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第83話 研究室配属

授業が始まった。まずは教科書の購入だ。額は選択した授業によって異なるが、俺の場合、全部で二万ギル近くかかった。古本屋とかもあるのだろうか?


さて、最初は選択科目の薬学だ。あまり人気がない。授業の内容は薬草の種類などに関してだったが、既に知っていることは多い。薬草の名前とか、テストに出るんだろうな。覚えるのがだるいが、仕方がない。


俺が知っている薬草は南西部で自生しているものがメインだが、当然、北部や山地でしか自生しない種もある。


でも、実物を見ないとイメージが湧かないんだよな。


次は政治学。これは必修だ。政治って、王政だしな。民主主義とか社会主義みたいなものは今のところ、この世界にはないようだ。しかも、生徒に王子がいるし。

エーデルヴァルト王国の北側にある帝国も、中枢は王政と同じようなものだ。

中央の王国が周辺の王国を制圧、支配して帝国を名乗っているだけ。このような状態から、どうやって民主主義に移行するんだろう?


やっぱ、革命か?


まぁ、前世でも完全民主主義国に住む人口は全体の一割弱だったしな。


     ◇


さて、昼休み。今日は食堂で丼物を食べよう。


丼物を作るとき、ベースはコメ一択だと思うのだが、スタンダー君はスパゲッティ状の麺の上に肉野菜炒めを載せていた。真似をする気はないな。


食後、教室でのんびりしていると、アレクシア嬢に話しかけられた。


「あなた、その格好はエーデルヴァルト王立学院の生徒として、ふさわしくないんじゃなくて?」


確かにね。冒険者ルックだし、少しくたびれているし。


「いや、古着屋に行ったら全部売り切れで。一応、それらしいのは取り寄せをお願いしてるから、今週末に見に行くつもり」

「なら良いわ。私たちは学外でも、エーデルヴァルト王立学院生徒として見られていることを忘れてはなりませんよ」


「来週には格好良いところをお見せしますよ」


なんか、おっかないな。

アレクシア嬢、見た目は悪くないんだが、いかんせん後ろに取り巻き六人を連れてるのが威圧感があるんだ。


服なんていっそのこと、制服にしてくれたら良いのに。


     ◇


午後は槍術の授業だった。剣術と共に人気を二分しているだけあって、人数が多い。最初の授業は基本動作のみ。さすがに打ち合ったりはしない。

それでも、先生に言われるがままに槍を振っているだけでもかなり汗をかく。しかも、特に速い動きをしているわけではないのに、結構疲れる。


今日の最後の授業は歴史だった。寝ている生徒も多い。俺も眠い。以前、庶民学校で練習していた気配察知で先生の動きを感じながら寝る、を練習するか。


これは気配察知を駆使し、先生がこちらに向かって歩いてきたりしたときに目を覚ますという高度な技だ。


「リュカ君、起きてください。寝すぎですよ」


失敗した。


     ◇


さて、武術の授業で汗をかいた。だが、今日はシャワーの日ではない。俺にはシャワー魔法があるが、あれは屋外での使用が前提だ。主に軍で使っていたからな。排水は地面に垂れ流しだ。さすがにこの部屋で排水を垂れ流しにするわけにはいかない。


というわけで、水魔法で風呂サイズの水の塊を作ってみようか。頑張れば直径一メートル程度の水球は作れるから、可能そうだ。直径一メートルの球の体積は0.5立方メートル程度。つまり、1.5×0.6×0.6mの風呂なら作成できる。


ちょっと狭いかな。まぁ、やってみよう。歪な直方体の水の塊を形成する。立って入れるよう、縦型だ。球より難しいな。火魔法で温める。火炎はなしで温めるだけだ。直方体の制御がきつくなってくるが、なんとかできた。


素晴らしい。さぁ、入るか。お湯の中に入っていく。少し抵抗があるな。

抵抗を押しのけ、体を入れる。すると、水の塊の制御が崩壊した。

部屋中、水浸しである。


「きゃぁ、ちょっと、リュカ君。何やってるの?!」


そのとき、スティーブが入ってきた。俺は丸出しである。スティーブは顔を手のひらで覆いつつ、ガン見している。


「ちょっと風呂に入ろうと思って」


むっちゃ怒られた。


     ◇


まぁ、大量の水で床掃除したと思えばいいだろう。幸い、荷物などは濡れなかったので、水は魔法で窓から捨てておいた。


「リュカは魔法使いなの?」

「いや、無職。あれは水の生活魔法」


不審そうな目で見られる。


「そんな量の水じゃないでしょ」


どうやら、水の生活魔法だとせいぜい水差し一杯程度が限度だとか。そうは言っても、できるんだからしょうがない。軍でも文句言われなかったしな。


いや、見せたのは第二王女の部隊でだけか。


「ちょっとコツがあるんだ」


いや、そんな胡散臭そうに見ないでくださいって。風呂魔法は諦め、たらいにお湯を入れて体を拭く。


「前くらい、隠したらどうなのさ」


こちらをチラチラ見ながら言ってくる。


「男同士で恥ずかしがってどうする。もしかして、スティーブは包茎なのか? 別に恥ずかしいことじゃないぞ」


コップが飛んできた。

痛たたた。


「スティーブも体を拭くか? お湯、用意するぞ?」

「いや、いい。向こうでお風呂に入ってきた」


向こう?


聞くと、どうやら高い方の寮でお風呂を借りることができるとか。

ただし、一回二百ギル。


値段的にどうなんだろう?銭湯としては高いが、スパとして考えるとアリか?サウナとかもあるのだろうか?


「蒸し風呂とかもある?」

「なにそれ?」


     ◇


今日も授業だ。朝イチは数学。庶民の学校より高度だが、まだ寝ていられるレベルだ。

次は外国語。これは選択科目だ。俺はリヒトシュタイン語を選択した。文字はほぼ共通だが、単語は全然違う。英語とドイツ語くらい違う気がする。


将来、リヒトシュタインに行くこともあるかもしれない。ちゃんと勉強しておこう。誰か、ネイティブな人がいれば良いんだけどな。


     ◇


午後は、研究室配属だ。古代魔道具学を選択したのは、俺を含めて二名。先輩を含めて五名とかなり小規模だ。


「ここの研究室にある魔道具は持ち出し禁止だ。この部屋にあるものは自由に使ってもらって構わない。あちらの部屋にある魔道具を研究したい場合は許可制だな。そして、この金庫にある魔道具は使用も閲覧も禁止だ。あとのことは、ここにいるクルアン君に聞いてくれたまえ」


「やぁ、僕がクルアンだ。二年生、キミたちの一年先輩だ。他にもあと二名いるんだが、今日は出てきてないみたいだ」


幽霊部員みたいなものか?


「三年生になるとフィールドワークが認められるからね。からくりダンはそれ自体が古代魔道具みたいなものだから、そっちに行ってると思う」


三年生になるとダンジョンに潜るのが研究活動になるのか。それは良いな。


「研究内容としては、機能不明の魔道具の機能を探るとか、動作原理を調べるとか、魔道具の修理とか。まぁ、修理は成功することはまずないけどね。あとは、魔道具の変遷みたいなことでも良いんだ。わからないことがあったら訊いてくれ。そこにある魔道具は好きにして良いから」


俺ともう一人の新入生、ウパゴーン君は棚にある魔道具を見に行く。


「リュカ君はどんな研究をするつもり?」


「まだわからないな。この板みたいなのでも良いし」


スマホっぽいのを手に取る。お、稼働状態だ。画面が光り、円形バーコードが表示される。特に日付や時刻の表示はないように見える。


「僕は、本当はダンジョンに興味があるんだ。だから、三年になってからのフィールドワークが本命。来年のダンジョン実習に合格しないといけないけどね」


その場合、入ダン許可ってどうなるんだろう?


「もちろん、入ダン許可も取らないとだから、お金も貯めないと」


ウパゴーン君は男爵家だったはずだ。

あまり裕福な男爵家じゃないんだろう。


     ◇


「デスクは、上に何も置いてなければ好きな場所を使ってくれてかまわない。あと、そっちの小部屋も同様だ」


小さな部屋がいくつかある。内部は散らかっていて、古そうな資料などが置いてある。使うって言われても、人が入るスペースすらないぞ。


「この部屋を使って良いですかね」


俺は小部屋の中でも一番大きな部屋を指さす。内部はガラクタの山だ。


「別にいいけど、中のものを捨てたりはできないよ」


これは相談だな。古代魔道具学のペララタン先生は基本、自分の部屋に閉じこもっているようだ。学生にもそれほど興味を持たない。


「先生、小部屋の一つですが、中のものを魔法の収納に入れて整理しても良いですか?」


「あぁ、捨てたりしなければかまわない。あと、部屋のものを別の部屋に移すのも禁止だ。他が散らかるだけだからな」


古代魔道具学の部屋はセキュリティがしっかりとしている。鍵は先生しか持っていないし、先生が外に出るときは全員外に出される。貴重な魔道具があるからだそうだ。


ここなら大きい魔法の収納を置いておいても大丈夫だろう。

でも、念のため中に頑丈なロッカーでも入れておくか。


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― 新着の感想 ―
どう考えても、これまでの主人公への関わりの性別偏りと、態度からしてこいつ女だろうな……(厄介事の臭いしかしないww)
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