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第67話 しばしの帰省

「リュカ、大活躍だったな」

クリペウスはあまり活躍してないね。


「最初は使えないヤツが来たとか思ってたんだけどな」

ファント、正直すぎるぞ。


「俺たちはしばらくスールドで依頼を受けるつもりだ。また会うこともあるかもな」

「はい、皆さまもお元気で」

俺は士官学校に戻る。今日の午後がテストだ。

いや、ギリギリだった。


     ◇


「リュカ君、試験当日の朝まで遊んでるなんて余裕ね」

「あ、チェシャ。遊んでたんじゃないからね。結構大変だったんだから」

「ホントかしら?」

テストはなんとかクリアした。


そんなに難しいテストでもなかったしな。

さらに三日後、王都に行っていた間のテストの再テストを受けた。

テスト漬けだな。


さらに二回ほどテストを受け、テスト後休みに入る。

一度、ヴァルクレインに顔を出しておくか。

前回はとんぼ返りだったからな。帰省して少しのんびりしよう。


今回はお金がないので馬車移動だ。

テスト休みは二週間。時間はある。


     ◇


あいにく父は留守だった。

「お母さま、士官学校が休みに入ったので戻ってきました」

「ふむ、変わりないようだな。闘気力も少し伸びている。闘気力は感じられるか?」

「いえ、あまり」

「生来闘気力が低い者は、闘気力の感受性が低い。闘気力が伸びてくれば、いずれ感じられるようになるだろう」


クララさんのところにも寄ってみる。

「久しぶりだな。毒の摂取はどうだ?」

「前に送ってもらったのは終わったよ」

「そうか、なら最後の二種類だ」

猛毒を渡される。

「闘気力ポーションも、そろそろ完成が近いと思うんだが、ここからが問題でな。通常のポーションは神聖力を込めるが、闘気力ポーションは闘気力を込めないといけないんだ。リュカ、できるか?」


できるはずがない。

闘気力を感じることすらできないからな。


「ふむ、誰か闘気力の扱いに長けた知り合いはいないか?」

「父も母も得意ですが」

「領主様ご夫妻に頼めるわけないだろう。お前の兄、次期領主様も駄目だぞ」


マリベルはもう嫁として出て行ってしまったしな。

リーゼはまだヴァルクレインにいるかな?


「ちょっと知り合いに頼んでみるよ」


     ◇


冒険者ギルドに行き、リーゼに伝言を残す。

「ところでリュカ様、個人護衛依頼を受ける気はありませんか?」

個人護衛依頼なんて、そう簡単に舞い込んでくるものではない。

それこそ、知り合いでもなければC級以上、通常はB級に頼む。


どういうことだ?

「依頼主は十二~十三歳の少年を望んでいます。王都で主催されるパーティーに招待されているけど、依頼主本人は同行できないとのことです。王都までの護衛ですね。あと、王都まで行ったことがあることが条件です」


意外と条件が厳しいな。

「僕、それほど戦闘力は高くないですよ」

「こんな条件で、戦闘力が高い護衛なんていませんよ。十二~十三歳なんて職を得てすぐですし。しかも、あまり高い依頼料は払えないってことで、我々も困っていたところです」

「往復ですか?」

「片道です。ただ、王都滞在中は護衛の必要なし。その代わり、王都滞在中の費用は払えないそうです。依頼は王都到着までとなります」

なんか、ケチくさいな。


これは商人か?

「商人ですかね?」

「小規模商人ですね。ヴァルクレインから出たことがないようです。娘がたまたまヴァルクレインを訪れていた貴族の目に留まった、ということのようです」

「依頼料はどれくらいなんでしょう?」

「四万ギルですね」

「相場は?」

「最低でも二十万ギルかと。ただし、これはCランクのギルド員が受けた場合です。Dランクでも十万以上にはなるかと思います」


四万でも悪くはないが、金欠の身だ。少し価格交渉したい。

「十万で打診してみてください」

「かしこまりました」


     ◇


「リュカ兄、お話聞かせて!」

うん、ソフィアは可愛い。可愛いは正義。

今は九歳か。素直な子に育っている。

神聖力も感じられるし、将来は聖女呼ばわりされるだろう。


「どんなお話が良いの?」

「戦場のお話!」

九歳の女の子って、戦場の話で喜ぶんだっけ?


そもそも、ずっと治療ばかりだったからな。

それほど話すネタはない。

ジャイアントフォレストエイプとの戦いの話でもするか。


「……で、ジャイアントフォレストエイプの鼻先に唐辛子の袋をぶつけてやったんだ。そしたら、ぎゃんぎゃん泣き出してさ。でも、大事な軍事物資を運搬中だったから、ジャイアントフォレストエイプを放っておいて拠点に急いだんだ」


多少の脚色はかまわないだろう。


     ◇


翌日も冒険者ギルドに行ってみる。

「先方は六万を打診してきました。いかがでしょうか?」

いや、刻むね。

「じゃあ、パスで。商会の名前はわかるかな?」

「ハーナマル商会です」


「あと、リーゼとは連絡取れたかな?」

「はい。明日の昼頃、ギルドで会えないかとのことです」

「わかった。明日、また来るよ」

せっかくなので、ヴァイス商会にも顔を出しておく。


「ハーナマル商会ですか? 確か、小規模な商会ですな。特に強みがあるわけでなく、様々なものを扱っているはずです。ハーナマル商会がどうかされましたか?」

護衛依頼の件について話す。

「あぁ、娘さんの話は噂になっておりますな。というより、ハーナマル商会が噂を流しているようです。相手は法服貴族だったはずです。ハーナマル商会は最近、資金繰りが厳しいという話もありますからな。この件で少しでも商会の信用を上げたいんでしょう」


まぁ、大きな商会は貴族の娘を嫁にもらったり、自分の娘が美女であれば貴族に嫁入りさせたりするからな。

今回の件で大手に食い込みたいんだろう。

ヴァイス商会もユリウスを迎え入れているわけだし。

「そういえば、ユリウス兄は?」

「奥にいますよ。呼んできましょうか?」

「うん、お願い」


オスカーさんが奥に引っ込み、ユリウスが出てきた。

ユリウスに近況を共有しておく。


「そういえばさ、ここで安く買えて王都で高く売れそうなものって何かな?」

「やっぱり肉かな。ヴァルクレインは魔物の領域が近いから、肉には不自由しないからね。でも、少量だと商売にならないよ」

「多量に運ぶ算段はあるんだ」

「魔法の収納かい? どれくらいの容量なんだ?」

俺の腕輪型の魔道具を見て質問してくる。


これじゃないんだよね。

ユリウス兄ならいいか。

「いや、今背負っているカバン、魔法の収納なんだ。戦闘糧食百二十と武器、鎧、盾が入ったから、そこそこ容量はあると思う」


兄の目が光った気がした。

「ちょっとオスカーさんに相談してみる」


     ◇


奥からオスカーさんが再び現れた。

「ほう、それが魔法の収納ですか。見事に偽装していますな」

オスカーさん曰く、魔法の収納に見えないように外側に魔物の皮が貼ってあるらしい。


「どこで手に入れたかは訊きますまい。で、どれほど入るんですかな」

「いや、知らないんです」

「ちょっとウチの倉庫で小麦を詰めてみましょう」

裏の倉庫に回り、小麦の袋を詰めていく。

「ふむ、小麦で千八百キログラムですか。肉でも千二百は入るでしょう」

魔法の収納は入れるもので容量が変わるらしい。

武器や鎧など、金属製品はあまり入らないが、小麦みたいなものはそこそこ入るとか。


「僕、王都の卸先なんて知りませんよ。もちろん、ヴァルクレインでの仕入れ先も知りませんし」

「そのあたりはお任せください。ふむ、そうですな。量も多いですし、共同事業という形にしませんか? リュカ様が運搬、我々が仕入れと卸。利益は等分で」

そんな良い条件でいいのかな?

「いいんですか?」

「条件としては我々に有利すぎですな。なにしろ、よほどの大商会でもなければ、そのような中容量の魔法の収納は手に入りませんから。ただ、安く買って高く売る、そのコツはリュカ様には不足してますので、等分ということで」


これでも中容量なんだ。

「もちろん、かまいませんよ」

「わかりました。ユリウス君、リュカ君と商業ギルドに行って契約をまとめてきてくれ」

「わかりました」


     ◇


ユリウスと商業ギルドへ。

「で、どれくらい儲かりそう?」

「肉の種類にもよるけど、オーク肉千二百キログラムのここでの仕入れ値は九十万ギルくらい。オットーさんならもっと安く仕入れられるかも。グレートボアならもっと高いし、ジャイアント種ならさらに高い。今頃、オットーさんは肉の買い付けであちこち走り回ってると思う」

まぁ、一・二トンの肉だ。


「王都だと、これが倍以上の値段で売れる。利益は百万ギルは出てもおかしくないけど、向こうで売るのが僕だからね。どうなることやら」

ユリウスが売るんだ。

できるだけ高く売ってくれ。

「半分に分けても五十万か。頼んだよ、ユリウス兄」


商業ギルドでの書類仕事は、全てユリウス兄に任せた。



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