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第89話 石鹸の作成

翌日は久々の完全休みだ。まずはアオカビ培養用の瓶だな。市場に行ってみる。

できるだけ大きな瓶ということで、三リットルくらい入りそうな瓶を二つ手に入れた。


さて、アオカビをどこから採取するか。梅雨時とかに、ときどきパンにアオカビが生えていたな。アオカビが生えたパンを食べると腹を壊す。これは経験済みだ。

つまり、ペニシリン以外の毒素も形成されているということだろう。一方、ブルーチーズは食べられる。生育環境をコントロールして、あまり毒素を出さないようにしているとか。


でも、それじゃペニシリンも生成されないのか?


やってみるしかないな。


市場を見て回ったが、残念ながらブルーチーズはなかった。普通のチーズはあったので、探せばあるのかもしれない。仕方がないのでパンを買っておく。これをカビさせよう。


ついでに魔道具屋にも寄って、どんなものがあるのか見ておく。さすが王都、グランベルクの魔道具屋より品ぞろえが良い。だが、冷蔵庫っぽいものはなさそうだ。


そうだな、たまにはスティーブにもお土産を買って行くか。アイツ、何故か甘いものが好きなんだよな。


このあと、ジェニファーの家にも行くので、多めに菓子を買って行く。


     ◇


さて、ジェニファーの家に行くにはまだ少し早い。夕方ごろに来てと言われていた。たまにはギルドに顔を出すか。

さすがに午後から依頼を受けることは難しい。軍務が終わるのは来週だから、復帰は再来週くらいかな。


そういえば、弓の指導とかもあったな。ロングボウの扱いはまだまだだ。

次にいつ指導を受けられるのか聞いておこう。


「弓の指導員ですか? 当ギルドにはそのようなシステムはないのですが?」


そんな馬鹿な。以前、確かに指導を受けたぞ。ギルド裏の訓練場に行くと、以前指導してくれたおっさんがいた。


「やぁ、少年。弓の指導の続きを受けるか?」

「ギルドには指導員制度なんてないって聞いたけど」

「拙者は“ギルドで指導を受けないか”と言ったまで。拙者がギルドの指導員とは一言も言ってない」


確かにそうだったかもしれない。ギルドの訓練所で指導を受けるなら、“ギルドで指導を受ける”になるのか?詭弁なような気もするが、技術は確かなので指導を受けることにする。今回はロングボウの扱いをメインで習う。ここからしばらくはロングボウをメインにする予定だからな。


「ふむ、基礎はだいたい大丈夫そうだな。あとは自分でしばらく練習してみるといい。最初の一発を撃つまでに時間がかかってるのを改善しないと実戦ではきついぞ」


大きくて取り回しが難しいから、最初の一発までどうしても時間がかかるんだよね。


学院で練習しておこう。


     ◇


その後、ジェニファーの家に行く。


「他のスラムでも治療したいって言ってたわよね。相談してみたわよ」


皆の治療を終えてから、スラム取りまとめのじいさんのところに行く。


「ここから東に一時間ほど行ったところに貧民街がある。そこの取りまとめに話を通しておいた。来週、この時間にまた来ると良い」


レベルを上げるには治療を続けるしかないしな。患者を増やさなければ。


ちなみに、現在のステータスはこんな感じだ。


名前:リュカ・フォン・ヴァルクレイン

年齢:12

職業:僧侶

レベル:4


力:25

速さ:65

体力:36

魔法力:507

神聖力:793

闘気力:26

知性:196


スキルポイント:10


・老化軽減 10%

・投擲

・毒無効

・気配察知

・隠密

・スラッシュ


新たにスキルは取得していないが、毒耐性が毒無効になった。


クララさんには亜ヒ酸の件で手紙を出したから、いずれ返信が来るだろう。


     ◇


「ねぇ、ウチに寄ってかない?」


ジェニファーに誘われる。家には彼女のお母さんがいるはずだから、ここにエロ要素はない。


「ねぇ、見て!」


彼女の部屋に入ると、ジェニファーは水球を作り出した。ピンポン玉くらいのサイズだ。


「凄い!」


素直に賞賛する。俺が生活魔法の水を扱えるようになるまで、どれだけ時間がかかったことか。それを一週間で成し遂げるとは。才能があるんだな。


「これでも魔法使いだからね。でも、火魔法を同時に出すのはまだ無理なの。リュカ君、炎を出さずに火魔法を使ったって言ってたよね。炎を出した状態で水を温められる?」

「こんな感じ?」


直径五十センチくらいの水球の下に炎を出す。


ジェニファーは魔力の流れをじっと見ている。


「うん、なんとなくわかったわ。あと、お風呂魔法も出しておいてくれるかな。ちょっと着替えてくるから」


湯浴み着に着替えたジェニファーは、前回あげた石鹸で体をごしごし洗っている。


     ◇


「そういえば、植物の灰は用意してくれた?」

「もちろん。昨日、灰汁を作っておいたわ。三種類」


油は二種類あるから、合計六種類作れるな。


「じゃあ、あとで石鹸の試作をしようか」


油二種類と灰汁三種類で、石鹸原液を六種類作る。問題は、型を作るのを忘れていたことだ。路地に出て土魔法で型を作り、火魔法で焼成する。素焼きだが、石鹸作成にはこっちの方が良いかもしれない。


「ちょ、リュカ。土魔法も使えるの? それって三種類じゃ」

「三種類は珍しいけど、ジェニファーも頑張ればできるんじゃない」


適当に答えておく。油と灰汁の混合液を型に流し込み、今日の作業は完了。


「じゃあ、来週どうなるか見てみよう」


お土産を渡し、寮に帰る。


寮でスティーブにもお土産を渡す。


「ありがとう。いったい、どうしたの?」


むっちゃ嬉しそうだ。君、男のくせに甘いものが好きだよね。スティーブと二人で軽く槍の練習をし、寮で風呂に入って休む。


「せめて湯浴み着を着てよ」


持ってないって。


男同士で何を言ってるんだ?


     ◇


週明けから、クラスは不穏な空気に包まれていた。ダイアナがクラスの女子たちから無視されている。挨拶をしても返事がない。


このクラスではアレクシアとその取り巻きがスクールカースト上位、一軍となっている。二軍は中位貴族令嬢たちで十人程度。ただし、完全に一軍に従属しているわけでもなさそうだ。


二軍女子は一軍女子とそれぞれで距離感が違うっぽい。そして、そこから外れているのがダイアナ、ジェニファー、ミツアの三人だ。よく見ると、ジェニファーとミツアも疎外されているな。


まぁ、ミツアは初日からだが。


ジェニファーは完全に無視って感じでもない。無視されているダイアナだが、男子とは普通に会話している。ダイアナは元々男子との会話が多いためか、女子生徒から無視されていても問題はなさそうだ。今も男子生徒と仲良さげに話している。


いじめ、ってほどでもないのかな?


     ◇


「ジェニファー、元気にしてる?」


とりあえずジェニファーには声をかけておこう。結構仲良しになってるしな。


「女子あるあるよ。気にしたら負け。でも、研究室は居心地悪くなるかも」


ジェニファーが属しているのは魔法研究室。文字通り魔法の研究をする研究室だが、一軍女子が三人入っているそうだ。


「てっきり、アレクシアの取り巻きは皆、同じ研究室なんだと思ってた」

「アレクシアさんと、ニールセンさん、ブリジットさんは生徒会よ」


そういえば、そんなのもあったな。


「アレクシアさんは風紀担当だってさ。お似合いっちゃお似合いね」


アレクシア、まかり通る。


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