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第42話 渡河

翌朝も日の出とともに出発し、昼頃、インターチェンジに到着する。

古代回廊はまだ続いているが、ここで降りるらしい。


古代回廊を出ると、すぐにブラッドハウンドの群れに襲われた。四匹の小さな群れだ。ブラッドハウンドはマッドドッグより一回り大きく、群れで獲物を追い詰める犬系魔物である。


「リーゼ、そっちをお願い!」


マリベルが突っ込む。


マリベルが二匹、リーゼが二匹の相手をしている。

ティナが放った一発目のファイヤーアローは簡単に躱される。


マリベルは攻撃を受けながらも打撃を与え、徐々にブラッドハウンドの体力を奪っている。一方、リーゼ側は剣が警戒されているらしく、ブラッドハウンドは遠巻きにリーゼの周りを回っている。


すると、リーゼの周りを回っていた一匹が急に狙いをこちらに変え、突っ込んできた。


「ファイヤーウォール!」


お、新技だ。

目の前に火の壁ができる。だが、ちょっと高さが足りないんじゃないかな。俺の身長くらいである。


案の定、ブラッドハウンドは炎の壁を飛び越えてきた。

だが、あらかじめ飛び越えてくるのがわかっていれば問題ない。気配察知で場所とタイミングを計り、ショートソードを構える。振るには重いショートソードだが、構えて待ち構えるくらいならできる。


ガボォ!


狙い通り、ショートソードはブラッドハウンドの口に突き刺さる。脳にはダメージが入らなかったようだが、致命傷だろう。


口にショートソードを生やしたまま飛んでくるブラッドハウンドを避け、落ちてきたところで後ろ足を踏みつける。


魔物はしぶとい。後ろ足を折って機動力を削いでおけば安心、と思ったのだが、残念ながら折れなかったようだ。硬い。


起き上がろうとするブラッドハウンドの腹を、バグナクの刃で切り裂く。

マリベルとリーゼの方も終わったようだ。


今回、無事にブラッドハウンドを倒せたのは、間違いなくティナのファイヤーウォールによる目くらましのおかげだ。


「ティナ、サンキュー」


ティナは釈然としない顔をしていた。


     ◇


夕暮れ前、川の手前に着いた。


宿屋や店のようなものが数軒ある。


「ここはアメリア河の渡し場さ。ほら、向こうに古代回廊が見えるだろ」


上流の方を見ると、遠くに崩壊した橋が見える。


「ここで一泊して、明日の朝、出発だ」


そう言うと、ヘルマンさんたちは宿屋のひとつに入っていった。


俺たちは顔を見合わせる。


「野宿よ」


マリベルの一言で、快適なベッドの夢は去っていった。


     ◇


翌朝、渡河の列に並ぶ。

渡し舟は平たい板のようなもので、前方両側からロープが伸びて川の反対側へとつながっている。後方両側にもロープが付いており、こちらは船が進むとこちらの岸から伸ばしていくようだ。


朝食を食べながら待っていると、我々の番になる。

渡し舟の上に乗ると、対岸からロープが引かれ、船がゆっくりと進む。


魚でもいないかな? と川を覗いていると、


「この川には小さな魚の魔物がいるから、落ちないようにね」


とマリベルに注意される。


渡河後、順調に進み、一回の野営を挟んで無事にフェルゼンベルク男爵領へと到着した。


「お疲れ様。はい、依頼達成証」


商隊護衛依頼はこれで無事終了である。

ヘルマンさんたちはさらに北に進むそうだが、この先は治安が良いため護衛は必要ないとのこと。


さて、この先はどうしようか。

元来た道を逆にたどってヴァルクレインに戻るか、フェルゼンベルク男爵領の東側にあるアイゼンフェルト子爵領に入り、そこから南下してエーベルシュタイン子爵領を経由して帰るか。


「少しフェルゼンベルク男爵領を見学してから、アイゼンフェルト子爵領に入りましょう。いろんな領を見ておきたいわ」


マリベルはヴァルクレインを出たあとの拠点とするべき領地を見繕っているようだ。稼げて、レベル上げに適した迷宮が領内にあることが一番大事だが、領の雰囲気なども見ておきたいとか。


そういえば、アイゼンフェルトは金属を産出する迷宮で有名なんだったな。


     ◇


フェルゼンベルク男爵領の領都、フェルゼンベルクはそれほど大きくはない。近くで出没するキラーラビットの毛皮が主産業だ。ヘルマンさんはここで毛皮を買い込み、さらに北方で販売する。


「キラーラビット狩りよ!」


言うと思ったよ。


一角ウサギと異なり、キラーラビットの武器は爪だ。特に後ろ足の爪は大人の拳ほどの長さがあり、しかもかなり鋭利で、無職や後衛職の皮膚など軽く引き裂く。


「革鎧が必要ね」


ティナと俺はローブだ。防御力があまりない。

マリベルは武闘家なので、鎧や剣などを装備するとステータスが下がってしまう。


このステータスダウンの判定が難しいらしく、ある一定以下の装備ならステータスは下がらない。例えば、服とかバグナクだ。だが、どこかに閾値があるらしく、それを超えると一気にステータスダウンする。面白いことに、服を減らすと付けられる防具が増えたりするらしい。誰得な仕様だ。


俺とティナは防具を付けてもステータスは下がらないが、二人とも力のステータス値が低いため、金属製のアーマーなどを付けたら動けなくなってしまう。そこで、革鎧だ。


「これは砂漠リザードの革を使っていまして、キラーラビットの爪程度でしたら破損しません」


なんかゴツゴツしていて動きにくい。意外と重いし。


「こちらはグリーンドラゴンの瞼から作られた鎧です。しなやかながら、金属鎧並みの防御力を誇ります」


二百三十万ギル?

そんなの、貴族に売りつけなさい。あ、そういえばまだ貴族ではあるんだった。貧乏子爵の五男には無理だな。


結局、革の胸当てとタセット、籠手を買った。

ティナはローブのままだ。


「革鎧だって重いじゃない」


後ろに魔物をそらすなというプレッシャーを感じます。


     ◇


「リュカ、時間だけ稼いで!」


前衛が苦戦している。

キラーラビットは二匹。最初はマリベルとリーゼがそれぞれ一匹を担当していたが、動きが速すぎて対処が難しく、マリベルの傷がどんどん増えていった。


マリベルとリーゼは協力して、まずは一匹を仕留める方針に変えたらしい。

ただ、当然そのままではキラーラビット二匹がマリベルとリーゼを攻撃することには変わらない。


俺は走って位置を変え、ティナから遠ざかるとともに、一匹に向かって矢を射る。


バシッ!


命中はしたが、深くは刺さらない。

だが、こちらに注意を引くことには成功した。


もう一発――は避けられた。

まあ、今回はこっちを見てるからね。


キラーラビットはもう目の前だ。

スライディングで突進を避ける。ギリギリで攻撃を躱すことに成功した。


すぐにこちらを振り返るキラーラビット。

だが、こちらはスライディング後で地面に倒れたままだ。こちらに飛びかかろうとするキラーラビットへ――


ドンッ!


そこに、ティナからのファイヤーアローが命中した。そこそこダメージを食らっているようだ。


キラーラビットが攻撃対象をティナに変える。

まずい。


とっさに投石するが、あまり意に介した様子を見せない。攻撃力が低い俺のことは、ひとまず無視することに決めたようだ。


ジャンプしようとしたところへ、今度は剥ぎ取り用のナイフを投げる。ナイフと言っても五百グラムくらいあるやつだ。当たれば痛いはず。


だが、キラーラビットはこちらを一瞥すると、尻尾でナイフを叩き落した。

くそ、あとは体当たりくらいか?


ザン!


キラーラビットがティナに視線を戻した瞬間、リーゼの剣がキラーラビットの首を落とした。


「キラーラビットは無理」


ティナは、一応次の魔法は準備できていたようだが、動きの速いキラーラビットに当てられたかは五分五分だったとか。


「二匹でこれだと、三匹来たらアウトね」


リーゼ曰く、キラーラビットは一~三匹で出ることが多いらしい。


「そうね、無茶はやめましょう」


マリベルも素直に引き下がった。

キラーラビットの毛皮二匹ぶんは四千ギルになった。割に合わない。


「まあ、いいわ。お金も少し入ったし、フェルゼンベルクの名物でも食べて次に行きましょう」


一人千ギルだと、革鎧一式を買った俺は赤字なんだけど。



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