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第65話 入学試験

いよいよエーデルヴァルト王立学院の入学試験だ。

あいにく歴史の試験日と重なってしまったが、事前に申請すれば問題なく再試験を受けられる。それにしても、試験ばっかりの日々である。


エーデルヴァルト王立学院は王都にある。

俺、実は王都、初めてなんだけど。

王都は広い。

馬車の停留場が東西南北と中央の合計五つもあるくらいだ。スールドからの馬車は南停留所に到着する。

停留所の人混みが今までの街とは全然違う。とりあえず腹ごしらえだな。

米のようなものに肉入りの汁をぶっかけたものを売っている屋台に並んでいると、後ろからグイグイと押される。

なんだ、行列ができる人気店なのか?


屋台の前まで来て一皿注文し、お金を払おうと思ったが、小銭を入れていた袋がない。

馬車を降りた時は、確かにポケットに入っていたのだが。

先ほど、後ろから押されたときに掏られたのか?

数十ギルしか入ってなかったから、良いといえば良いんだが。

都会、恐るべし。


収納からお金を出し、支払う。

毎回収納からお金を出すのも面倒なので、お釣りはポケットに入れるが、スリは怖いな。


気配察知で周囲に気を配るが、なにしろ人だらけだ。

わかるかな?


     ◇


試験は明日だ。

とりあえず、試験会場であるエーデルヴァルト王立学院を探そう。


場所を聞いてみるが、王都の北西にあって、そこまでさらに馬車に乗る必要があるらしい。

王都の馬車システムは環状のものと放射状のものがあり、放射状のものは基本的に中央部から東西南北の馬車停留所までらしい。

北西方向だと環状線が便利だとか。


環状線に乗り、エーデルヴァルト王立学院に到着した。

ほぼ真ん前まで来れてよかった。

マッピングみたいなスキルがあれば良いんだが。


エーデルヴァルト王立学院は、中世の城みたいな雰囲気だった。

とりあえず、近くで宿を探すか。


「一晩千二百八十ギルになります」


徒歩十分圏内で一番安い宿がこれだった。

エーデルヴァルト王立学院周辺は、お洒落なレストランや甘味処、高級ブティックなどが並んでいる。


もうちょっと遠くまで探すべきだったかな。

試験は二日間あるので、三泊必要だ。

かなり痛い出費である。


夕飯もホテル併設のレストランで食べた。

二十二ギル。


財布が軽くなっていく。


     ◇


翌日、試験会場に向かうが、周りは貴族っぽい少年少女ばっかりだ。

なんといっても着ている服が違う。


しまったな。


持っているのは平民っぽい服と軍服だけだ。

昨日、古着屋にでも行けば良かった。

ただ、この辺りには安い古着屋があまりないんだよな。


“王都の歩き方”みたいなガイド本が欲しい。


受付の列には、煌びやかな服を着た貴族たちが並んでいる。

なんか、ちょっと気後れするな。


ふと、端の方の列に俺と同じく平民っぽい服を着た女の子が並んでいるのを発見する。よし、あの列に並ぼう。


「こんにちは」

列最後尾の平民っぽい女の子に、とりあえず挨拶する。


「あ、はい。こんにちは」


返事してくれた。


「周りが皆、立派な服だと緊張しちゃいますね」

「そうですね」


にこりと返事してくれた。

お、かなりの美少女さんだ。


「リュカです。ヴァルクレイン領から来ました」

「私はシャノンです。よろしくお願いしますね」

「お互い合格したら同級生ですね。こちらこそよろしく」


     ◇


「おい、こら。ここは貧乏人が来るところじゃないぞ。薄汚い平民共はとっとと出ていくがよい」

後ろから怒鳴られる。ビクリとするシャノン。


「そうなんですか?」

別に平民ではないが、それを言う必要はない。


「ここがどこだか知っているのか?」

「エーデルヴァルト王立学院の入試会場ですよね」

「そうだ」


沈黙が流れる。

だから?


「わからんか。ここは高貴な者が通う学校の入学試験会場だ。貴族が通うにふさわしい。平民など、お呼びでない」


そのとき、シャノンが受付の番になる。


「あ、シャノン。受付を済ませておいたら?」

「おい、聞いているのか!」

「平民にも受験資格があったと思いますよ。そもそも、国中から広く優秀な人材を集め、高等な教育を施すことによって将来の人材確保につなげるのが王立学院の理念ですから」


昔、シュライバーに習ったな~。

懐かしい。


「だからだ。優秀な人材と言えば貴族だろう。平民には平民の分というものがあろう」

「そうなんですね~。あ、私の順番が来たので失礼しますね」


偏った考えの人だな~。


     ◇


「リュカです」

「身分を証明するものはありますか?」


市民は市民証を出すが、貴族はそんなもの、持っていない。

当主は国王からもらったメダルみたいなのを持っているが、その子供にはそういうものはない。


当主からの身分を証明する手紙か、家紋の入った刀とかで代用する。

何も持ってきてないな。


「これでいいですか?」

軍人手帳を出す。

「はい、大丈夫です」

そういえば、ギルドカードもあったな。


手続きが終わり、受験票をもらう。

「おい、貴族様を待たせるとは何事だ」

あ、待っててくれたんだ。

向こうでシャノンも待ってくれているようだ。


「ごめん、人を待たせてるから。君も手続き済ませたら? じゃあね」

小走りでシャノンの方に向かう。

「身分を証明するものはありますか?」

「何? 俺がわからんのか? 俺は……」


なんか受付で揉めそうだな。


     ◇


「リュカ君、すごいね~。貴族様にも物おじしないんだ」

「貴族が自分のことを貴族様って言うの、初めて聞いたよ~。面白いね!」

二人で会場に入る。

席は指定だ。


「じゃあ、またね!」

それぞれ、自分の席に向かう。


会場を見回すと、平民っぽいのもそこそこいる。

二割程度だろうか。

そういえば、庶民学校の成績優秀者は王都の学院に推薦されるんだったな。


試験はそこそこ難しかった。


     ◇


試験が終わり、会場を出るとシャノンを探してみる。

お、いたいた。

「シャノン、どうだった?」

「まぁまぁかな。リュカ君は?」

「今のところ、大丈夫だと思う」


難しくはあったが、答えられなかった問いはなかった。

「リュカ君はヴァルクレイン領から来てるんだよね。どこかに泊まってるの?」


「うん。近くの宿にしたんだけど、すごく高くてびっくりしちゃったよ」


「王都だからね。私は親戚のところに泊めてもらってるの。合格したらそこに下宿ね。ここから馬車なの」

「わかった。じゃあ、また明日」


     ◇


まだ午後の三時くらいだ。宿に帰るのも味気ないな。

ちょっと冒険者ギルドに顔を出してみよう。


王都のギルドは中央にギルド本部が、東西南北に支部がある。

クエスト受付などは支部だ。

ここから近いのは西支部になる。


歩いて三十分くらいか。

少し急ぎ足で向かうこと二十分、ギルドに到着。中に入ると、そこそこ活気がある。

王都には当然、周辺に魔物の領域はない。

では、ギルド員はどこで稼ぐかと言うと、迷宮だ。


王都には五つの迷宮がある。

というか、迷宮が集まっているところを王都にした感じだ。

そして、ここも許可制だ。

「ダンジョンに入りたいんですけど」

「学院の生徒ではないですよね」

「違います」

まだ入学してないからな。


「ギルドカードを拝見します」

俺のギルド員歴をチェックしている。

「問題なさそうですね。ギルド員として活動していた期間も長く、入ダン経験もあります。西ギルドが管轄しているダンジョンは、からくりのダンジョンと狭くて深い森ダンジョンです。一括申請も可能ですが、どうされますか?」

「一括で」

「では、こちらの入ダン申請書にご記入をお願いします」

ダンジョンに入ることを入ダンって略すんだ。


入ダン申請書を記入し、受付嬢に渡す。

「問題ありませんね。審査には二週間から四週間かかります。では、申請料を四万ギルいただきます」

なんと、申請だけで四万ギル!


ギルベルトからもらった支度金を使ってしまおう。

うん、きっと学院生活に必要なんだ。

四万ギルを受付嬢に渡し、ギルドを去る。


王都、なんかどんどんお金が減っていくよ。



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