Le chemin continue.1
【2024年7月】
「よっ……と、とどか、な…い!」
誰よ!こんな高いところに…
『…はい 佐藤さん』
「え?あ…ありがとうございます」
『うん』
この人は藤田チーフ この高さでも軽々手が届くくらい背が高い
ここに置いたの、もしかしてチーフ?
普段は淡々と仕事をこなしているイメージだけれど
笑顔が素敵なの はぁ…私にも向けてほしい…
私の"推し"である
私は佐藤美咲 この会社に就職して5年近くになる
仕事にも慣れて、後輩も何人か入ってきている
私はその他諸々の品出しをこなし、
藤田チーフと倉庫整理をしていた
『…お疲れさま これ…』
「あ…ありがとうございます…いただきます」
缶コーヒーをいただいた
ありがたいけど…開かない…
『…貸して』
「すみません…」
"プシュ"『はい…』
「ありがとうございます あ、うま…」
『…ふっ』
え?笑った?
『あなたはいつも綺麗な言葉を使うのに、食べ物や飲み物のことになると 途端にうまい!とか言い出すんだよね』
「そ、そうですか…?」
『うん…そういうところは近寄りやすくていいと思う 普段は近寄りがたい雰囲気がでているから』
「え!?」
『…ほら、眉間 しわが寄ってる…
可愛い顔が台無しだよ? では』
「え…っ」
か、かわっ…!?あのチーフが言ってくれたの!?
嘘でしょ…!?
あ…み、眉間…気をつけなきゃ…
顔が熱くなってる気がして冷たいコーヒーを一気に飲み干して仕事に戻った
【藤田point of view】
………おかしい
あの子を前にすると、調子が狂う
[藤田ーっておい!どうした?]
『え?なんだ、牧野』
[顔真っ赤だぞ…]
『(咳払い)何でもない それで、どうした?』
[あ、そうそう 店長が呼んでるぞ]
『店長が?わかった』
【事務所】
『店長、お呼びですか?』
あ、来たね ▲■店で特売の商品が足りなくなったんだそうだ、うちはまだまだ在庫があるから、
佐藤さんと行って届けてきてくれないか?
これ、リストね
『わかりました』
佐藤さんと…か まだ倉庫にいるのかな
『あ、佐藤さん!ちょうどよかった!』
「はい?」
『ちょっと▲■店に行かないといけないんだ、一緒に来てほし』
「▲■!?行きますっ!」
『あ、あぁ…ちょっと倉庫に行って車に積み込むから手伝ってくれる?』
「はい!」
…なんか食い気味に返事されたな
同期でもいるのかな…?
『さ、行こうか』
「はい」
▲■店は車で30分といったところか
話すことがない…さっきのこともあって少し気まずい
『よし、着いたよ 佐藤さん、先に店長を呼んできてくれる?事務所にいらっしゃるはずだから』
「はい!行ってきます」
【美咲point of view】
2人きりでドライブ…きゃあー!
会話はなかったけど…それでもいいっ!
運転中の横顔かっこよかったぁ…
あっと、いけない…事務所…どこかなぁ…
あ!あの部屋ね
「おばさまっ!」
<こら!仕事中は店長と呼びなさい 美咲>
「あっ…ごめんなさぁい うれしくてつい…」
<まったくもう…誰もいなかったからよかったけど…
元気そうね>
「はい!」
<持ってきてくれたのね!ありがとう
藤田くんと来たのよね?>
「そうです」
<そう、行きましょうか>
<藤田くん、お疲れさま>
『高柳店長お疲れ様です どちらに運びましょう』
<倉庫にお願い そこにいる本田くんに一箱ずつ渡しといてくれる?品出ししてもらうから
あ!この子、借りていくから終わったら私の部屋に来てちょうだいね
覚えてるでしょ?事務所の奥ね>
『はい 承知しました』
(小声)「店長…?」
<いいからいいから!おいしい紅茶があるの>
「わぁい♪」
<でも今は他人のフリよ!わかってるわね?>
「わかってまーす!」
お菓子を用意してくれたので、紅茶を飲みながら
いろいろおしゃべりして藤田チーフが来るのを待っていた
【藤田point of view】
ふーっ終わったぞ…
え?…すごい笑い声が漏れてる…
珍しいな…店長がこんなに…
いつの間に仲良くなったんだ?
"コンコン"『失礼します…店長、お待たせしました』
<優弥…じゃなかった 藤田くんありがとう!
紅茶淹れるから 休憩しましょ>
『店長…仕事中ですからね?いただきます…』
<わかってるわよ!>
「…?」
<あっ、藤田くんとはね、5年前にここで一緒に働いてたから よく知ってるのよ>
「そうなんですね!」
『…店長、またこんなに…私物が多すぎると叱られてしまいますよ?』
<もう叱られてるわよー
今の副店長も細かいのよねー>
『店長が大ざっぱなのでは?…それより、珍しいですね?佐藤さんのこと気に入りました?』
<えぇ、可愛い子ね よろしく頼むわね>
『…はい』
「?」
それから私たちは店長にお礼を言って店に戻った
「紅茶おいしかったですね!」
『あぁ、そうだね 店長は無類の紅茶好きでいらっしゃるから…』
知ってます、なんて言えないけど…
「仲良しなんですね?」
『…お付き合い自体は長いんだ 俺が入社する前からだからね』
「そうなんですか?」
『ズバズバ物を言う人だから苦手意識を持つ人も多いけど とても素敵な人だよ』
「はいっ!」
うれしい…私の推しが大好きな人をそう思ってくれているなんて
【藤田point of view】
<よろしく頼むわね>…か
…何をだ?凛さんにも困ったものだ
さて、俺も仕事しないと…
『店長、戻りました 高柳店長がよろしくお伝えを…とおっしゃってましたよ』
そうか、助かったよ お疲れ様
『いえいえ 失礼します』
部屋に行って事務作業でもするか…
[藤田ーおつかれーちょっといいかー?]
『牧野、どうした?』
[お前の金曜の休みなんだけど、俺の土曜と変わってほしいんだ これからずっと]
『なにかあるのか?俺は構わないが』
[助かる 子どもが習い事を始めたんだが、
妻ばかりに送り迎えさせられないからな]
『そうか お子さん何歳だっけ?』
[5歳・3歳・0歳6ヶ月だな 上2人が水泳を始めてな]
『この間生まれたかと思ったのに大きくなったな』
[お前も早く結婚すればいいのに…彼女作るとかさ?]
『俺はいいよ』
[ふーん じゃあそういうことで頼んだぞー]
『あぁ』
土曜日か…
2日間とも佐藤さんと同じになるんだな…
まぁ、だからどうということはないのだが
あ、レジ表直さないと…
【美咲point of view】
"コンコン"「藤田チーフ…わぁ…」
『…』
"トントン"「チーフ?」
『え?』
「あ、…集中なさってましたか?すみません」
『あ、いや…すまない どうかした?』
「あっ、(業者)さんがチーフから連絡が欲しいそうですので…お伝えに」
『ありがとう 連絡してみるよ』
「はい 失礼します」
タイピングはやかったー
キーボード全然見てないし…今度コツとか教えてもらおうかな…
さてと、品出しの準備しちゃお
【藤田point of view】
さっきの(業者)さんに連絡したら
佐藤さんに頼んでおいた発注の件だったんだけど…
おかしいな どういうことだ…?
【1階 倉庫前】
佐藤さんは…どこかな …こっちにはいないか…?
…ん?誰かの話し声が聞こえる
{あの女ほんとムカつくー}
❲もう…声が大きいってー❳
{あんただってムカついてんでしょ?佐藤さんのせいで鮮魚の堺くんに振られたじゃん}
❲それはあたしよりあの人のほうが魅力的だったからで…別に恨んじゃいないわ❳
{あたしは嫌い …仕事できますみたいな顔して
あーいうの見てるとイライラするのよ…
同僚なんてどうでもいいですみたいな}
❲…まぁ、彼女は彼女なりにいろいろあるんじゃないの?❳
{よく擁護なんてできるわねー
今年に入って3人目だって!佐藤さんに振られたの
あまりにもイラッときたからさー、ちょっと発注もいじってやったわけ}
❲ちょっとーやめなってー…露骨にシカトしたりさー
ほどほどにしないとバレたらまずいよ❳
…戸山さんと山口さんか
発注の件は、やっぱりそういうことだったんだな
こういうのってどうしたらいいんだろうか
『もしもし、店長、お忙しいところすみません
藤田です 先ほどはありがとうございました
えぇ、それで……』
【2階 倉庫 美咲point of view】
ふー…疲れた…
こんな倉庫の隅っこで休憩してるのは
何人かに告白されたのを振ったせいで休憩所に行きづらいからだ
昼間はそんなに会うことはないんだけど、
夕方はかち合っちゃうから…
というか、なんで私がこんな隠れるみたいなことをしなくてはいけないのかわからないんだけれど…
『あ、佐藤さんここにいたのか』
「チーフ…なにかご用ですか?」
『うん、ちょっと部屋に来てもらってもいい?』
「はい」
なんだろ…なにかあったのかな?
『発注の件なんだけどさ、特売の発注ってしてあるよね?』
「はい おととい終わらせてありますよ」
『それがさ、さっきの(業者)さんから、発注がされてないって言われたんだ』
「え?そんなはずは…」
『だよね…あっ発注の方は俺の方でやっといたから安心して』
「ありがとうございます お手数おかけしました」
『ううん で、ちょっと考えたんだけど
発注、ここでしたらどうかな、と思って』
「え?チーフのパソコンからですか?」
『うん 牧野と休みを変わることになってね、2日間とも佐藤さんと俺の休みが被るからさ、ちょうどいいかなー…って…』
「…そうなんですね…わかりました」
『そういえばさっき、倉庫の隅っこにいたのって
もしかして休憩してたの?』
「あー…はい」
『どうした?休憩所行かないの?』
「…落ち着くので」
『…そうなのか…あ、用件はそれだけなんだけど…あの…』
「はい?」
『あ、いや なんでもない わざわざごめんね』
「いえ では失礼します」
発注…なにかされたのかな
データ…消された?
いや、でも…店に迷惑がかかることをするかしら
それにしても…チーフと休みが同じ…ふふ
会える日が増えるー!
発注も一緒にできるし…それがうれしくてどうでも
よくなっちゃう!だめだけど!!
【藤田point of view】
…すごいな 高柳店長の言う通りの展開になった
女性のいざこざだから、女性の意見が聞きたくて
相談したんだが…
<気にする子じゃないわよ、あの子は
きっと、いちいち説明しなくても察して何も聞いてこないでしょうね
何かされたとしても仕事で黙らせるタイプね
私でもそうする>
店長、よく見てるんだなぁ…
[おーい]
『おう、牧野 もう定時じゃないのか?』
[おう 帰るんだけどー佐藤さん、鮮魚のやつ振ったんだって売り場ですげー噂になってるぞ]
『そうなんだ』
[それだけ?お前、気になんねーの?]
『え?なんでだ?』
[…まぁいいや んじゃおつかれー]
『お疲れさん』
ん?なんだ…?
そりゃモテるだろ…あんなに可愛くて仕事ができるんだから
…モテるよなぁ…そりゃ…
さて、倉庫に行くか
【出入口前】
あれ、佐藤さんだ
誰かと話してるな… あ、男だ…
スーツ着てる…彼氏、かな
へぇ…あんな顔もするんだ…
彼氏か…そりゃいるよな…
え?あ!!こっち来る…やばい…
…って何で隠れてるんだ
別に悪いことしてるわけじゃないのに……
【↷10分前 美咲point of view】
ん…?Rileだ …出入り口で待ってる?
「界人!」
〔美咲、仕事中にごめん〕
「どうしたの?」
〔さっき父さんのところに寄ってきたんだ
これ、美咲にって〕
「…これ、まさか…」
〔お見合い写真だって〕
「…またぁ!?」
〔しょうがないよ…上の人から言われてるみたい〕
「はぁ…いい加減にしてほしいわ…私、好きな人いるのに…」
〔わかる!わかるけどさ…とりあえず渡したから!
僕には怒らないでくれよ…姉さん!〕
「はいはい…あ!本社、ちゃんと務まってるの?」
〔もちろん!頑張ってるよ 今から部長とメーカーさんのところに行くんだ 美咲も仕事頑張れ〕
「やだ、待たせてるの!?ありがとう!いいから早く行って」
〔うん!じゃあね!〕
…まったくもう!パパったら…
断ってくれればいいのに…
上の人っておじさまじゃないでしょうね…
はぁ…とりあえず、これしまってこよ…
【女性更衣室】
…あ 戸山さんだ
「お疲れ様です」
"しーん" 無言で行っちゃったわね…
去年あたりから嫌われてる?とは思ってたけれど
最近あの人露骨に私のことシカトするのよね
シフトも逆だし接点ないから別にいいけど…
遅番だから、あと3時間か…
あ!そうだ チーフのお部屋で明日の発注させてもらお!
【藤田point of view】
ふぅ…結局部屋に戻って来ちゃったんだけど…
やっぱ倉庫行こ…何してるんだ、俺は
"コンコンコン"『はい?』
{あのーチーフ…ちょっとお話しがあって…}
『戸山さん 何ですか?』
{あの…このあとお時間いただけませんか?}
『仕事が終わったら、ということかな?』
{はい ご相談したいことがあって}
『あー…仕事中では駄目なのかな?今でもいいけど
{あ、もう帰る時間か 戸山さんは』
あの、それが…}
"コンコン"「失礼します…」
{…っ!チーフ!}
『ちょ、ちょっと…』
「あっ」
『あ、佐藤さん…』
「…すみません 出直します」
『あ、待って!…いいかげん離してくれないか』
{…あっ!チーフ…}
いきなり抱きつかれたのを、佐藤さんに見られてしまった
早く追いかけないと…
え?なんで追いかけるんだ…?
いや、いい 今は早く…どこいった…?
あ、いた!
『佐藤さんっ…』
「…何ですか?」
『いや、あの、さっきのは』
『何も見てませんから…失礼しますっ!』
あ…手を振り払われて、走って行ってしまった…
【美咲point of view】
何も見てない、は無理があったわよね…
あー…抱き合ってたなぁ…付き合ってるのかな…
そりゃ彼女の1人や2人いるよね…
あんなにかっこよくて素敵な人なんだから…
……
いやいや…!さっ!仕事中よ、仕事しなきゃ!
チーフの部屋行きづらいから…事務所で発注しよ
【事務所】
「柴田さーんパソコンお借りしまーす」
〚はーい!発注かしら?〛
「はい」
〚あら?佐藤さんの分は藤田さんのパソコンからって聞いてるわよ…?〛
「あ、あー…!忘れてました!行ってきます…」
〚はーい いってらっしゃーい〛
…はぁ…
もう話が伝わってたのね 仕事が早い…
ちょっと時間置こう… さすがに気まずいもの…
{ねぇ、ちょっとあんた}
「あ…戸山さん…」
{いつもいつも邪魔すんじゃないわよ!}
「え…すみません」
{さっきだってあんたのせいで…っ}
え?殴られる!?………あれ?
『…ってぇ』
「え?ち、チーフ!?」
{え、あっ…なんで…}
『…佐藤さんに手を出すな』
「…え?」
チーフの怖い顔、初めて見た…戸山さんは走って行ってしまった
「チーフ…大丈夫ですか…あ、眼鏡が
えーっと…下に落ちちゃってますね」
『あっ、どこ…?』
「ありました、ひびは…うん、入ってない よかった…え」
え…ちょ、ちょっと待って…眼鏡外したチーフ…嘘でしょ!?ちょっと…誰も見てないよね…?
ちょうど前髪で隠れててわからなかったけれど…
かっこよすぎ…やばー…
『あ、あの、佐藤さん…?』
「…はっ!あ、はい、ここです メガネ…」
『ありがとう 助かったよ それがないと見えなくてさ』
「あ、いえ…あの…チーフ、発注させていただきたいんですけど…」
『うん…部屋行こうか』
「はい…」
それにしても…かっこよかったぁ…
誰にも見せたくないなぁ…
「すみません…私のせいで…チーフが叩かれてしまって…」
『いやいや、佐藤さんのせいじゃないし』
「でも…」
『あ!そうだ、良かったら明日食事でもしない?』
「え?私と…ですか?」
『うん 君と』
『…え、はい…』
え!?食事…!?推しと私が!?
プライベートで!?お食事!?
でも、いいのかなぁ…
戸山さんと付き合ってるんじゃ…?
【藤田point of view】
…どさくさに紛れて食事に誘ってしまった
紛れすぎじゃないか!?変に思われたよなーきっと
「ーフ…チーフ?」
『え、え?ど、どうしたの?』
「発注できました…パソコンありがとうございます」
『あ、そうか うん おつかれさま』
「では、私はこれで…」
『あ、待って!』
「はい?」
『あ、あの…さっきのは…いきなり抱きつかれただけだから…』
「…あ…そうだったんですか…ホッとしました
失礼します」
え…ほっとした…?
…しばらくその場から動けなかった
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