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第66話 護衛依頼再び

入試二日目は面接だ。個別面接なので、各人で時間が異なる。

俺は午前の遅い時間だ。会場に着き、周りを見回すがシャノンはいない。

まぁ、そんなものだろう。

そのうち、俺の名前が呼ばれた。


     ◇


「リュカ・フォン・ヴァルクレインです」

「ふむ。ヴァルクレイン子爵家の五男か。嫡男指名は受けていないようだが、まだ貴族名簿には残っているようだな」

「はい。兄レオンハルトが嫡男指名を受けておりますが、私は軍務に就いていたため、貴族名簿に残っています」

「軍での階級は軍曹か。その年で申し分ないな」

「ずっと衛生兵として務めさせていただいています」

「職には就いていないとのことだが」

「家の事情で天啓の儀を受ける機会がありませんでした」

面接は淡々と進んでいく。

三十分ほどの面談で終了となった。


     ◇


会場を出るとシャノンがいた。

他の平民っぽい子たちと話している。


「やぁ、シャノン。面接は終わり?」

「今終わったとこ。リュカも?」

「たった今、ね」

「この人たち、昨日、帰るときに会ったの」

「デキンだ」

「アスースだよ」

「リュカだ。二人ともよろしく」

軽く挨拶を交わす。


デキンは北方から来たらしい。

アスースは王都出身だ。

「王都は広くて何もわからないんだ。お互い合格したら、いつか王都を案内してくれないかな?」


「いいわよ。なんでも聞いて」

少し話をして別れた。


     ◇


「スールドへの配達依頼ってあります?」

「えぇ、ありますよ。そうだ、リュカ様は何回か護衛依頼を受けていらっしゃいますね。ちょうど、スールドへの護衛依頼もあります」


「王都からスールドですか?」

ここからスールドまで、魔物の危険はない。

王都に近いんだ。盗賊も少ないだろう。


「依頼人は訳ありで身分を明かすことはできませんが、人物はギルドが保証します。できるだけ大げさな護衛体制を望んでいるのですが、依頼が入ったのが昨日で時間がなく、十分な人数が集まっていないのです」


護衛依頼はDランクからだ。

中堅以上ベテラン未満。それほど該当する冒険者がいるわけではない。

しかも、やんごとなき人物の護衛となると、ギルドも変な人を紹介できないのだろう。

俺は五男とはいえ、貴族だしな。


「わかりました。受けます」

「では、明日の朝、日の出の時間にこのギルドの前で」


護衛依頼を受けることができた。


     ◇


翌朝、ギルド前で待っていると、豪華な馬車が現れた。

「リュカ君かな?」

いかにも執事っぽい男性が声をかけてくる。

「はい」

「戦えるのかね?」

「治療が専門ですが、相手が戦士程度であれば」


高レベル戦士だと負けるけど、時間稼ぎくらいはできるだろう。

「もうじき他の護衛も来るだろう。集まり次第出発だ」

護衛は三人パーティーと四人パーティーが一つずつ。

ソロは俺だけだ。


四人パーティーのリーダーっぽい男が言う。

「暫定的にリーダーを務めさせてもらう。ヘリオンの剣のリーダー、アバリスだ。よろしく頼む」

二つのパーティーが前後を護衛する。


俺は数の関係から、三人パーティーの方に入る。

「バンディッツのリーダー、テンラクだ。スールドまでよろしくな」

「斥候役をやってるファントだ」

「前衛のクリペウスだ。主に盾を使う」

「リュカです。癒しの手を使います」


なんか、俺だけ弱そうだな。

「そんなので戦えるのか?」

「対人でしたら、戦士のレベル二十くらいまでなら」

「マジかよ」

「まぁ、今回の依頼では戦闘は想定されていない。大丈夫だろう」


やっぱ、職に就いてないとパーティー参加は難しいかな。


     ◇


一日が終わり、そろそろ野営かというとき、気配察知に何か違和感があった。

今は気配察知を薄く広くする練習をしている。

このやり方なら五十メートル以上の距離でも“なんとなく”わかる。ただ、“なんとなく”で詳細はわからない。


違和感を感じた方向に気配察知を伸ばしてみるが、“なんか変な感じがする”程度の違和感があるだけだ。


ファントは斥候役って言ってたな。

気配察知が得意なんだろうか?


「ファントさん、斥候役ってやっぱり気配察知が得意なんですか?」

「あぁ。斥候役は気配察知や罠解除がメインだな。やりたいのか?」

「いえ。僕が言う方向を見ないでください。ただ、気配察知で探って欲しいんです。進行方向から見て後ろ右側。距離は五十メートル」


それだけ言うと、俺はファントから離れた。

ファントはしばらく俺が示した方向を探っているようだったが、すぐにテンラクに話しかけに行く。

二言三言声を交わすと、俺の方に戻ってくる。


「俺としたことが、ここまで気が付かないとはな。確かに二人つけてきている。あれは隠密持ちだな。野営までこのまま放置だ」


     ◇


俺たちは護衛対象と共にそのまま進み、野営場所に着く。

護衛対象は馬車で寝るらしい。


テンラクは執事っぽい人と話し、その後、アバリスと少し相談してから戻ってきた。

「向こうは察知できていないらしい。こちらが先に見張りに立ち、向こうは休むふりをすることにした。しばらく向こうの出方を見て、動きがないようなら交代時間付近でこちらから打って出る。リュカ、探知はできているか?」


隠密持ちが二人と聞いて、そのつもりで探ってみると、確かに違和感が二つあるのがわかる。

「はい、二人は別れました。一人は左手の木の上。距離は五十メートル。もう一人は右側で茂みに潜んでいます。距離は四十メートル」

「正解だ」


ファントが俺の言ったことを保証する。

「たぶん、木の上のヤツは弓を持っているな。こちらから攻撃できるのは、位置がわかっているリュカとファントだけだ。どうする?」


既に交代時間までは先方が動くのを待つことは決定している。

つまり、この“どうする”は、動かなかったときの対応だ。


「ファントさんがヘリオンの剣を起こしに行くタイミングで、私が茂みの敵に投石します。ファントさんは弓で木の上の敵を狙ってください」

「投石後、俺とクリペウスで茂みの敵を倒す。木の上の敵はヘリオンの剣に任せるか。あまり詳細に決めても敵の動きがわからん限り意味はないからな」


結局、交代時間まで敵の動きはなかった。


     ◇


「じゃあ、ヘリオンの剣を起こしてくるぜ」

ファントが馬車の反対側へ向かう。

俺は立ち上がり、思いっきり伸びをする。


そして、伸びを終えた瞬間、アンダースローで金属の塊を投げた。

周囲から土魔法で集めた砂鉄を焼成したものだ。


ゴン!


命中。

テンラクさんが茂みに走る。クリペウスもゆっくり茂みに近づく。

だが、テンラクさんは気絶した敵を持ち上げ、首を振った。

「気絶してる。こっちは良いから、向こうの様子を探ってくれ」


反対側では、木の周りを冒険者五人が囲っている。

俺たちも加わると八人だ。

「おい、もう一人は既に捕まえたぞ。とっとと降りてこい」


テンラクさんは気絶した一人を持ち上げて、木の上の敵に見せる。

その後、木の上の敵は両手を上げながら木から飛び降りた。

「その者たちは捕縛して、木にくくりつけておいてください。我らが出発した後、彼らは敵の手の者に救出されるでしょう」

執事っぽい人から指示が出た。


どうやら、こいつらがどこの手の者かはわかっているようだ。

「リュカの投石は見事だったな。それに比べてファント、初手をミスったのか?」

「違ぇよ。向こうが避けたんだ。逃がしてないんだからいいだろ」


     ◇


「ファントさんの弓、見せてもらっていいですか?」

「あぁ、普通の弓だぜ」

「矢はどんなのですか?」

「これだ」

矢も受け取る。


この作戦、実行者二人だけとは考えにくい。きっと、遠くから監視している者がいるはずだ。距離は安全を考えると百メートルくらい、こちらの様子をしっかり観察したいなら五十メートルくらい。

そう考えて周囲を見回すと、七十メートルほど先にちょうどよい木がある。


その木周辺の気配を頑張って探る。

わからないけど、わかるような?


届くかな?

まぁ、外れても別にいいだろう。


もらった矢を弓につがえ、思いっきり引き絞ると、怪しい木に向かって射る。


グヮ!


声と共に、ドサリと何かが木から落ちる。テンラクさんは既に走り出している。

敵は矢による傷と落下によるダメージで速度は遅い。テンラクさんはすぐに追いついた。


「お前たち、援護に来いや」

「いや、テンラクなら余裕かと思って」

テンラクさんが捕縛した敵を引きずってやってくる。


「やはりあなた方でしたか」

執事が馬車から出てくる。

「あの子をくだらない継承権争いに巻き込まないでください」

執事はそこまで言うと懐からナイフを取り出し、その男の首を切った。


その後、スールドに着くまで何事も起きなかった。



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