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「の、貴行、今夜星見に行かぬか」
時刻は黄昏時。昼から貴行の部屋に来ていた刀間は呟くように貴行へと話しかけた。
「私の社から見えるのじゃ、とても綺麗な星が」
「何ロマンチックな事言ってんのよ」
刀間の言葉に雑誌を読んでいた京子が反応する。
「京子も共にどうじゃ、星を見た事はあるか」
刀間は京子も誘う。
「な、ないけど、何? 貴行と行きたいんじゃないの?」
「違う、鈴、お主も来ぬか」
今日の刀間は少し様子が違っていた。
妙に落ち着いて反論をあまりせず、いつも以上に穏やかだ。
「私もですか?」
前掛けで手を拭きながら鈴は答えた。
「うむ、皆に見てほしい、私が綺麗だと思う物を」
普段とは違う刀間の様子に貴行と鈴と京子は顔見合わせながらも、星見へと行く事にした。
夜になるまで待ってから家を出て神社へと来た。
「……本当に綺麗ね」
雲一つなく澄んだ空に浮かぶ無数の星を見上げながら京子は呟く。
鈴と京子が夜空に瞬く星へと見入っている横で刀間は貴行の手を強く握った。
「刀間?」
その力の篭もる小さく繊細な手から、縋る様な気持ちを感じた貴行は月明かりの中に刀間の表情を見る。
森厳さを湛える瞳の端から一筋の涙が零れ落ちた。
「の、貴行よ」
「な、何?」
刀間は震える唇で言葉を紡ぐ。
「お、お主は、この空を、美しく思うか」
貴行には刀間の言葉が何を意味するのか分からなかった。
そしてどう答えれば刀間の涙を止める事ができるのかも分からなかった。
「思うよ、見られてよかった」
そんな貴行は素直な言葉述べる。
嘘偽りの無い、真の言葉だった。
「そうか、そうか」
刀間は何度も頷きながら涙を止め処なく溢れさせ、最後には貴行へと抱き縋り、顔を埋めて泣き声を噛殺すような声を漏らす。
「と、刀間、どうしたの」
貴行はできる限り答えを聞かないという意思を含ませてその言葉を伝える。
「うっ……貴行……貴行……くっ……」
その様子に鈴と京子はかなり送れて気が付いた。
「何? 貴行が泣かせたの?」
京子の心無い言葉を聞いても貴行は言葉を発しない。
少しでも多く泣き縋ってくる刀間の心を受け止めようとする、貴行なりの優しさだった。
鈴は事態を飲み込む事はできないまでも貴行の意図を察して静かにその様子を見守っていた。
全てを受け止めてくれる貴行に抱かれて刀間は泣いた。
涙が枯れるまで、空には星の瞬く夜の社で、大好きな貴行に抱かれながら、延々と泣き続けた。




