表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/49

第25話 弾丸魔法失敗

翌朝、王子一行は西へ向かっていった。

父も一緒だ。


父はこの王子一行を利用して、西の魔物を間引いておくつもりらしい。

現在のヴァルクレイン家は戦力不足で、防衛も心もとない。良い機会ではある。


帰りは別ルートになるので、こちらには寄らないそうだ。

第3王子派を増やすための顔見せでもあるらしい。


王子一行は、荷物が少なかった。

これには理由がある。


収納の魔道具である。


ファンタジーアイテム、ナンバーワン。

ただし、古代遺跡からしか出土しないうえにかなりレアらしい。大容量のものを持っている者は少ない。王家が数個、大貴族にいくつか、大商人にも、もしかしたら――くらいのものだとか。


なぜ「たぶん」なのかというと、持っていること自体が秘匿されているからである。

何かあったとき、真っ先に狙われるからだ。


ではなぜ俺がそれを知っているかというと、王子が自慢げに見せてくれたからである。


……大丈夫か、あの王子。


ギルベルト父は二週間ほどで戻ってきた。


魔物討伐は成功。まあ、王子は座っていただけだが、「見事な指揮で」魔物の大集落を落としたことになるらしい。


広い範囲で魔物を減らすことに成功したため、フリーデガルト母も少ししたら戻ってくるとのこと。


めでたしである。


「こんなものを褒美としていただいたぞ」


そう言って父が見せてくれたのは、かなり古い時代の魔道具らしい。


魔石を入れ、ボタンを押すと、中央で飛び出している棒が回る。

それだけである。


用途は不明。

王子からもらったものだから捨てられないが、倉に入れておく以外どうしようもない物体らしい。


そりゃそうだ。

回転機構自体は役に立つ。だが、それが一つだけあってもな。出力もわからないし。


「これはリュカにやろう」


王子の相手をしたのは俺だしね。


というわけで、さっそく分解してみる。


ネジらしきものがあったので外す。

ふむ、全然わからない。


モーターみたいなものでもあるかと思ったが、回る棒の先には円盤がついているだけ。

試しにスイッチを入れてみると――今度は回らない。


やば。壊したか?


恐る恐る元に戻してからスイッチを入れると、今度は普通に回った。

壊れてはいないらしい。よかった。


もう一度分解してよく見ると、小さなバネのようなものがある。


ああ、開いていると動かない保護機構か。


その小さなバネを押さえた状態でスイッチを入れると、円盤が回り始めた。

円盤を囲むように均等配置された部品へ、魔力が通っているのがわかる。


モーターと同じ原理なら、この円盤を囲む部品が、円盤側の何かに対して引力か斥力を発生していて、それが高速で切り替わっているのだろう。


では、その部品の中身は何か。


……となると、殻割りしてみないといけない。

だが、それをやると壊れるのは確実だ。


たぶん、この中で一番大事なのは、魔石とスイッチ、そしてスイッチと回路を結んでいるこの紐だろう。

金属ではない。何か繊維のようなものだ。


今日はこのくらいにしておこう。


     ◇


今日はヴァイス商会に来ていた。


リーゼは指南所。

マリベルは投擲の練習中。


ギルドで依頼を受けるのは週に二、三日で、他の日はみな別々に動いている。


「リュカ君は、上級ポーションは作れるのかい?」


「神聖力を込めるだけなら。薬液のほうは成功率六割くらいかな」


「そうか。ユリウス君にも教えられればと思ったんだが」


ユリウス兄は、ヴァイス商会でポーション作りを担当しているらしい。

下級ポーションはかなり上達したとか。


「知っているかもしれないが、グランベルク領では上級ポーションが不足していてね。リュカ君、やってみないか?」


獣人は自己治癒力が高く、小さな怪我なら勝手に治るらしい。

その代わりかどうかはわからないが、治癒術やポーションの効きが悪いのだとか。上級ポーションなら効くため、需要が強いそうだ。


「やってみるなら、系列の店を紹介するよ」


そう言って、ヴァイス商会系列の店への紹介状を書いてくれた。


上級ポーション作成は、素材も高いし技術も必要だ。

しかも、抽出液の蒸留が必要なので、蒸留器が必須になる。


残念ながら、蒸留器はクララさんからはもらえなかった。

蒸留水も必要なので、何台あっても困らないらしい。


ただ、蒸留器はむちゃくちゃ高い。


構造自体はそこまで複雑でもなさそうなので、自作も考えたが、とりあえず小さめの蒸留器を一台、ヴァイス商会で買っておいた。


意外と金は持っているのである。


マリベルとリーゼは食費がかかるが、俺は基本、家で食べている。

服も買う必要はない。


以前はポーション販売でもそこそこ儲けていた。


ちなみに、ポーション販売は商業ギルド員としての活動なので、利益は商業ギルドに預けてある。

そちらの残高はすでに十五万ギルほど。

冒険者ギルドにも八万ギルほどたまっている。


そう。

マリベルよりも、俺のほうが金持ちなのだ。


実家暮らし、最高である。


ついでに上級ポーションの素材も買って帰る。

今日は家でせっせと上級ポーションでも作っていることにしよう。


     ◇


スナッチモンキーと戦ってみて、やはり弾丸魔法が欲しくなった。


森の中では、投石にちょうどいい石を見つけるのが難しい。

弾丸魔法の最大の難点は、弾が軽くて脆いことだ。


でも、これは土の中の成分をうまく選り分ければ、重い弾を作れるのではないだろうか?


まずは、土の中に砂鉄が含まれているか。

そして、それを魔法で分離できるかだな。


砂鉄といえば、磁石である。


「磁石ってない?」


父に聞いてみる。


「あるぞ」


そう言って見せてくれたのは、方位磁針だった。

小さい。だが、このサイズでも高価らしい。


「ありがと」


北の方向をしっかり覚える。


弱い磁石なら簡単に作れる。

鉄の棒を南北方向に向け、強く叩くだけだ。


この方法でできる磁石は弱く、しばらくすると磁力も失われる。

だが、鉄を熱し、冷える過程で叩けば、もう少し強い磁石になる。


まず、庭の物置から金属片と金槌を拝借する。

コンラート不在なので、持って行き放題である。


火の生活魔法で熱し、南北を揃えて石の上に置き、数回金槌で叩く。


これで磁石完成。


土を熱して完全に乾かし、砕いて磁石を近づける。

すると、黒い砂が集まってくる。


これを何度も繰り返し、砂鉄ゲットである。


砂鉄も土扱いらしく、土の生活魔法で動かせる。

しばらく工夫した結果、土から魔法で砂鉄だけをより分けることにも成功した。


よし。

これで重い弾を作れる。


――そう思っていた時期が、俺にもありました。


土と違って、砂鉄を弾丸状に形成できないのである。


土から砂鉄を集めて、魔力で弾丸っぽくまとめることはできる。

だが、魔力を抜いた瞬間、さらさらと崩れ落ちる。


もちろん火魔法で熱してみた。

だが、温度が足りないのか固まらない。


火魔法と風魔法を合わせたバーナー魔法なら砂鉄を溶かせる。

だが、それは俺がイメージしていた弾丸魔法とは完全に別物である。


とりあえず、砂鉄は蒸留器の部品づくりに回しておいた。


     ◇


そろそろレオンの婚約者を招こう、というタイミングで、カスパルがやらかした。


街で庶民の女の子を無理やり、してしまったらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ