第77話 個人護衛依頼完了
ようやくヴァルクレイン領にたどり着いた。
「では、こちらの依頼書に確認のサインをお願いします」
かなりの贅沢旅行だった。
ビーデルさん、買い物とかもしてたし、手切れ金残ってるのかな?
「このあと、父に会わないといけませんので、失礼します」
手切れ金の残額について、既にデヴィーゼルさんとビーデルさんの間で口論が始まっている。
逃げるが勝ちだ。
◇
ギルドに寄って完了報告を済ませ、お金を受け取る。
ようやく金欠状態からの脱出である。
「これで個人護衛依頼、二件目ですね」
小柄な受付嬢が笑顔で伝えてくる。
護衛依頼経験はCランクに上がるために必須の条件だ。
ビーデル嬢の案件はかなり美味しかった。
その後、家に戻り、ギルベルトとフリーデガルトに挨拶する。
すると、何故かルドルフがいた。
「エーデルヴァルト王立学院に通っているそうだな。卒業時には天啓の儀を受けることになるだろう。ローゼンフェルトに連なる者、祈祷職などもってのほかだぞ。そのようなことがあれば、貴族名簿からお前の名を抜くよう、ギルベルトに進言せねばなるまい」
いや、連なってないんだけど。
フリーデガルト系列じゃないんすよ、俺。
知ってて言ってるんだろうけど。
とにかく、俺をヴァルクレイン家から追い出したいらしい。
なんか、グチグチ言ってくる。
俺は貴族特別徴兵に行ったからな。
理由なしで貴族籍を抜くことは難しいんだろう。
「もちろんです、お爺様。卒業時には戦闘職に就きましょう。なんなら、証文でも用意しましょうか?」
これから先もいろいろ言われるのは面倒だ。
アルフォンスに言って証文を用意してもらう。
・王立学院卒業時に祈祷職に就いていたら貴族籍を外す
・王立学院卒業時に戦闘職に就いていなかったら貴族籍を外す
二通作成し、お互いが署名する。
貴族籍はいらないっちゃいらないが、便利ではあるしな。
◇
レオンにも挨拶しておくか。
確か、執務室にいるって言ってたな。
執務室に行くと、カタリーナさんが執務を行っていた。
「あら、リュカ君。久しぶりね。王都はどう?」
「カタリーナさん、お久しぶりです。元気そうでよかった。ところで、レオンはここで執務を取り行っていると聞いたんですけど?」
「彼は裏庭で剣を振ってると思うわ」
それでいいのか、嫡男。
レオンは本当に裏庭で剣を振っていた。
「いや、体を動かさないと執務なんて無理だろ」
剣を振りながら、何ができるっていうんですか?
「そうそう、スラッシュが撃てるようになったんだ」
レオンの前でスラッシュを撃つ。
「ちゃんとできてるな。なら、次は“大切断”だな。なに、ドカンと思いっきり真っ直ぐ撃ち下ろすだけだ」
レオンの説明は相変わらずである。
その後、何回も練習させられた。
あれ?
なんで“大切断”を習う流れになったんだっけ?
◇
さて、ぐずぐずしていると始業式に間に合わない。
家に一泊し、馬を借りて、王都を目指す。
四日間で王都に着いた。
まずはギルドに行く。
ヴァルクレインのギルドにはちゃんと報告してあるが、王都のギルドでも報告しておけば、すぐにナーンヴァ様まで報告がいく。
この小さい手間をやるかやらないかで評価が変わったりする。
「商業ギルドから連絡が来てますよ」
商業ギルド?
こちらではあまり関わっていなかったと思うんだが。
上級ポーションでも必要になったのかな?
王都でポーションを作成しようと思ったら、材料を手に入れる必要がある。
もちろん、購入しても良いのだが、狭くて深い森ダンジョンでも材料が入手可能らしい。一度、入ってみるか。
「狭くて深い森ダンジョンに入ってみたいので、またバンディッツに案内をお願いしたいんですけど」
「承知しました。連絡しておきます」
◇
商業ギルドの方にも行ってみる。
「ユリウス様より肉の取引で八十万ギル振り込まれております」
うぉ、忘れてた。
利益は一人頭五十万ギル強って言ってた気がするが、それが八十万ギルとは。
オットーさんが安く仕入れたのか、ユリウスが高く売ったのか。
俺は運んだだけで五十パーセントももらって良いのだろうか?
ついでにポーションの相場も聞いておこう。
「ポーションは値幅の動きが大きい商品です。初級ポーションで一瓶五百から千ギル、中級ポーションで千五百から三千ギル、上級ポーションで八千から二万ギルくらいですな」
本当に値幅が大きい。
「需要はどんなもんなんでしょう?」
「初級ポーションの供給には問題ありません。一方、上級ポーションは常に不足気味。中級ポーションは時期による、という感じでしょうか」
狭くて深い森ダンジョンでどれだけ材料が採れるかだな。
「需要ですと、初級の解毒ポーションが人気ですな。からくりのダンジョンに入る際には必須と言われております」
そういえば、毒の矢が飛び出る罠とかあったな。
初級解毒ポーションは一瓶二千ギル以上。
場合によっては中級ポーションよりも高い。
作れないけど。
「わかった、ありがとう」
◇
冒険者ギルドに戻ると、バンディッツから返信が来ていた。
明日さっそくどうだ、とのことだ。
ギルドの酒場で飲んでるから、返事はそっちで、とのこと。
酒場の方に回ってみると、バンディッツのメンバーが酒盛りをしていた。
「よー、リュカ。元気にやってるか?」
「まぁまぁですね。テンラクさんはお元気そうで」
「大きめの依頼をこなしたんでな。大きめの依頼といえば、リュカも個人護衛依頼を受けたそうじゃねぇか。大きく儲けたときは大きく呑むってのが冒険者のやり方だぞ」
「あとは女を買うとかな」
「俺、酒飲めないんで」
「つまんねーやつだな。まぁ、いい。森ダンの案内だったな。明日でどうだ?」
こんなに酔ってて大丈夫なんだろうか?
「では、明日の朝、ギルド前集合で良いですか? ずいぶん酔ってるようですけど?」
「こんなん、酔ってるうちに入らねーよ」
ご機嫌に飲んでいるバンディッツのメンバーと別れ、娼館に帰る。
◇
ワンダーは静かだった。
「ちょっと熱があるの。喉も痛いし」
ベネットは体調が悪いらしい。
残念ながら癒しの手では病気は治せない。
風邪なら栄養を取っておけば治るだろう。
そういえば俺、病気になった覚えがないな。
「神聖力が高い人は、そもそも病気になりにくいのよ」
イエヴァが教えてくれた。
「闘気力が高い人は、気合を入れれば治るんだって。こっちの方が意味不明ね」
魔術師とかは病気にかかるらしい。
もちろん、平民も病気になる。
俺の周りで病人を見かけなかったのは、気合で病気を吹っ飛ばしてる系の人間が多かったからだろう。
平民が病気になった場合、薬師の薬でなんとかするそうだ。
ただ、効き目はいまいちらしい。
まぁ、前世でも熱を下げるにはミミズとか、いろいろあったしな。
しかも、実際に効果はあるらしいし。
この世界にもミミズはいる。
煎じて飲ませてみようか?




