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「海に行きたい」
京子のその一言で一行は市民プールへと来ていた。
「なんでプールなのよ、私は海に行きたいって言ったのよ」
平坦な口調で怒りを露にする京子。
刀間と鈴は貴行が行くならと付いて来ていた。
「だって京子泳げないし、海なんて行ったら危ないよ」
「アンタってほんっと頭空っぽよね、豆腐でも入ってるんじゃないの?」
「なんでプールじゃダメなの?」
「海だったら泳がなくてもほかに色々あるでしょ!? スイカ割りとか、砂遊びとか! でもプールだと泳げなかったら終りじゃない!!」
「自分が泳げないのを人の所為にしないでよ」
貴行の少しずれている反論に京子は激怒した。
「死ねっ!!」
鮮やかな上段回し蹴りが貴行の頬を捉える。
直撃を受けた貴行はプールサイドに頭を打ってから水の中に落ちた。
スクール水着を来た刀間は腕組みをしてそのやり取りを詰まらなそうに眺めている。
競泳用水着を着た鈴は美しく水に飛び込み、貴行を岸へとあげた。
この競泳用水着はプールに晒で入るわけには行かないという理由から貴行が買い与えた物だった。
京子は川で着ていたツーピース水着をまた着ている。
プールサイドで飲み込んだ水を苦しそうに吐いている貴行へと刀間が話しかける。
「の、貴行よ」
貴行は鈴に背中を摩られながら刀間の方を見た。
「本日は、京子に泳ぎを教える日としてはどうじゃ」
京子の肩が少し反応する。
「そ、そんなの京子、嫌でしょ?」
「貴行は女心に疎いの、良いじゃろ、京子?」
刀間の言葉に京子は顰め面のまま頷いた。
「違うよ、力を入れて浮こうとするんじゃないんだよ」
「そ、そんな事言っても分からないのよ」
貴行と京子はプールの端に一レーン用意された、台がしかれて底が上げてある所で練習をしている。
鈴と刀間は上級者レーンで克己的に競い合っていて、貴行から見る限りほぼ互角だった。
「こう、力を抜いて浮くんだよ」
「力を抜くと沈んじゃうじゃない!!」
少し涙目になる。
「い、いや、沈まないよ、ほら」
貴行がやってみせる。
「見せられてもできないのよ」
京子は眉間に皺を寄せてとても悔しそうな表情を見せる。
「じゃあやめる?」
「やめない!」
貴行はまるっきり小さな子供のようだと思い笑ってしまった。
「何笑ってるのよ」
京子は責める様な口調で言う。
「子供みたいだなぁって思って」
「子供じゃない! 私はもう大人よ!」
自分が子供ではないと主張するその姿が余計に子供らしかった。
駄々っ子のような京子はこの後、休憩を挟みつつ3時間ほど練習を続けたが、結局泳ぐ事はできず、諦めて帰路に付く事となった。




