第2話 スーパーコンビ
やがて月日は流れ、俺はコネを使って、ある運送会社で働き始めた。
高校時代、アルバイトの時給は500円。月に働いても稼げる金はせいぜい2万円ほどだった。
それに比べれば、運送会社の給料は遥かに良かった。
それでも月の手取りは10万円そこそこ。
だが、学生時代に比べれば、自由に使える金は確実に増えていた。
そうなると、パチンコの打ち方も自然と変わっていった。
それまで遊んでいた羽根物から、セブン機や一発台へと手を出すようになったのだ。
その中でも、俺が特に好きだった台がある。
「スーパーコンビ」
いわゆる一発台と呼ばれる機種だった。
仕組みは実にシンプルだ。
狭い釘の間を玉が通り抜け、三つ並んだ穴の手前に落ちれば大当たり。
ただ、それだけのことだった。
しかし、その単純さが俺を夢中にさせた。
今にして思えば、随分と分の悪い勝負をしていたものだ。
今でこそ等価交換や高価交換が当たり前のようにあるが、当時は4円で借りた玉を2円50銭で換金する店がほとんどだった。
つまり、借りた玉をそのまま換金しただけで、すでに大きく損をする計算になる。
そんなことは当時の俺にもわかっていた。
それでも打ってしまう。
なぜなら、スーパーコンビには、それを忘れさせるだけの魅力があったからだ。
一度当たれば、約1万5千円。
高校時代、時給500円で働いていた俺にとって、それは30時間分の労働に相当する金額だった。
たった一発の玉が、何日分もの稼ぎに化ける。
その魅力には、どうしても逆らえなかった。
しかし、そんな生活がいつまでも続くはずはなかった。
一度当たれば1万5千円。
その魅力に取りつかれていた俺だったが、当然ながら毎回勝てるわけではない。
勝った金はいつの間にか消え、負ければ給料から補う。
やがて、月10万円そこそこの給料では、とても追いつかなくなっていった。
俺は少しでも手取りの良い会社を求め、転職することにした。
新しい会社では、それまでとは違った人間関係ができた。
そこで知り合った連中とつるむようになり、仕事が終われば一緒に遊ぶ。
当時はディスコが流行っていた時代だった。
おそらく、世間でいうバブルの頃だったと思う。
テレビをつければ景気のいい話ばかり。世の中には金があふれ、誰もが浮かれているような時代だった。
だが、所詮俺たちのような普通のサラリーマンには、そんな好景気もどこか遠い世界の話だった気がする。
景気が良かろうが悪かろうが、毎月もらえる給料は決まっている。
それでも若かった俺たちは、金があれば遊び、なければ給料日を待つ。
そんな毎日を、それなりに楽しんでいた。
とにかく、ディスコで遊ぶのは楽しかった。
大音量の音楽に、派手な照明。大勢の若い男女が集まり、夜遅くまで踊っていた。
自慢するわけではないが、俺もそこそこモテた記憶がある。
若さというのは不思議なもので、たいして金を持っていなくても、それなりに楽しく遊べるものだった。
あの頃は、明日のことなど深く考えず、ただ目の前の楽しさを追いかけていた。
そんな楽しい日々を送っていた俺だったが、やがて生活にも変化が訪れた。
同棲するようになったのだ。
それまで当たり前のように繰り返していた夜遊びも、自然としなくなっていった。
あれほど楽しかったディスコ通いも、いつの間にか過去の思い出になっていた。
そんな毎日を送るうちに、あれほど夢中になっていたパチンコからも、自然と足が遠のいていった。
だが、それは決してギャンブルから足を洗ったということではなかった。
俺が次に覚えたのは、競馬だった。
パチンコとは違う、新たな勝負の世界。
俺はまだ、この先も長くギャンブルと付き合っていくことになるとは、考えてもいなかった。




