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第49話 陣地での日常

翌朝、起床し、アニータさんと食堂へ行く。すると、前方からリリサ少尉が歩いてきた。


「リュカ一等兵、これから朝食かね?」


「はい」


「実は昨日、第一救護所で処置しきれなかった負傷兵がいてな。何人かそちらへ移送してもかまわないか?」


「もちろんです」


「わかった。では、移送はこちらで進めておくから、リュカ一等兵はしっかりと朝食をとるように」


食堂では、ペンス曹長が既に朝食を食べていた。相変わらず大盛りのようだ。


「よう、昨日は大変だったな」


「おはようございます。第二の方はそうでもなかったです」


「そうか。まあ、リリサ少尉も初日から無理はさせんか。で、そちらは?」


「アニータ一等兵です。リュカ一等兵の手伝いをさせていただいています」


「ほう、美女付きとは第二は恵まれているな。午前中は仕事も少ない。まあ、少しのんびりするといい」


「はい」


第二救護所に戻ると、テントの前にリリサ少尉が待っていた。


「ちょうど移送が終わったところだ。リュカ一等兵は早速治療を始めてくれ。私は少しアニータ一等兵と話がある」


「わかりました」


テントの中は負傷兵でいっぱいだった。

午前中は仕事が少ないんじゃなかったっけ? 全員が結構深い傷を負っている。骨折も多いな。


とりあえず、全員を癒しの手で治していく。

腹部の深い傷とか、第二救護所の担当範囲じゃないんじゃなかろうか?


治療が終わると、リリサ少尉が近づいてきた。


「今日一日、アニータ一等兵を借りるぞ。良いか?」


「かまいません」


「この陣地に来てまだ一日も経ってないな。何か要望はあるか?」


「少し森に入って薬草を採取しても良いですか?」


「ふむ。よし、護衛を付けよう。勝手に入るなよ」


「わかりました。あと、作業台と棚が増やせたらありがたいです」


「そちらも善処しよう」


しばらく待っていると、女性兵士がやってきた。


「リュカ一等兵かな? 私はベスカ上等兵よ。あなたの護衛を任されたの。よろしくね」


美女が来たでござる。ブロンドのワンレン、出るところは出て、引っ込むところは引っ込む体格。歳は十八くらいだろうか?


「よ、よろしくお願いします」


どもった。


     ◇


薬草採取では森の浅い部分にしか入らない。第8陣地の先にも小隊規模の小さい陣地があり、その間は比較的安全らしい。

一時間ほど採取し、第8陣地に戻る。


「それくらいの薬草で、どれくらいのポーションがつくれるの?」


「中級ポーションが二本くらいですかね」


「やっぱりポーションは必要?」


「あれば便利ですね」


「ポーションは全体的に不足してるの。小隊ごとに割り当ててるけど、今は一小隊に二本。これも、じきに一本になるわ」


「多量につくるのは無理ですよ。道具が小さいんで」


「つくったポーションを徴発したりはしないわ、安心して」


ベスカ上等兵は笑顔で言った。ホントですよね?


     ◇


第二救護所でポーションをつくっていると、ぽつぽつと負傷兵が戻ってくる。

重いけがを負った人もぽつぽつ混じっている。前線は厳しいんだろうか?


治療自体はそんなに時間もかからないので、意外と時間はある。

前線にいるのだし、もしものときのために土魔法弾丸の改良でもしてようかな。


砂鉄を混ぜることによって、重い弾丸をつくることはできた。

火魔法の応用で、炎抜きで加熱することもできるので、今度はつくった弾丸を焼結させてみよう。


さて、弾丸をつくろうとすると、砂鉄とは違った金属の感触がある。なんとなく、鉄よりも比重が大きそうだ。金だったらラッキーだけど、鉛だったら大外れだな、と思いながら集めてみる。


集めたものは、灰褐色の金属粉である。金ではない。鉛っぽい色だ。鉛なら簡単に溶けるかと熱してみるが、なかなか溶融しない。タングステン? 粉状だと色もわかりにくいからな。


ふと、前世でイラクとアメリカが戦った戦争で使われていた劣化ウラン弾を思い出した。

金属ウラン?


なんか、ちょっとヤバい気がしてきた。放射線を測定できる方法が見つかるまで、この重い金属を集めるのはやめておこう。写真乾板くらいなら誰かがもうつくっているだろう。


場所を変えて足元を土魔法で探ると、あの重い金属は無かった。あの場所には近づかないようにしておこう。

砂鉄と土を混ぜてつくった弾丸から水魔法で水を抜き、火魔法で加熱する。


ベキッ!


割れる。温度もわからないしなあ。試行錯誤と勘でいろいろ試すしかないか。


第二救護所の生活は、午前中は薬草探し。午後はポーション作成や弾丸魔法の改良、剣士の兵士が暇そうだったらスラッシュを習うなどして、怪我人が来はじめるまで自由に過ごす。

夕方以降は癒しの手による治療だ。最近は結構重症っぽい負傷兵も混じるようになった。腹が裂けて内臓が飛び出しているような患者も、癒しの手で神聖力を思いっきり注ぎ込む力業でなんとかしている。ポーションは患部消毒用だ。


そうそう、アニータさんは治療を受けた兵士の記録をとっている。ときどきリリサ少尉と交代しているが、とりあえず仕事があってよかった。


そんなこんなで、ステータスはこんな感じだ。


名前:リュカ・フォン・ヴァルクレイン

年齢:11

職業:司祭(巫女・祈祷師)

レベル:18

力:25

速さ:65

体力:36

魔法力:513

神聖力:798

闘気力:27

知性:197

・奉祈

・老化軽減 10%

・投擲

・毒耐性(強)

・気配察知

・隠密

・神託

スキルポイント:0


レベルは18になった。中級職のレベル上限は30なので、半分は通過したことになる。ここでは治療三昧だからな。

残念なのは“力”が全然伸びないことだ。戦場にいるのに非力なままである。幸い、この陣地まで魔物が来たことはないから良いけど。


そして、今日、いよいよ弾丸の焼結に成功した。ナックルダスターで思いっきり殴ったくらいでは割れない。ただ、重い。土魔法の魔力ではソフトボールくらいの速度だ。風魔法を併用してようやく甲子園に出られないピッチャーのストレートくらいである。120km/hくらいか?


そこで、魔法で銃身もつくってみる。火薬は無いが、弾を入れてから銃身の後部を閉鎖し、内部で急速に水を温めれば発射できるかもしれない。銃身内で水魔法で発生させた水は、離れていてもなんとなく存在がわかるから、火魔法で加熱することも可能だ。


さて、それでは試射してみるか。


バン!!


ひどく大きい爆発音が響き、銃身が破裂した。念のため、離れておいて良かった。陣地にいた兵たちが皆、集まって来る。

とりあえず、証拠隠滅だ。土魔法で破裂した銃身と弾丸を埋め、足元の草むらに火を付け、ポーション瓶を投げつける。


「リュカ一等兵、何事だ?」


「薬効成分抽出の練習をしていました」


俺がテントでたまにポーション作成をやっていることは周知の事実だ。


「何をどうやったら、あんな音が出るんだ?」


「薬草からの抽出効率を上げるため、ポーション瓶に薬液を入れ、加熱していました」


「蓋をしたままか?」


「はい」


「それで、瓶が破裂したか。しかし、それくらいであんな大きな音が出るものか?」


出るわけないですよね。


このあと、むっちゃ怒られた。


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