第79話 弓の新調
森ダンにソロで潜ってみて、いろいろな問題点が浮かび上がった。
その中で解決に近そうなのは、弓に関してだ。
弾丸魔法も試してみたが、森ダンの土は魔力がこもっているため、扱いにくい。
からくりダンに至っては、全く操作できなかった。
一応、口径の小型化は頑張っている。
目指せ二十ミリ。
◇
さて、今、俺が使っているのはショートボウクラスの短いもので、単一素材からなるものだ。しなりが良い木で作られている。
前世では、グラスファイバー製で滑車を使った洋弓もあったが、この世界でもあるのかな?
ちょっと調べてみよう。
朝から武器屋に来ている。
さすが王都の武器屋、様々な武器が揃っている。
お、槍なんかもいいな。
冒険者で槍を使う者は多い。剣よりも多いんじゃないだろうか。
剣よりも間合いが広く、振り回せば威力も大きい。
その代わり、取り回しには技術と力が必要だし、小さくて素早い相手には不利になる。
ギルベルトは剣、フリーデガルトは拳が得意だったので、槍については何も習っていない。
この点は改善が必要だな。
「弓ってどこにありますか?」
「うちでは弓は扱ってない。この先を五分ほど行ったら一軒あるぞ」
王都では弓は専門店なのか。
ヴァルクレインでは同じ店で売ってたし、なんなら防具も同じ店だった。
さすが王都。
◇
言われた店に行ってみると、様々な弓が並ぶ弓屋さんがあった。
「いらっしゃい。何をお探しで?」
「こいつじゃ威力が物足りなくなってきて」
使っているショートボウを出す。
「ふむ。短めのロングボウにするかね? それともクロスボウ?」
クロスボウがあるのか。ちょっと見てみたいな。
「クロスボウっていくらくらいですか?」
「三万ギルからだね」
安いものでも三万か。
とりあえず見せてもらう。
「こちらなんて、軽くて取り回しも良いよ。こちらのクランクを回すと非力でもセットできるんだ。六万ギルだがね」
「これは梃子の原理でセットする。四万五千ギルだ」
どちらも試してみる。
使っているショートボウより威力があるが、矢のセットに時間がかかるから連射はできない。戦闘前にくるくるクランクを回している暇はないし、セットしたまま長時間置くと弦が駄目になるらしい。
「手でセットできるようなヤツだと、威力はショートボウと変わらないよ。ロングボウを使ってみるかね。扱いは難しいが、威力は高いしクロスボウよりも安い。こいつは四千ギルだ」
俺の背丈ほどの弓を渡された。
試し撃ちさせてもらうが、的とは全然違う方向に飛んでいく。
特に上下を合わせるのが難しい。
威力はクロスボウほどあるかな。
「あとは、コンポジットボウってのもある。値段が値段なんで在庫はないが、小型で取り回しが良く、高威力だ」
なに、その良いとこずくめの弓。
完璧じゃないか。
「安いものでも二十万ギルくらいだな」
買えるけど、さすがに高すぎる。
値段的にはロングボウが現実的かな。
いくつか試し、五千五百ギルのロングボウを購入した。
◇
ロングボウは当てるのが難しい。練習なしで実戦は無謀すぎる。
そこで、ギルドの訓練場を借りることにした。
ギルド訓練場のメインは闘技場で、冒険者が剣や槍の練習をしている。
その隅に弓や投擲武器の練習場があり、的が置いてある。
よし、一射目。
バシッ!
ショートボウより鋭い音がする。
だが、外れ。
弓屋で少し練習したのだが、的にギリギリ刺さるくらい。
中心からは全然外れている。
もう一発。
的にすら当たらなかった。
おかしいな?
せっせと練習する。
◇
「下手くそだな~」
練習していると、後ろから笑い声が聞こえる。
「下手だから練習してるんだが」
軽く返事をして練習を続ける。
若い冒険者の連中だ。とはいっても、俺の方が若い。
この訓練場、矢は破損させなければ無料で使える。
自腹で森で練習するよりずっといい。
すると、後ろからかなりの威力で矢が的に飛んでいく。
的のど真ん中に命中。
後ろを振り返ると、中年のおっさんが弓を掲げて立っていた。
おじさんはもう一射。
また命中する。
持っているのは大きめのロングボウだ。
「どうやら、自己流のようだな。だが、筋は悪くない。どうだ、ギルドで指導を受けてみる気はないか? 一時間で五百ギルだ」
ギルドに指導員制度なんてあったんだ。
自己流なのは確かだ。
誰にも習ったことはないからな。
一度、習ってみるのも悪くないかもしれない。
「では、お願いします」
◇
「まずはショートボウでやってみろ」
ショートボウを取り出し、射る。これはほぼ百発百中だ。
「ふむ。ちょっと持ち方を変えてみようか」
持ち方や姿勢を直される。
確かに精度と威力が少し上がった気がする。
その後、動きながら撃つ、立ったまま撃つ、座って撃つなど、いろいろと教わる。
「撃ち下ろしは特に難しい。毎回角度が変わるからな。これは感覚で覚えるしかない」
その回の講習はショートボウだけで終わってしまった。
「あまりやりすぎると指の皮を痛めるからな。今日はこれくらいにしよう」
いや、とっくに指先を痛めてこっそり癒しの手で治してるんですが。
◇
もう夕方だ。
入学式の前にやっておくべきことってあったかな?
そういえば、服の手配がまだだな。
一応貴族なんだし、この冒険者っぽい格好でずっと授業を受けるというのも不適切だろう。
「今、大変混み合っておりまして。今日ご注文をいただきましても、納品は四か月後になります」
いや、上級貴族が着るような上等なヤツじゃないぞ?
子爵クラスだ。
工房の方を覗いてみると、五人ほどの針子がひたすら作業をしている。
全部女性ものだ。
「エーデルヴァルト王立学院生徒様からの注文がさばき切れていないのです」
確かに、着た切り雀というわけにもいかないし、女性は何着も必要だろう。
男性でも三着は欲しいか?
考えが浅かったか。
◇
新調は諦めて古着屋へ行く。
卒業生が売ってるはずだ。在庫は豊富だろう。
残念ながら、ほぼ空っぽだった。
「新規入学生の方は、卒業式の当日か翌日くらいにはお買い求めになります。季節が変わる頃になるとまた入荷しますが」
それって、季節外れの服しか買えないのでは?
この地域の古着屋は、王立学院の子がよく利用する。
もっと市中に行けば在庫がある店があるので、系列店から取り寄せることも可能だとか。
子爵が着るような服の取り寄せをお願いする。
「四日間ほどいただきます」
当然、翌日配送なんてことはない。
この世界にも黒い猫の配達業が欲しいところだ。




