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第39話 庶民学校卒業

ダイニングテーブルの椅子に座る。

真正面にはクルガンさん。イリーナはお茶を入れに行った。


……なんか睨んでる。

視線を下げていると、腹の傷を見ていると思ったらしい。


「毛はまだ生えてきてないが、傷口はこの通りだ」


なんの跡も残っていない。

そういえば、前世でも熊は傷を負ってもケロイドにならないんだっけ。いや、アホなことを考えている場合ではないな。怒られる前にワイバーン素材のことを謝っておこう。


「あの、ワイバーン素材のことだけど」


「おう、あの目玉な。処置も良かったらしく、かなり評価が高かった。塩水に漬けておくといいんだってな」


目の前に金の入った袋を置く。

目玉のこと、すっかり忘れてたよ。


「これは?」


「ワイバーンの目玉採取依頼の達成料だ」


ワイバーン素材の件で怒ってる、というわけではなさそうだ。

よかった。でも、この金はもらわないでおこう。


「いや、このお金はクルガンさんがもらってください」


「どう考えてもおまえのもんだろう」


そうなの?

あの場でクルガンさんが死んでたら発見者の俺のものだけど、生きてるし、そうはならないんじゃ?


「はい、お茶!」


イリーナちゃんはお茶を持ってくると、俺の隣に座った。

イリーナちゃんは熊っぽくないな。獣人は母親の種になるって話だし、なんの獣人だろう?


「では、このお金は――山ではイリーナに届けてくれってクルガンさんが泣きながら言ってたし、イリーナちゃんのものってことで」


「え? なんのこと?」


せっかくだから、イリーナちゃんにクルガンさんが泣きながら金を娘に届けてくれって言ってたと暴露してあげた。イリーナちゃんは少しうるっと来ていた。


まあ、金の話は置いておこう。


「なんで、あんな所でワイバーンの死骸と一緒に倒れてたんですか?」


ペリから「絶対に聞いてきて」と頼まれてた。

忘れてたけど。


「ワイバーンの目玉採取依頼を受けたんだ。で、ここから北にある山中でワイバーンと戦ってたんだがな、あの野郎、俺をつかんで飛び上がりやがったんだ。俺を空から落としてやろうって腹だったんだろうな。奴が俺を落とそうとした瞬間、足をつかんで、やつの体を登っていったんだ」


ミッション不可能でありそうな場面ですな。

あれは軽飛行機だったけど。


それにしても、目玉採取依頼を受けていたとは。目玉をここに忘れていってよかった。


「なんとか首の骨を折ってやったんだが、そのとき嘴で腹を裂かれたんだ。で、落ちたのがあの山だったってわけだ」


やっぱり冒険者になるのはやめておいた方がよさそうだ。そんな仕事、命がいくつあっても足りない。


「ところで、僕を探してたみたいですけど?」


「俺の命があるのも、依頼が達成できたのも、すべてリュカのおかげだ。礼をせねば鉄腕のクルガンの名折れ。何を望む?」


急に言われてもな。

それに、ワイバーン素材はちゃんといただいている。特に“欲しい”ってものもあまりない。五男とはいえ貴族だし。


「急に言われても思いつきません。また考えておきます」


「絶対だぞ」


     ◇


「今日は泊まっていけ」


あんたがマリーの宿屋で泊まりにくくしたんだぞ。偉そうに言うな。


「こっちのベッドを使ってくれ。イリーナ、お父さんと寝るぞ」


「あたし、リュカと寝る!」


まあ、前回も一緒のベッドで寝たしね。

お父さん、睨まないで。


目玉のお金は置いて出た。他の素材はくすねてるしね。


     ◇


さて、今日はいよいよ天啓の儀である。


途中で来なくなる者や、四分の三の出席に届かない者が消え、学校に来ているのは入学時の半分くらいだ。天啓の儀に興味がない獣人も、ペリ以外は来ていない。


「いよいよだな」


テオは武闘家になれることを期待しているんだと思う。

俺には闘気力が未だにあまり感じられないから、テオにどれだけ潜在能力があるのかは不明だ。


「職業を授かるのは十人に一人よ。そんなに期待しない方が」


アンジェからは魔法力と神聖力を感じる気がする。


「二人とも、いい職業に就けるといいね」


ペリは部外者発言。


そして、神官が何かの呪文を唱え、魔法陣が光り出す。


――司祭、――僧侶


中級職が選択肢にあった場合どうするか、以前から考えていた。


僧侶に就いた場合、大っぴらに僧侶であることを公開し、治療活動などで稼げるだろう。僧侶で取得できるスキルで、治療の幅も広がるはずだ。


しかし、俺の目的は“第二次性徴前に巫女の呪いから脱する”ことだ。

巫女から祈祷師に転職しても、物理的刺激で巫女の職は消えかかった。

僧侶は巫女や祈祷師と並列である。


では、巫女と祈祷師をベースとする中級職に就いた場合、どうなるのか?

巫女の職とともに中級職も消えるのか。検証が必要だ。


だが、中級職を取得した場合、それは秘密にしておく必要がある。

十歳で中級職は異常だ。


――司祭


俺は迷わず司祭を選択した。


十四~十五歳まで童貞というのは、まあ、ありかもしれない。

でも、そこまで精通なしはさすがにあり得ないだろう。精通が巫女の呪いに引っかかるかは不明だが、ここは安全策だ。


光が消え、周囲がざわついている。


「祈祷師になれた」


「私は巫女」


テオとアンジェが小声で報告してくる。


十人に一人で二人とも、というのは一〇〇分の一の奇跡、というわけでもない。学生の中には“知力”が足りなそうな子が結構いた。この二人は放課後の勉強で、成績はかなり優秀な方になっている。


その後、それぞれの生徒に就いた職の聞き取りを行った。

テオとアンジェが職に就いたため、俺が無職と申告しても不審には思われなかった。


     ◇


これで庶民学校生活は終わりである。


天啓の儀が卒業式みたいなものだったのだろう。最後に教師が締めの言葉を述べ、解散となった。


「リュカ君、体調悪そう。大丈夫?」


「リュカが無職だなんてな。びっくりだぜ」


俺が辛そうにしていると、アンジェとテオが声をかけてきた。


「大丈夫だ。とりあえず戻ろう」


ただのステータス減少である。

もう貧民街に住む必要はないのだが、それも不自然だろう。減ったステータスで無理をしながら、とぼとぼと貧民街の家に戻った。


     ◇


「アンジェ、テオ、おめでとう。これで職ありになれたわけだな」


「リュカ君のおかげだよ」


ペリとミリアもうなずいている。

この家、五人入ると狭いんだよな。


「ステータスを開いてみてくれ。アンジェには“祈り”、テオには“祈祷”のスキルがあるはずだ」


二人とも宙を見ている。

ステータスを確認しているんだろう。


「このスキルを発動すると魔法力がなくなって気絶する。だから、寝る前に唱えるといい。強く念じるだけで発動する。今はやるなよ」


二人ともうなずいている。


「“祈り”や“祈祷”を続けることでレベルが上がる。失った魔法力は昼寝で回復するからな。一日二回はできるぞ。レベルが上がればステータスも上がるから、こまめにやれば強くなれるはずだ」


テオはミリアの方をちらりと見てから、


「レベルが十くらいになったら、ミリアと冒険者をやろうと思う」


と言った。


「ああ、その話はミリアから聞いている。ミリアには冒険者の基本は教えてある。しっかり教えてもらえ。俺は貧民街を出る。この家はミリアにやるから、好きに使ってくれ」


家の話はあらかじめミリアに伝えてある。

もう一人一緒に住んでいた子、テリアと住むそうだ。テオと住むのかと思ったが、テリアを一人にはできないらしい。


「あたしは巫女の館に行く」


アンジェだ。

そうだろうとは思っていた。


他にも巫女志望の子はいるそうで、まとめて王都まで連れて行ってもらえるらしい。費用は領主持ちだ。頑張れギルベルト。


「ああ、頑張ってな」


「リュカは貧民街を出てどうするの?」


「しばらくは冒険者かな。こことグランベルクで活動する予定」


ペリが聞いてきた。

そういえば、ペリの進路を知らないな。


「ペリはこれからどうするの?」


「獣人の神殿に行ってみる」


「獣人の神殿?」


獣人の職は“獣人”で、物心がついたときにはステータスを出せる者が多い。

だが、ペリはステータスを出せなかった。


そういう場合、修行したり勉学に力を入れたりしてから、獣人の神殿で祈るとステータスを出せるようになることがあるとか。


「獣人の神殿はこの国の西、リヒトシュタインの南にある」


魔物の領域の中にあるので、獣人の冒険者を雇い、リヒトシュタインから南下するらしい。


「獣人の神殿の場所は人族には秘密」


人族四人が聞いてるんだが。


その後もいろいろ話し、就寝した。



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