第71話 からくりのダンジョン
朝、起きて階下に行く。
一階はリビングルームのようになっていて、女性が数人のんびりしていた。イエヴァさんもいる。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。この子がさっき言ってた、ベネットの命を救ってくれた子だよ。ついでにアタシの顔もね。リュカはしばらくここに泊まってても良いよ。命の礼だ、受け取ってくれ」
「ありがとう」
「リュカは今日どうするんだい?」
「冒険者ギルドに行ってみるよ。お金がないし」
◇
ギルドに行く。
依頼状を見るが、どれもダンジョンに潜らないと達成できないものばかりだ。
「ダンジョンの案内人をお願いしたいんだけど」
受付に行き、ダンジョンの案内を頼む。
「どちらのダンジョンでしょう?」
「からくりのダンジョンで」
「こちらのリストが、からくりのダンジョンの案内を受けてくれるパーティーです」
目を通すが、知っている名はない。そもそも、王都に知り合いのパーティーはないしな。あ、バンディッツがリストにあった。
彼らなら問題ないな。
「バンディッツにお願いしたいです」
「承知しました。では、明日の朝、またこちらにいらしてください」
◇
「ただいまー」
娼館に戻ると、女の子たちは出勤準備に勤しんでいた。
「リュカ君、おかえり!」
ベネットが飛びついてくる。
「体調はどう?」
「もうバッチリ! どう? あたしを抱く気になった?」
「ないない。ここに泊めてもらうのがベネットを救ったお礼だって。だから、今はお互い貸し借りなしだよ」
「え~」
不満そうなベネット。
癒しの手じゃ病気は治せないから怖いんだよ、マジで。
◇
翌朝、ギルドでバンディッツと会う。
「よぉ、リュカ。元気にしてたか?」
「元気元気。テンラクさんたちは?」
「おぉ、元気だぜ。今日はからくりのダンジョンだったな。俺たちは西側のダンジョンはかなり潜ってる。任せておけ」
ダンジョン入り口で入ダン証を見せ、ダンジョンに入る。
からくりのダンジョンは、上下左右が壁で囲まれた通路と、大中小の部屋からなる迷宮型ダンジョンだ。
地下へと進んでいき、現在の最深探索階数は四十八階。
出てくる魔物は階層によって変わり、地下一階はおなじみのゴブリン。
「リュカ、ゴブリンは倒せるか?」
「たぶん、三匹くらいまでなら」
「後ろで見てるからやってみてくれ。リュカがどれくらい戦えるかを見てから、今後の方針を考える」
最初の襲撃は二匹。草原で出会うゴブリンと見た目は同じ。
向かってくる二匹の左にステップインし、左側のゴブリンの首筋を斬る。
こうすると、右側のゴブリンは左側のゴブリンが邪魔で攻撃できない。
頸動脈を切られたゴブリンを迂回してこちらに迫るゴブリンに投石し、ひるんだところに心臓を突く。
二匹から距離を取り、命の火が消えるのを待つ。
ゴブリンは煙となって消え、床に魔石が残った。
「全く問題ないな」
他のメンバーも頷く。
◇
さらにダンジョンを進んでいく。
「リュカ、ストップだ」
すると、ファントさんから声をかけられる。
「リュカ、あの部分、わかるか?」
ファントさんが指さすところを見る。
ん?
床の色が少し違うか?
クリペウスさんが槍の石突で押すと、上から矢が飛び出してくる。
「細くて短い矢だから死ぬことは少ないが、毒が塗ってある場合が多い。致死毒ではないが、かなり痛いらしいぞ」
罠か。
全くわからなかったな。
「戦闘中だと、罠に驚いた拍子に魔物の攻撃を食らうってこともある。致死毒でなくても、しびれ薬の場合もあるしな。罠の早期発見が大事だ。見つけたら作動させておけば、しばらくは再発動しない」
なるへそ。
罠は意外と多い。
ファントさんが見つけて教えてくれるが、かなり微妙な差だ。
ただ、気配察知で探ると違和感があることがわかる。
その日一日、からくりダンジョンを巡り、地下五階まで到達した。
罠の発見にも慣れたと思う。
ドロップ品は俺のものになる契約だが、一日歩き回って千四百ギル。
今回のダンジョン案内依頼が九千ギルだから大赤字だ。
◇
ギルド近くでケーキをお土産に買って娼館に帰る。なんか、娼館に帰るってすごく悪い男みたいだな。ケーキは大変喜ばれた。
翌日、今度はソロでからくりのダンジョンに潜ってみる。
一人でダンジョンに入るのは初めてだ。かなり緊張する。
危ない目に遭ったらすぐに逃げ出せば良い。
自分を励ましながら、ダンジョンに入る。
今回は弓を装備だ。
このダンジョンでは一度に出る魔物の数は最大でも五匹だが、上層階は二~三匹が多い。もし四匹出ても、一匹を弓で倒せれば楽になる。
気配察知に魔物が引っかかる。三匹だ。
弓を引き絞り、魔物の出現に備える。
出た!
すぐさま弓を射る。
命中。
残りのゴブリンが駆け寄ってくる。
まだ余裕があるな。次の矢をつがえる。
距離は十メートルくらい。
次の矢を射る。
この距離は外さない。
剣に持ち替え、最後の一匹を仕留める。
ふむ、距離があれば弓で二匹はいけるな。
ゴブリンの遺体が消え、魔石と矢が残る。
矢に損傷はない。
ダンジョンで遺体が消えるシステムがありがたい。
矢の回収が楽になる。
何回か使ったら鏃は研がないといけないかもしれないが、継戦能力は上がる。
◇
矢と剣を使いながら進む。
現在、地下六階。今のところ、特に問題はない。
そんなことを考えていると、前方から魔物の気配。
今回は五匹だ。三匹のマッドドッグと二匹のコボルト。
マッドドッグが速い。
弓で一匹を仕留める。二匹目、いけるか?
マッドドッグが近い。
二射目は後ろのコボルトに向けて放ち、残った魔物に風の魔法をぶつける。
魔物が少し風で押される。その隙に剣を構える。
飛びかかってくるマッドドッグを躱し、コボルトに投石。
剣でマッドドッグの腹を切り裂く。
切り返してこちらに向かってくるマッドドッグの目の前に炎を出し、コボルトに向けて踏み出す。驚いているコボルトの首を切り裂き、振り返ると、マッドドッグがこちらの足に噛みつこうとしているところだった。
俺の足に噛みついているマッドドッグの喉を斬る。
革のブーツはそこそこ厚手なのだが、牙が貫通している。
傷を癒し、ドロップした魔石を回収した。
今日はここまでにしよう。
かなり疲れた。
◇
帰り道、地下三階で罠にかかった。
集中力が切れていたんだろう。小さな矢が足に刺さる。
矢を抜き、治療。
ソロは戦闘、警戒、罠探知を全て一人でやらないといけない分、疲労が半端ない。
やっぱりソロは難しいのかな。地上に戻り、ドロップ品を売却する。
合計二千四百ギル。
あまり良くはないな。
今日はお土産は買って帰らない。
連続してお土産を持って帰ると、次も期待されてしまうからね。
何か良いことがあったときに買う事にしようかな。




