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第82話 寮生活

休み時間はアレクシアとダイアナの周りに人だかりができていた。ルートヴィヒの周囲は数人。人気がないな、第三王子。


俺は俺でミツアと話してたから、ミツアに突き放されてからはボッチだ。


     ◇


さて、自己紹介が終わって次は授業に関してだ。庶民の学校や士官学校と異なり、授業は選択制・単位制だ。必修科目もあるし、武術も選ばなくてはならない。また、研究室に配属され、卒業時には研究発表もある。ちょっと大学っぽいな。


初日の今日は、王立学院で選択できる授業や研究室について紹介があった。俺が興味あるのは薬学や古代魔道具学だな。歴史や宗教、政治はどうでも良いが、必修科目として履修しなければならない。


武術については剣術、槍術、体術、槌術、斧術、弓術など様々だ。特に斧術などは、手斧の投擲なども含まれているので役に立ちそうだ。


「リュカは武術、何を取るつもり?」


ジェニファーが聞いてきた。


「槍術と体術かな。ジェニファーは?」

「あたしは弓術と槍術かな」


この二つは女子に人気だ。虫系の魔物など、嫌悪感に響く魔物に近づかずに倒すことができるのが良いらしい。

そもそも武術の授業は一種類につき週に一回。二種類取る必要があるが、それでも週に二回だ。高校のときの体育であった柔道とかと同じくらいのペースだ。それほど本格的なことはやるまい。


     ◇


さて、研究室の紹介も終わった。次は研究室選びだ。俺は在学中に梅毒治療薬を作成しなければならない。

卒業まで三年。梅毒が末期に入るまでギリギリだ。そうなると、薬学研究室か本草学研究室あたり、もしくは治療学がベストとなる。

しかし、薬学研究室は担当教員がガッチリテーマと方針を決め、逸脱できないタイプだ。一方、本草学はどうやらフィールドワークがメインなようだ。ペニシリン作成を目指す場合、アオカビの培養など、どうしてもラボスペースが必要になる。


では、治療学はどうか。実は、こちらは教会の宣教師が出向してきている。

きわめて宗教色が強そうな研究室である。これはパスだな。


俺は結局、古代魔道具学を選ぶことにした。古代魔道具学は一時期大人気だったらしく、部屋が広い。だが、近年は新しい発見などなく、かなりの不人気だ。そして、担当教員もやる気がない。


好き放題やらせてもらえそうである。


     ◇


午前中はこれで終わりだ。


このあと、寮に入る学生は自分の寮に行くことになる。学院の寮は二種類。値段が高い方と安い方だ。値段が高い方はもちろん、上位貴族様御用達だ。

その中でも、王族や公爵が使うものは部屋が複数あり、付き人用の部屋まであるとか。なんと、風呂も装備だ。


一方、安い方は遠方から来た平民や騎士爵、男爵が使う。子爵は経済力次第っぽい。俺は当然、安い方だ。まぁ、侯爵の一部も安い方らしいので文句はない。


ちなみに、部屋は相部屋だ。とりあえず、寮長に挨拶し、割り当てられた部屋に入る。中は清潔で部屋は結構広い。貴族の中には荷物が多い人もいるんだろう。しばらく部屋を見て回っていると、ドアが開いて誰かが入ってきた。色白のヒョロガリで、しかもチビ。こんなの、いたっけ?


「わたし……僕もこの部屋なんです。あ、リュカさんですね。アタシ……俺、ステファ、じゃなくて、スティーブです」


そういえば、なんか変に声が高いのがいたな。確か、侯爵だ。


「あぁ、スティーブ。俺はリュカ。どうやら同室みたいだな。これから三年間、よろしく」

「えぇ、よろしくお願いします」


握手する。プニっとした、柔らかい手だ。

剣なんて握ったことなさそう。


「スティーブが好きな方のベッドを選んで良いぞ。俺はどっちでもかまわない」


スティーブは入って左側のベッドを選んだ。


     ◇


「スティーブは武術、何を選んだんだ?」

「剣術と槍術ね」


それはまた、マッチョな選択だ。その体格で槍が扱えるのか?


「そんな貧弱な体で、とか思ったでしょ」


考えていたことがバレた。


「いや、俺も槍術を選択したからな。一緒に頑張ろう」


まぁ、高校の体育レベルなら大丈夫だろう。部屋で荷ほどきタイムだが、俺はそれほどやることはない。魔法の収納は、空であれば、別の魔法の収納に入れることができる。


背嚢型の魔法の収納から製薬用の道具や薬瓶などを出して空にし、そのままブレスレット型の魔法の収納に入れる。


「それは、製薬の道具?」

「あぁ、ポーション作成用だ。王都でも材料が手に入ったら作ろうと思って。王都、生活費高いからな」

「そうなんだよね。僕、田舎の出身だから」

「どこって言ってたっけ?」


四十人分の自己紹介なんて、覚えてられない。


「チャンブリーってとこ。王都の真西かな」


チャンブリー侯爵領、聞いたことあるな。


「スティーブはチャンブリー侯爵家の嫡男なのかな?」


スティーブはちょっとドキッとした顔を見せた。


「一応ね、嫡男指名は受けてる。でも、リュカ君は貴族とか平民とか、気にしないで欲しいな。ただのルームメイトってことで」


スティーブの方が上位貴族だ。だが、身分の差は気にしなくて良いと言ってくれている。ありがたい。


「あぁ、ありがとう」


学院内では身分によらず平等、ということになっている。実際、王家の学生に対して何かしら言ったとしても、不敬ということにはならないし、身分を超えて友情を育むべし、ということにはなっている。


さて、現実はどうかな?


     ◇


スティーブも荷ほどきが終わったようだ。彼も荷物、少ないな。


「スティーブ、食堂に行ってみないか?」

「いいね。お腹が空いてきちゃったとこだったんだ」


食堂にはまだ人が少なかった。ちょっと晩飯には早い時間かな。混んでるよりは良いか。コース料理とビュッフェが選べる。

さて、コース料理は――


「本日のコース料理:三千五百ギル」。


スティーブと顔を見合わせ、ビュッフェに向かう。

ビュッフェで肉料理を一品、副菜を一品と、マッシュポテトのようなものを取り、会計へ。


百二十ギル。


それでも高いな。スティーブは肉料理とケーキを取っていた。


「なんか、高いね」

「なんか、こっちは肉料理が高かったっぽい」

「こっちは、このケーキが高いのかな。でも、味には満足」


炭水化物が多くないか?


     ◇


食べていると人が増えてくる。第三王子はコース料理か。コース料理の場合、別室になるようだ。アレクシアもコースだな。

まぁ、上位貴族にとってはたいした額じゃないんだろう。


お、スタンダー君が来た。手招きすると、こっちに来る。


「やぁ、リュカ。そちらは?」

「同室のスティーブだ」

「あぁ、チャンブリーから来た」

「スティーブです。よろしく」


よく覚えてたな。さて、スタンダー君が持っているのは丼物だ。

そんなの、あったっけ?


「最初にライスを頼んで、おかずを上に載せるようお願いするだけさ。先輩がやっているのを見たんだ。これで七十ギルだぜ」


おぉ、それは良い情報を聞いた。是非やってみよう。


「スタンダーの同室の人は?」

「侯爵様さ。コースを食べるらしいよ。王子に面識を持ってもらうんだってさ」


そういうのもあるのか。


     ◇


寮にはリビングのような場所もある。そこで、同級生たち何人かと少し話す。家から通ってる人もいるし、高級な寮に入る学生もいるから、それほどの人数ではない。


しかも、男女別だし。


グーリエもこちらの寮だが、顔を見ないな。

部屋に引きこもってるんだろうか?


「グーリエは食後、訓練場に行くって言ってたぜ」


ちなみに、風呂はない。共同シャワーがあり、週に二回入れる。学年によって使える日が決まっているとのこと。今日はシャワー日じゃないが、グーリエは汗をかいて大丈夫なんだろうか?


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