく終わった。授業はしっかりと付いていけたし、最後の週なので各科目であった試験も、そこそこ良い点数が取れた。実技も体力的には問題ない。あとは魔闘気がだけなんだが、それだけは、どうしようもない。
後期の日程は1月と2月まである。そこでの実践授業の評価を含めて、2年に上がる時に、もう1度クラス変えがあるみたいだ。その時までには良クラスで最上位成績になってやる!
学校が終わり年末休み前の最後の癒しの日の昼、その日にノアとヒトラ様とヒョウカさんはワナン国に行く為にガルーパフ駅に来ていた。俺とシェンユで駅まで見送りに行ったら、トラヒコさんとシシゾウさんも来ていた。
「そう、寂しそうな顔をしないで下さい。私はちょっと、旅行に行ってくる感じですよ?」
かなり情けない顔をしていたんだろう。ノアが俺の手を掴んで、声をかけてきた。
「分かってるよ! ヒトラ様に迷惑をかけないようにな!」
「マスターの、その顔が迷惑ですよ?」
うっせぇわ。
「ノアちゃん、タツキがこんなんだし、オイラも寂しいから、ちゃんと帰ってきてよ?」
「もちろんです」
ヒトラ様とヒョウカさんが、呆れた顔で見ている。
「タツキよ。妾は信用にて絆を得て、芯のある侍従契約を繋ごうとしてるのだぞ? 分かってるのか? 卒業するまではノアをワナン国に留める事は無い」
「そうですよ! ヒトラ様の寛大な心にて、ノアが我儘亭にて生活できてるのですよ? 理解しなさい!」
「分かってます。ありがとうございます」
ヒトラ様もヒョウカさんも、トラヒコさんもシシゾウさんも良い人達だ。
「だがな。ノアは妾の使用人じゃ。勘違いするなよ? お前の為にやってる事では無い。ノアとの信頼の為にやっている。卒業後はワナン国の民として来てもらうからな」
前言撤回! ヒトラ様は厳しい人だ。
こうして、3人はワナン国へと旅立った。
たった3人だけど、ノアがアホみたいに強いし、何でもできる。ヒョウカさんも世話スキルが高く戦闘力もあり、ヒトラ様自身も強い。何も問題ないだろう。
その後は、シェンユと中央広場まで行って、シェンユのシャン・レン=ワン家の懇親会用に着ていく服を探して帰った。
そして、その次の日、朝から我儘亭の年末大掃除が始まった。
「よーし。いいな! 俺とミンレイは日頃から身の回りを綺麗にしろ! と言っている。我儘亭は飯を食う所だ。綺麗でなければいけない!」
「つまり、日頃から掃除してるから、今日は軽めでイイって事ですかぁ?」
「ナランチェグ、バカヤロウ! 普段は時間が無くて出来てない手を抜いてる所まで! 今日は綺麗にやるんだよ! 分かったか!」
「「「「はい!」」」」
「ミンレイ!」
ミンレイさんが、テーブルの上に掃除道具を並べている。
「ここにある分しかねぇから、上手く交換して使うように! まず、午前中は各自、自分の部屋を掃除だ! 普段は禁止しているが、今日は廊下と階段に部屋の荷物を置くのを許可する。最低限、人が通れるように置けよ? それから必ず、掃除が終わったら、部屋戻すように!」
「センギョクさん。1階に置くのはダメなんですかぁ?」
「ここには、厨房の物を出すからダメだ。俺とミンレイは厨房を綺麗に掃除するからな」
「分かりましたぁ~! なぁ、ウォンレイ。私の荷物を置かせてくれよ。そんで掃除手伝ってくれ。終わったら交換するからさ!」
「イイけどさ。普通それって女同士でやらない? 気にならないのか?」
「私だぞ? ならんね」
なるほど。そのやり方は頭良いな。
「それって去年、私達がやってた、やり方ね。ナランチェグ」
「そうだね。今年も一緒にやろうか」
チェグチェグ先輩がやってたのか。
「シェンユ。俺達も一緒に掃除しようぜ? その方が効率良さそうだし」
「ゴメン。オイラは1人がイイんだ」
「あ、そうか。分かった」
予想外! まさか断られるとは思わなかった。
いや、よく考えたら、俺も1人がいいか? ノア4が隠れているしな。なんだったら、部屋を閉めてノア4に手伝ってもらうか。
いざ、掃除を始めてみると、ノア4に手伝ってもらう程でも無かった。
元々、あまり物を溜め込むタイプでは無いので、必要最低限の物しか置いてないし。ノアが、増築施工が終わった際に部屋を掃除してくれてたらしく、綺麗なままだった。
1時間ぐらいで自分の部屋を終わらしたので、隣のシェンユの部屋をノックして手伝おうか聞いてみたら、ドアも開けずに向こうから「1人でやるから~!」って返事をもらった。
廊下に何も出してないし、ドアも閉めきって掃除するなんて、何か隠してるのか? そういえば俺はシェンユの部屋に入った事がない。もしかして、グラビアポスターとかエッチなフィギュアとか置いてるのかな?
他の人達も自分達で済ませそうだし、センギョクさんの手伝いをしてくるか。
1階に降りると客席とカウンターには、ナベやらフライパンやら調理道具と調味料で、いっぱいになっていた。
「センギョクさーん。自分の部屋の掃除、終わりましたぁ」
「おう、そうかぁ。悪いけど、こっちに来てくれ~」
呼ばれたので、階段とカウンターの間から厨房の中にいくと、センギョクさんが大きなナベを支えてて、ミンレイさんが中を洗っていた。
「尻のポケットに入ってる手紙をとってくれ」
「あ、はい」
なんだ? 手伝いじゃないのか?
「各自の部屋の掃除が終わったら、共有空間の掃除を担当に分かれてやる予定だ。2階の廊下、階段、外の畑とかな。けど、ノアからの要望があってタツキの担当場所は決まっている」
「えっ? ノアから? どこだろう……」
「トイレだ」
「えっ? トイレ? なんで?」
「知らん。理由は、その手紙に書いてあるんだと。俺も読んでないから、知らん」
どうせ、くだらん理由だろ。
『愛しのマスターへ
この手紙が読まれているという事は、もう私はマスターの御側にはいないのですね』
ワナン国に行ってるだけだろ! 天国にいます。みたいなノリで書くなっ!
『さて、マスターの掃除担当についてですが。2階の寮生の共用トイレと、1階のお客さん用トイレとさせて頂きました。その理由2つあります。まず1つ目はマスターにウンコの変人という蔑称が付きつつあるという事です! 理由はウンコの被り物を9つも部屋に飾り、ウンコの怪人と会って生きていたらからみたいです。
なら、いっそのこと、トイレを綺麗にしてウンコの魔神になりましょう!』
なんでだよっ! ならねぇーよ!
誰だ! 俺にウンコの変人なんて蔑称つけようとしてる奴。まぁ、どうせ、ゼルトワあたりだろうと思うけど。
『もう1つは、ズバリ! トイレが、イカ臭いかもしれないからです!』
……
うーん。
うん。
『最初の4号機との生活は、伺っています。という事は、今回も、トイレ――』
俺は手をクシャクシャにした。
「納得できる内容だったのか?」
「はい! センギョクさん。トイレ掃除、任せて下さい! トイレで生活できるぐらいにピカピカにして、なんなら、快便になるように、ウンコの被り物も備え付けておきます!」
「そ、そうか。まっ、何でもいいんだ。やってくれるなら。じゃ、頼んだぞ」
その後、俺は1日中かけて、2箇所のトイレを綺麗にした。




