第40.5話 閑話:ギルド嬢のつぶやき
「はい、依頼達成ですね。こちらが依頼料になります」
「ありがとう!」
男の子が小銭を受け取り、去っていく。
見た目は貧民だし、匂いも貧民だ。
だが、このギルドで受付をやって十年になるリーゼルは、その子が領主の五男であることを知っていた。
最初に来たときは、姉のマリベル様、兄のカスパル様と一緒に郵便配達依頼の達成報告のためだった。隣の領で冒険者登録し、ちょこちょこと依頼を受けたらしい。リュカ様はIランクで登録し、既にHランクとなっていた。
マリベル様とリュカ様は、その後も依頼を受け続けた。
最初は主に採取依頼だった。
貴族でも、子爵家で五男くらいなら冒険者になることは普通にある。男爵家など、下手をすれば次男から冒険者だ。
だが、さすがに四歳でHランクの冒険者というのは聞いたことがない。
あの年齢の子供が冒険者ごっこをやっていたら、普通なら他の冒険者に絡まれそうなものだ。
だが、あの二人の父はギルベルトである。ましてや、マリベル様の母はフリーデガルト様だ。あの二人の怒りを買うかもしれないことをするギルド員は、この領にはいなかった。
途中で、リーゼという女性冒険者とパーティーを組むようになった。
リーゼは、ほっそりとした美人系だ。闘気力の才に恵まれ、庶民の学校で武闘家の職を得た才能ある子だった。
だが、パーティーメンバーには恵まれなかった。
容姿が良いうえ、武闘家の制約から露出が多い服装をしていた。これが男たちの目に留まらないわけがない。リーゼとパーティーを組もうという男たちは、だいたいリーゼを欲情の目で見ていた。
リーゼがマリベル様とパーティーを組んだのも、自然な成り行きだったろう。
この三人パーティーは順調にランクを上げていった。
討伐実績もなかなかのものだった。
一度、ギルドマスターがこの三人パーティーを斥候に尾行させ、観察させていたことがある。すると、リュカ様まで戦闘に参加していたという。
あの子供の体でゴブリン三体と相対し、無傷で勝つ実力は異様だ。
斥候の見立てでは武闘家の職を得ているのではないかとのことだったが、リュカ様はポーション作成の依頼も受けている。それでは話が合わない。モンクだろうか?
マリベル様とリーゼは、最初は貴族らしい衣装でギルドに来ていたのだが、途中から庶民らしい服装になった。
リュカ様に至っては、最近では貧民のような装いで来ることまである。
貧民街の無職の子に採取を教えているようだが、いったい何がしたいのやら。
現在、あの三人パーティーは全員Dランクだ。
ここまでのランクアップに何の忖度もない。彼ら自身の実力と頑張りだ。
Cランクに上がるとなると、さらに厳しい査定が待っている。
さっそく商隊護衛依頼を受けていたようだが、はたしていつCランクに上がるのか。
リュカ様の成長を見るのは、リーゼルのひそかな楽しみとなっていた。
そうだ、もし個人護衛の依頼でリュカ君に良いのがあったら打診してみよう。




