と
貴行と鈴は準備万端でお花見へと出かけようとする。
ドアを開けて表へと出るとそこには京子が待ち構えていた。
「どこに行くの?」
鋭い眼光に貴行は怯む。
「お、お花見、に、行こうと思って」
「へぇー、私を置いて? 鈴さんと?」
京子は壁にコップを当ててお花見の予定を立てる貴行と鈴の会話を聞いていたのだ。
「あ、あ、うん、まぁ、そう、かな……」
目を逸らす貴行の脛に下段蹴りが見舞われる。
「うがっ!!」
手に持っていた荷物を落とし、脛を押さえる。
そんな貴行の様子を見ながら鈴は言う。
「すいません、これからご主人様と私はお花見に行くんです、邪魔をしないでください」
鈴から発せられる想定外の言葉に戸惑いながらも京子はすぐに言い返す。
「は、はぁ!? 人の兄を勝手に連れ出さないでくれる!? 私には貴行を就職させるっていう大事な役目があんのよ!!」
「今、それとこれとは関係ありません、京子さんも分かってるはずです、無理なこじつけはやめてください」
鈴も譲らない、ここを切り抜けなければ貴行とのお花見に行く事ができないと分かっているからだ。
「何言ってんの!? 人の兄の家に転がり込んで置いて!」
「それも今は関係ありません、ご主人様、立てますか?」
居心地悪そうに落とした荷物を持ち直している貴行へと声を掛ける。
「あ、あぁ、うん、立てる立てる」
「貴行! アンタもなんとか言いなさいよ!! 働きもしないでお花見なんか行くつもりなの!?」
激しく声を荒げる京子の顔を少し見て言う。
「ごめん」
貴行は鈴の手を引いた。
「行こう」
京子は無視されてしまうという事を機敏に察した。
「私も行く!!」
「え?」
「私も行くの! いいでしょ!?」
京子は言葉に苛立ちを交える。
「い、いいけど……」
貴行のその言葉に鈴は驚いた表情になり、貴行と京子を交互に見て、やがて俯いて耳を垂れた。
鈴は、貴行とお花見に行きたかった。
そこに京子が入ってきて貴行がそれを了承してしまった事で少し気分が落ち込んだ。
「鈴、京子が一緒でもいいよね?」
まとまり掛けている事を覆せる鈴ではなかった。
「は、はい」
「当然でしょ」
京子は腕を組み尊大な態度を見せた。




