第86.5話 ジェニファーの独白
魔法使いになって、魔力の流れがよく見えるようになった。リュカ君の魔力の流れは、とても綺麗だ。
水魔法の発動時、よどみなくスムーズに魔力が離れ、魔法を構築している。
構築された魔法は、確かに生活魔法のものだ。
だが、込められている魔法力は、魔法使いによる水魔法と遜色ない。私が水魔法を習得するうえで、あれは良い手本になるだろう。
それにしても、あのお風呂魔法とやら、気持ちよかったな。ウチには、毎日浴場に行くほどの経済的余裕はない。お風呂に入らず五日間を過ぎると、体のあちこちが痒くなってくる。
弟たちは川に飛び込んだりしているようだが、私はちょっと抵抗がある。
子供のころは良かった。でも、体が成長するにつれ、男たちの視線が気になるようになったのだ。
そういえば、リュカ君の視線はあまり気にならなかったな。その前に、リュカ君がお風呂魔法で体を洗っているところを見ているからかもしれない。細身だと思っていたけど、意外と筋肉が付いていた。
私の体は、リュカ君にはどう見えたかな。少しサービスしてギリギリまで見せてあげたけど、リュカ君のあそこは素直に反応していた。
そんなことを考えてしまって、自分でも少し恥ずかしくなる。
次はもうちょっと小さめの湯浴み着を用意してもいいかもしれない。
いや、何を考えているんだ、私は。
◇
アレクシアさんに“臭い”と言われたのは、正直ショックだった。私はこれでも女の子だ。恥じらいもある。
自分の体臭については薄々気が付いていた。でも、大勢のクラスメイトの前で指摘されたときは、頭の中が真っ白になった。毎日お風呂に入っている貴族様には、庶民の事情などわからないんだろう。
しかも、ウチは庶民の中でも下の方だ。
毎日の薪だって節約している。毎日体を清めるなんて、夢の中の話だ。
リュカ君の“お風呂魔法”は、絶対に習得しなくちゃならない。
◇
今、自分の体からは花の香りが漂っている。リュカ君がくれた石鹸の芳香だ。
お母さんが使いたそうにしていたが、気が付かないふりをした。
ごめんなさい、お母さん。
リュカ君は石鹸が作れると言っていた。それって本当なんだろうか?この良い香りがする石鹸が自作できるなら、それは凄いことだ。石鹸の製法は秘匿されているはずだ。貴族の息がかかった商会が、一手に作成している。
リュカ君はいったいどこで、石鹸の製法を手に入れたんだろう?リュカ君は確かに貴族だけど、子爵家に秘匿されている石鹸の製法を聞き出す力はないだろう。
リュカ君には、いろいろと秘密がありそうだ。
◇
さて、用意するのは、水にいろいろな植物の灰を入れてよく混ぜ、灰が沈んだら上澄みをすくった灰汁だっけ。
学院がある日は忙しいから、今のうちに準備しておかなきゃ。
石鹸作成が成功したら、お母さんにも使わせてあげるね。




