第75話 ベネットとの夜
娼館に帰り着く。
まだ夕方くらいだ。寝ている子も多い。
使わせてもらっている部屋に入り、ステータスを確認する。
名前:リュカ・フォン・ヴァルクレイン
年齢:13
職業:僧侶
レベル:1
力:24
速さ:62
体力:34
魔法力:480
神聖力:748
闘気力:25
知性:189
スキルポイント:10
・老化軽減 10%
・投擲
・毒耐性(強)
・気配察知
・隠密
・スラッシュ
取得可能スキルは“治癒”と“老化軽減0%”。
祈る系のスキルはないようだ。
さて、治癒を取るべきか、それとも老化軽減0%にするか。
人を死なせたくないっていう理由が僧侶を取った理由のメインだから、初志貫徹して“治癒”にするか。
間違って取ってしまわないよう、ステータスを消してから考える。
そもそも、スキルポイントが少ないのが納得いかない。予知系はポイントで取っても消えちゃうしな。無駄だったかな?
まぁ、すぐに取得する必要もないだろう。
とにかく体がだるいので、今日は寝てしまおう。
◇
夜中に目が覚めた。
同じベッドで何故かベネットが全裸で寝ている。
彼女がベッドに忍び込んでくるのは初めてではない。
特に何かしてくるわけでもなく、ただ甘えるように身を寄せてくるだけだ。
そういえば、転職によって巫女の呪いはどうなった?今回は巫女と同じ下級職だ。条件としては祈祷師と同じともいえる。
ステータスを出しながらベネットの裸体をじっくり見るが、特に変化はない。胸を揉んでみる。もちろん欲情しているが、これもOKだ。
祈祷師のときはどこでダメだったんだっけ?そうだ、ロッテのときと、アニータと超えそうになったときだ。
ベネットで試すわけにもいかないな。
と、ベネットが目を覚ましたのか抱き付き、キスしてくる。
ねっとりとした口づけ。
こ、これは。
そして、場所が変わり“巫女”表示は黄色、そして終わった。
「どうだった?」
ベネットは全てを飲み込むと、笑顔できいてくる。
「気持ちよかった。ありがとう」
ベネットの頭を撫でながら、眠りに落ちていく。
“巫女”の表示も緑を経由して青に戻っていった。
◇
今日から再び事務仕事だ。
会計課で仕事をしながら、昨晩のことを思い出す。
以前、祈祷師だったときは、同じような状況で“巫女”は赤表示になっていた。しかも、最期までは無理そうだった。
つまり、僧侶に転職したことで、性への耐性が上がっていることになる。
ならば、問題はどこまで耐性が上がったかだ。
だが、それを実際に試そうとすると、途中で中止しなければならなくなる可能性がある。
ヘタレである。
知り合いでその状況に陥るのは避けたい。
どうしよう?
そんなアホなことを考えていると仕事が終わった。
会計課は何も考えずに仕事できるから良いな。
庶務課とかだとミスばっかりになってしまう。
なんで、あんなにいろんな種類の申請書があるんだろう。
◇
俺は現在、ほとんどお金を使っていない。
寝泊まりは娼館だし、朝晩の食事も出てくる。
ヒモ状態である。
そして、出勤中は食堂で昼飯が出る。
そんなわけで生きていけているが、金を使う状況もたまにはある。
ジェニファーと行ったカフェや、たまに娼館に買って帰るケーキなどだ。
ちょっとギルドに顔を出して、金目の仕事がないか見てみよう。
仕事終わりにギルドに寄る。
ギルドは夜中までやっているからな。
「リュカ様、個人護衛依頼が指名で来ています」
え?
そんなの、来る覚えがないんだけど?
Dランクだと、個人護衛依頼はよっぽどの信用がないともらえない。
「ナーンヴァ・ドゥ・スクリーバ様からの依頼です」
聞いたことがないな。
貴族っぽい名前だが、王都に貴族の知り合いはいないし。
「ビーデル様の個人護衛を請け負った際の送り先ですよ」
“誰それ”が顔に出ていたのだろう。
ギルド嬢が助け舟を出してくれた。
なんとなく要件はわかったが、一応本人に聞いてみよう。
「では、可能なら明日のこれくらいの時間にお会いしたいとお伝えください」
◇
今日、娼館は静かだ。
北部大手貴族の息子が遊びに来ているらしく、ベネットとチェリーはそちらに呼び出されているようだ。
二泊三日とは豪勢なもんだ。
翌朝、中央軍事務局に行って、個人護衛依頼を受けるかもしれないことを伝える。
ヴァルクレイン領まで馬車で行って一週間、帰りは馬を借りて四日くらいか。
実家に顔を出すことも考えると、二週間は休みが欲しい。
「今週は全部出るということですね。そうなると、十五日間勤務したことになります。学院の方は大丈夫ですか?」
大丈夫じゃないな。
たぶん、始業式までに終わらない。
「なら、期間を延長して休日出勤で残りの日数を終わらせたらよいですよ。通常ですと審査が下りるかどうか微妙ですが、自分で決裁をもらいに行けばまず通ります。総務課にお菓子は必須ですけどね」
申請書を書き、昼休みは酒と菓子を買う。
午後は時間が空いているときに各部署を回る。
「なんだ、いいご身分だな。バイトじゃないんだぞ」
あちこちで小言を言われるが、酒と菓子の威力か、必要な決裁印は全てもらえた。
◇
夜、ギルドでナーンヴァ様と会う。
「やぁ、久しぶりだね」
「久しぶりですね」
お互い子爵家だし、ここはギルドだ。
堅苦しい挨拶は不要だろう。
「聞いているとは思うんだけど、ビーデル嬢のことなんだ。ウチに嫁ぐって押しかけられてね。困っていたんだ」
過去形か。解決したのかな?
「我が領でいたいけな少女をかどわかし、一夜を共にしたんですよね」
人の領でなにやらかしてんねん。
「いや、お互いに盛り上がってね。大人はそういうこともあるんだ」
「結婚を約束したりしていなければ、大人の遊びということもあるかもしれませんが。生娘だったのですよね」
「いや、結婚の約束はしていない。愛を囁き合ったりはあるけど、いや、そういうものじゃないか。まぁ、この話はいいんだ。解決したからね。そちらの相場よりもかなり多めだ」
そう、貴族と平民の間でこのようなことがあれば、金で解決される。
カスパルのときも四十万ギルが消えたとギルベルトが唸っていた。
「それに、彼女が持ってきた招待状だって、ハーナマル商会の商会長、デヴィーゼルさんが王都で商売を始めたいっていうから、ウチが開催する夜会へ招待しただけなんだ。人を紹介できるからね」
そういえば、招待状を持っていたな。
ビーデルさんが招待されたんじゃなくて、デヴィーゼルさんへの招待だったのか。
「お互いが納得しているならかまいません」
「とにかく、ビーデル嬢を彼女の実家に送り届けたいんだ。来るときも個人護衛を付けたという話だったからね。二十万ギルでどうだろう」
貴族のメンツというヤツか。Dランクへの依頼と考えると相場より高いな。
でも、お金持ちそうだし、もう少しふんだくれるだろう。
「私も今、軍の仕事をしてまして。そちらと調整しないといけないのですよ。三十万いただければ、動きやすいのですが」
酒とお菓子で二千ギルは使ったしな。
「いいだろう。出発はいつになりそうかな?」
「明々後日の朝、日の出とともにギルド前出発でどうでしょう?」
「わかった。それでいこう」
とっとと厄介払いしたいんだな。
ビーデルもかわいそうに。
◇
翌日は普通に仕事だ。
仕事にもだんだん慣れてきた。今日は荷物の移動。
書類が紙なため、どんどん溜まる。
溜まった書類は、倉庫へ。
倉庫がいっぱいになると、別の大きな倉庫へ。
どの倉庫にあるかで、どれくらい前の書類かわかる仕組みになっているらしい。
いや、その仕組み、移動が大変じゃね?
仕事帰り、実家に王都のお土産を買っていく。
今までの里帰りでお土産を買ったことはなかったが、ソフィアがそろそろお洒落をしたい年齢だからな。
バレッタで良いだろう。
◇
娼館に戻るとベネットが戻っていた。
「疲れたよ~。なんか、“絶倫”とかいうスキルを持ってるみたいで」
なんだ、そのふざけたスキルは。
「戦士のスキルらしいよ」
戦士はスキルが多いと聞いたが、そんなスキルどうするんだ?
「貴族様はね、お家存続のために必要なのよ。闘気系の職はレベルが上がると性交に興味を失っていくんだって」
そんなの初めて聞いた。
となると、子供が六人いるギルベルトは“絶倫持ち”か?
明後日からしばらく留守にすることを伝えておいた。
同じ作品をTALESにも投稿しています。
小説家になろうでは表現できない描写はTALESの方で書かせていただいてます。
https://tales.note.com/nekomot_mao/w4gz6seh3e04x/episodes/emzyd80skx5cx




