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怪異6.ガラス細工のマインド

私が働きはじめたときよりも、ビジネスシーンでカタカナ語が増えた気がします。アサイン、アジェンダ、アグリー……

意味も知らずに使うと恥をかくので、事前に言葉は調べておくマインドが必要です。

 これから、とある男性の話をしようと思う。これは半ば私の手記に近い。


  私はH県A市のある会社で働くなんの変哲もないサラリーマンだ。七転び八起きのような起伏に富んだ人生でもなければ、順風満帆と言った人生でもない。

 きわめて平坦で波風立たぬ人生を送ってきている。


 世の中にはどう考えても「そうじゃないだろう」と言いたくなる日々、出来事がたくさんある。理不尽な出来事、あるいは間違いを知らぬままに突き進む人。


 これは伝え聞いた話であり、その件について本人と私も会話したわけではないが、備忘録として一頁を埋めることをお許しいただきたい。


 A市某貸会議室。この日は社内の会議室がすべて使用されており、市内にある貸会議室を借用して部課長会議が行われていた。私も一度だけそこに訪れたことがあるが、市民が広く利用できる公民館に近いイメージだ。

 議題は淡々と進み会議も終盤に差し掛かったころだ。

 部長の一人が口を開く。

「特定業務をできるヤツが今、ウチのグループに二人しかおらんから、正直キツイです」

 特定業務。

 私が働く業界では特殊な業務があり、有資格者でなければそれに従事することが認められていない。詳細は割愛するが受講にも諸条件があるため、経験年数や試験合格だけでは資格者になれないということだけお伝えしておこう。

 話が少し逸れたが、つまるところ通常業務に加え特定業務が多くなり、従事できる社員の精神的、身体的負担を考えての発言だった。

「アイツらばっかりに負担がかかって、アイツら心病むんちゃうかと思って。マインドが心配なんです」


 マインド――


 発言した部長を除き一同は首を傾げずに目線だけが行方不明になる。部長はその苦境を訴え続ける。


「なんせこれだけのボリュームに対して、二人でやるのはキツイです。あの二人、元々マインドが弱いし、負荷かかったら病みますよ」


 マインド――

 

 再びその部長を除き、マインドの着地点を追う。既に発言内容など皆、上の空だ。

 

 マインドという言葉はそもそも日本語ではない。こういった言葉をビジネスで使うこと自体は日本特有の文化であり、私もよく耳にする。アジェンダ、アサイン、マインドセット……あげれば枚挙にいとまがないが、マインドの使い方は違う気がする。


 発言した部長とは異なる企画部長がそっと違う課長に耳打ちする。

「マインド……って、意味違う思うんですけど、相変わらず激しい感じで攻めてきますね」

 若干備後なまりの言葉で企画部長は話しかけてくる。


 その議題を打ち出した部長のそばにいた課長が述懐してくれた。「あの人、会議始まる前にチョコバット食べてたわ、甘い香りしたもん」と。


 今日もそのUFOキャッチャーに勤しむマインドを持って部長は戦い続けていた。


 恐ろしいマインドだ。

皆さんの会社にもこんな人はいますか?これは私が知り合いから聞いた話です。

ぜひ読者の皆さんも会社であった怖い話や面白い話を教えてください。

勝手に想像を膨らませ、ホラー、コメディ、シリアス…お好みの短編にしてみます。

ぜひ、よろしくお願いします。


※1.「自転車の魔法使い」も毎週金曜日20時に更新しています、引き続きよろしくお願いします。

※2.「鉄火、錆を削ぐ」一部完結済みです。第二部(完結編)は2026年7月中旬から再開予定です。

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