怪異13.うつ病の定義
私はメンタルがよくタフと言われます。でも、自分では木綿豆腐かたまご豆腐のどちらかだと思っているほど繊細でプルプルです。タフではなくトフなのです。
お豆腐おいしいですよね。
これから、とある男性の話をしようと思う。これは半ば私の手記に近い。
ある男がうつ病を患ったらしい。
うつ病。
現代社会人なら誰しもが罹る(かかる)可能性のある心の病。
一昔前ならやる気がない、たるんでいる……と一蹴されてしまうものだった。
私自身、「うつ」という病態が恥ずかしながらあまり理解できていない。これは私がきっとそうした心の限界を迎えていない、あるいはタフなメンタルをしているからかもしれない。
うつ病になる人は総じて真面目で責任感が強い人という特徴があるそうだ。
しかし、果たして本当にそうなのだろうか?その疑問に対して私は一石を投じたい。
今回、この手記に書き留める内容は多様な議論や、これからの社会のあり方に対してのかがり火となることを願っている。
「え? 俺がW営業所ですか?」
今からおよそ八年ほど前の出来事だった。
当時、OSM事業所での勤務だった仲山は季節外れの時期にそのことを耳打ちされた。
「ああ、まだ五分五分やけどなあ」
「まあ、わかりました」
悲しいかな。この男もサラリーマンであり、仕事での異動となれば「断る」という思想がほとんどない人間であった。
そして、その数ヶ月後にはそれが事実となり、仲山の異動は決定となった。
W営業所はK支店の配下であり、かなり広域な営業エリアを保有する場所だ。
仲山は着任してその男と出会う。いや、厳密に言えばもっと昔から知り合いではいたのだが。
仲山がこの営業所に配属された理由もその男が理由の一つであったことは間違いない事実であった。
そう、その男がうつ病を患い出社できなくなったからということだそうだ。
ここではその男の名前は片岡(仮称)とさせてもらう。
そういった事情があるのならば、仕方ないと仲山は潔くその営業所に異動したのだ。
仲山が着任してからしばらくが過ぎたある日のことだった。
うつで出社できないと言われていたはずの片岡が、なぜか仲山の真正面の自席に鎮座していたのだ。これには仲山もわけ訳が分からないが、本人は特に何もすることなくただ、座っていた。
そして、仲山は片岡が喫煙に行ったタイミングで事務の女性にそっと聞く。
「片岡さんって、うつ病で出社できんのちゃいましたっけ?」
「いや、そうらしいんですけどね。なんか年休がなくなったから出社せなアカンって言ってまして……」
「え? 休職してるんじゃないんですか?」
「それが休職してないみたいなんですよ……」
二人とも意味の分からない状況でポカンとせざるをえなかったのだ。
その日を境に片岡は元気に出社するようになった。元気にと言ってもリハビリ出社のようで、とりあえず出社するだけ。という感じだ。
もちろん、うつ病からの復帰となると周囲の手厚いサポートも必要になることは近年ではよく知られており、実際に出社だけしてもらうという体制を取る企業も多い。
たが、片岡はそんじょそこらのうつ病患者とはレベルが違った。
来る日も来る日も、自席に座っては勤務中であるにも関わらず大口をあけて「……んごぉー……おう、おう……んごぉっー……」
と眠っているのだ。起きているときも、扇子で己を仰ぎながら「おうっ、おうっ……どぅっふ……」と如何ともしがたい唸りを上げていたらしい。
いよいよ、痺れを切らしたのが当時、協力会社から出向で来ていた木場という男で彼は片岡が寝ている隙にスマホでその寝顔を撮影して、営業所内で拡散したのだ。
「木場さん、この人よく口あけて寝れますよね……」
「いや、ホンマですよね……って、仲山さん、それデスクトップ……」
「あれ、ホンマや……手が勝手に動いてました」
仲山は送られてきた写真をデスクトップにしつつ、隣り合わせのスリルを楽しむようになってしまっていたのだった。これはまさに呪いなのではないだろうか。
皆さんの会社にもこんな人はいますか?これは私が知り合いから聞いた話です。
ぜひ読者の皆さんも会社であった怖い話や面白い話を教えてください。
勝手に想像を膨らませ、ホラー、コメディ、シリアス…お好みの短編にしてみます。
ぜひ、よろしくお願いします。
※1.「自転車の魔法使い」も毎週金曜日20時に更新しています、引き続きよろしくお願いします。
※2.「鉄火、錆を削ぐ」(じゆうに大賞応募作)一部完結済みです。第二部(完結編)は2026年7月15日から開幕いたしました。こちらは毎週水曜日更新予定です。あわせてご覧ください。




