怪異4.高く笑う九官鳥
最近はツバメが巣作りをしていて初夏を感じます。軒先にたくさんの雛がいる姿を見て心を和ませる一方で、糞害も多く出ます。でも私たちだけの尺度で物事を考えてはいけませんね。
これから、とある男性の話をしようと思う。これは半ば私の手記に近い。
職場には実に多種多様な生態が存在している。その中でも、群を抜いて不気味な存在もあなたの働く場所にもいるのではないだろうか。
無論、私の職場にもいるーー
これまで私はいくらかの怪異について述べてきたが、その中でも屈指の怪異をご紹介したいと思う。
これまでの怪異に勝るとも劣らないものだ。その耳目に神経を研ぎ澄ませ、体感してほしい。
恐怖の耳鳴りがあなたのもとへ届くこと……
いや、届かないことを願おう。
もう何年も前になる。私が当時二十歳そこそこの若者だった頃だ。
日差しが強く、湖の光が照り返す。海水浴ならぬ湖水浴を楽しむ若者たちを横目に私は目的地を目指していた。
最寄り駅に着き、しばらく歩く。少し歩くだけでも汗だくになる。
取引先から故障した機械の話を聞き私は出張修理に伺ったが、その機器は正常に動作しており直しようがない状態だった。
とは言え、クレームが入った以上何らかの処置をしなければならない。右も左もわからない私はその機械に詳しいという人間と話をするようにと先輩からの指示を受けた。
二つ折りの携帯電話で電話帳から指示された人間を探す。今とは違ってカチカチと音を立てながら名字の頭文字を探す。
は、ひ、ふ、へ、ほ……
おっと。通り過ぎてしまった。
逆戻りに調べ直しその人の名前を見つける。通話ボタンを押して、そのまま受話器を耳に傾ける。
そう言えば電話の音声はその人にもっとも近い合成音声を使っているのだなあ。という下らない雑学を思い出しながら相手を待つ。
電話特有の発信音が聞こえる。三回目か、四回目のコールだったと記憶している。
あ、出た。
「お疲れ様です、技術営業一課の……です」
「もしもし……ですけど〜!」
待て。なんだこの声は。なんだ?人間の声か?
私は聴覚、視覚ともに平均値はあるがまるで九官鳥かインコのような喋り方と高音ではないか。
ん?ペットショップに電話を掛けた記憶はない。一度確かめるべきか。
「すみません、……さんですか?」
「そうですよ〜! 何かありましたでしょうか?」
いかん。どう考えても本人のようだ。このときが初めてだったのだが、後に私は「うちの会社は知性ある動物がたくさんいる、素晴らしい会社だ」という話を聞いた。
その言葉は紛れもない事実だと今も思っている。それと同時に知性という言葉の哲学も深く考えさせられ、今日に至るわけだが。
「あの、現場でこういうことがありまして……」
「あぁ〜! こういうことですかぁ?」
「いえ、違います」
埒が明かん。
とりあえず私は状況説明するが、的を得ないというか、要領を得ないと言うか。有り体に言うと
何を言っているのかわからない。二十歳そこそこの人間ですらこの一言に尽きた。
もちろん、当時の私も知識や経験が少なく説明にまごついたのは間違いないだろう。しかし、それを加味しても、まあ何を言っているのか分からなかった。
結局、その機材を客先からセンドバック修理というカタチで回収したのだが、その機材が今どうなったのかは私の知る由もないのである。
皆さんの会社にもこんな人はいますか?これは私が知り合いから聞いた話です。
ぜひ読者の皆さんも会社であった怖い話や面白い話を教えてください。
勝手に想像を膨らませ、ホラー、コメディ、シリアス…お好みの短編にしてみます。
ぜひ、よろしくお願いします。
※1.「自転車の魔法使い」も毎週金曜日20時に更新しています、引き続きよろしくお願いします。
※2.「鉄火、錆を削ぐ」一部完結済みです。第二部(完結編)は2026年7月中旬から再開予定です。




