ゐ
「おっぱい、で、画像検索……」
エンターキーが押される音が薄暗い室内へと響く。
明かりはモニタから発せられるだけだった。
時刻は夜中の1時39分を回っていた。
貴行はネットに落ちている卑猥な画像を探している。
鈴と同居を始めてから貴行の卑猥生活は夜中にこっそりと楽しむだけの物となっていた。
ただし鈴の寝姿を見るだけでも貴行の卑猥生活はとても潤っているという点にも留意してほしい。
貴行はそれだけに飽き足らず、鈴が訪れる前に享受していた卑猥分までを貪欲に望んでいたのだった。
「ご主人様……」
貴行はその声に背筋を凍らせた。
恐る恐る振り向くと、鈴はきちんと自分の布団へと蹲るように眠っていた。
「え、えへへ、だめですよ……そんな、あぁ……」
先程の声は寝言だった。
貴行は一安心してモニタへと視線を戻す。
「おっほぉ……」
感嘆の声を漏して卑猥画像へと見入る。
その画像を嘗め回すように見て脳裏に焼き付けた貴行は次の獲物を探して画面をスクロールする。
貴行好みの画像がまた一つ見つかった。
呼吸を静かにしてその画像を真剣に凝視する。
「ご主人様」
また鈴の寝言が聞こえた。
貴行は振り返らずに画像を見続ける。
「ご主人様」
繰り返される寝言を鬱陶しく思った貴行は少しだけ振り返り鈴の方を見る。
鈴は正座をして貴行の斜め後方へと控えていた。
貴行の顔に乳酸が溜まったような感覚が突如として現れる。
「す、すすすす、すすすず」
尋常ではない驚きを露にする貴行に鈴は笑いかける。
「別に怒るつもりはありませんよ」
「せ、せめて、せめて、きょ、きょ、京子には言わないでくれぇぇぇ」
「はい、京子さんにも言いません」
鈴の優しく浮かべる笑顔に貴行は少しの落ち着きを取り戻す。
「ほ、本当に?」
「はい、私とご主人様だけの秘密です」
貴行は心が解き放たれたような開放感に包まれる。
「ひ、秘密の、ついでに……」
鈴が顔を赤くして俯きながらに言う。
「もう一つ、私とご主人様だけの秘密を、作りませんか……?」
晒の胸元を少し引っ張って谷間を見せ付ける。
貴行は目を見開いてその谷間を凝視した。
「え、え? 俺と、鈴だけの秘密……?」
鈴の胸の谷間から目を逸らさずに鈴へと聞く。
「はい、私とっても、切ないんです、抱いてください、ご主人様……」
瞳を潤ませながらの鈴が抱き付いてくる。
そこで貴行の目は覚めた。
開け放たれた窓から入る、夏の湿気を孕んだ風に、白いレースのカーテンが揺らめいている。
「あ、ご主人様、おはようございます」
「あ……おはよう」
呆気に取られたような顔をしている貴行を心配した鈴が声を掛ける。
「大丈夫ですか? ご主人様?」
全ては寝苦しい夏の儚い夢だった。
貴行は夢の中で、儚い夢を見ていたのだった。




