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第54話 合流

夜明けだ。ほとんど寝れてない。ちょっとした音でもジャイアントフォレストエイプかと思い、起きてしまう。


2時間ほど移動すると、見覚えがあるあたりに出た。第8陣地に駐屯していたときに薬草採取に来たあたりだ。ここから第8陣地まではそう遠くない。


さらに1時間ほど進むと、前方から戦闘音が聞こえる。見えた!


第二王女の部隊は、第8陣地を囲っていた柵を使い、簡易の陣地を構築していた。直径30メートルほどの陣地が逆茂木で周囲をぎっしりと囲われ、ハリネズミのようになっている。そして、その前で大柄な女性兵士が剣を振るっている。対するはグランドリザード。だが、大きく、色も聞いていたのと違う。変異種かな。ミニバスくらいの大きさの黄色いグランドリザードに向かって振り下ろされる剣は、半ばで折れている。あれ、左手は折れてないか?


グランドリザードは剣をかわし、尻尾を振るう。尻尾は女性兵士の腹にぶち当たった。


大柄な女性兵士の横にいた別の兵が、その隙にグランドリザードに剣を突き立てるが、外皮にはじかれダメージを与えられない。よく見ると、この兵もびっこを引いていて、足を怪我しているようだ。簡易陣地から火魔法も飛んでくるが、こちらもあまり効いている様子ではない。


陣地の反対側でも戦闘が行われている様子だし、これでは合流できないな。反対側は多量のゴブリン種に攻め立てられているようだ。ホブゴブリンとかゴブリンソルジャーだろうか? ゴブリン種は種類が多くて見分けがつきにくいんだよね。魔法を放ってるヤツもいるし。


反対側はやめておこう。乱戦では何が起きるかわからない。ベストはあの大柄な兵士がグランドリザードを仕留めることだが、動きに精彩がない。戦っている隙にこっそり陣地に入れないかな? そもそも入口どこだ?


     ◇


待っているだけだと第二王女部隊のほうがヤバそうだったので、30ミリ砲で援護してみることにした。砲身を出し、水、弾の順に入れ、近くの木に土魔法で固定する。一応、銃把や銃床は付けたけど、30ミリ砲の反動は人間じゃどうしようもないからね。戦闘職になれば可能なのかもしれんが。


さて、実はこれ、一度も試射してない。ライフリングはしてあるから真っ直ぐに飛ぶとは思うんだけど、兵に当たったら目も当てられない。的はデカいから、真ん中を狙っておけばどこかに当たるだろう。


しばし悩んだ後、風魔法で声を送ってみることにした。ヴィント上等兵に習った後、アニータ相手に練習してたんだ。距離は30メートル、届くとは思う。さて、何て声をかけたらいいんだ?


「もし、もし」


しばし悩んだ後、何も思いつかずにかけた言葉だ。電話かよ。


向こうは驚き、キョロキョロしている。


「前、前」


お、こっち向いた。


「撃つ。避け」


実はまだ2音くらいしか伝えられない。


左手を上げ、指を1秒ずつ折っていく。4、3、2、1、ゼロ!


火魔法で水を急加熱した。


ドン!


爆音と共に弾丸が発射され、グランドリザードの頭が弾け飛ぶ。


あ、マズルジャンプだ。銃把と銃床は銃身より下にあるのに、銃床で木に固定したからだな。トリガーなんぞ不要なんだから、素直に銃身だけにして固定すればよかった。まあ、おかげで弾道が上にずれてヘッドショットになったから、ドンマイということにしよう。


「救援物資を届けに来ましたー!」


大声で言いながら陣地に向かって走る。轟音のあと、突然グランドリザードの頭が爆裂したりで呆けていた兵士だが、俺の声に我に返る。


「こっちだ!」


入口は人がギリギリ通れるくらいの幅の隙間だ。通路が中で2回直角に曲がっているせいで、外からは見えない構造になっている。入口から入ると、ちょっとした広場になっていた。中央で焚火が燃えている。


     ◇


「リュカ伍長です。とりあえず治療します」


折れている大柄な兵の腕と、もう一人の兵の足を治療する。


「水はあるか!」


大柄な兵が聞いてくる。


「はい!」


魔法で水球を出す。コップか何かを探すが、その前に大柄な兵が水球に顔を突っ込み、直接水を飲み始める。ワイルドだな、と思っていると、もう一人も水球から直接水を飲み始める。第二王女流?


「良し!」


そう叫ぶと、二人はまた外に出て行った。


「リュカ伍長!」


綺麗な女性に声をかけられる。


「はい」


「治療ができるのだな」


「できます。治療の優先順位を教えてください。最大戦力から」


陣地の中は負傷兵だらけだった。無事な兵は一人もいない。


「ベイリーン、アウリ、スージー、治療を受けなさい」


3人の女性兵士が近くに来る。骨折と打撲、裂傷。立てるだけマシなのか?


順に治療してやる。


「糧食と武器もあります。ここに出します」


3人の治療を終え、糧食と武器を出す。そういえば、さっきの様子だと水もなさそうだったな。水球を浮かべると3人は先ほど同様、水球から直接飲む。


「次はジェシー、ファニー、アイリーン」


次の3人も怪我が酷いな。


「ベイリーン、アウリ、スージー、あなたたちは食事を済ませたあと、東側と交代して」


ジェシーたちの治療が終わる。あれ、次の負傷兵が来ないな?


「まだ治療できますけど、次は誰を?」


「え?」


綺麗な女性――エリザベータ王女がきょとんとする。


「え?」


「まさか」


     ◇


エリザベータ王女が負傷兵の元に案内してくれる。あとは立てない者ばかりなようだ。王女様もきっと喉が渇いてるんだろうと思い、水球を出す。


「どうぞ」


少し逡巡したのち、水球に口をつける。やっぱりこれが第二王女流か。


寝ている負傷兵を次々と治療していく。丁寧に見たおかげで時間はかかったが、夕暮れ時までに全員の治療を終えた。


「あなた、何者?」


「特別貴族徴兵で徴兵されて、無理やり延長させられて、衛生兵をやらされているしがない伍長です」


王女はクスリと笑う。笑顔がかわいいな。


     ◇


先ほどの広場に戻ると、最初に治療した大柄な兵が戻っていた。交代したんだろう。そういえば、大柄な兵で思い出した。


「ここで一番デカい兵って誰ですか?」


「アタシに決まってんだろう。文句でもあるのか?」


「いえ、ニース大尉がこれを一番デカい兵に渡せと言われているので」


ニース大尉から預かった大剣を渡す。


大柄な兵は剣を受け取ると、じっくりと見、その後ニヤリと笑う。


「あいつはアタシの親父なんだ」


大剣をぶん回す。こんな狭いところでやめてください。


「あと、この剣をエリザに渡してくれとリリサ少尉から」


リリサ少尉から託された剣をエリザベータ王女に渡す。


王女は剣を抱きしめると、いきなり泣き出した。


「王女様を泣かせたな。厳罰だぞ」


大柄の兵が悪い顔をして言ってくる。


せめてエリザベータ王女様による鞭打ちとかにしてください。


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