第23.5話 閑話:フリーデガルトの見立て
うちの家系は武門とはいえ、どちらかといえば武闘家の家系だ。
武闘家の血脈を保っていても、代によっては子らの闘気力が足りないこともある。
それに、武門の家は子どもの数そのものが少なめなことも多い。
まあ、筋骨隆々の第一夫人に情欲が湧かず、第二夫人以降とせっせと、という話も珍しくはない。
そこで、家によっては闘気力を底上げする秘儀を持つ。
我がローゼンフェルトのそれが、闘気浸透撃だ。
闘気浸透撃は、闘気を螺旋として打ち込むことで、相手の闘気力を活性化させる技である。
このとき、逆回転の魔法力を重ねることで物理的な損傷を軽減し、闘気の流れだけを体内へ通す。
もっとも、副作用は重い。
逆回転の魔法力も相手の体に入るため、闘気と魔力の流れが体内で激しく乱れ、丸一日はひどい苦痛に襲われる。
これを一年続けることで、闘気力の基礎値は増強される。
だが、大人でも音を上げ、続けられないことが多い。
ちなみに、一年以上続けても効果は薄いと知られている。
セシリアが出兵前に言った。
「子どもたちをよろしくね」
あのときは意味がわからなかった。
だが、今ならわかる。
セシリアは未来を視たのだろう。
子どもたち。
自分が腹を痛めて産んだ子らのことに違いない。
まずはソフィアだ。
この子は、私が必ず守り抜く。
アルドリックはもう独り立ちできる年齢だ。
ユリウスも、まあ大丈夫だろう。
リュカは、よくわからん。
闘気力はほとんど無い。
だが、剣術や武術には興味があるらしく、鍛錬は案外まじめにやっている。
武門の子としての責任感かもしれん。
あるとき、リュカが武闘家に向けた修行を始めていると、マリベルから聞いた。
あの闘気力では、武闘家になるのは無理だ。
たとえ闘気浸透撃で基礎闘気力を上げても、届かないだろう。
だが、セシリアの言葉は「子どもたち」だった。
複数形だ。
ソフィアだけでなく、リュカも含まれているのかもしれない。
ならば、母としてできることはしておくべきだ。
大人でも逃げ出す闘気浸透撃の修行を、リュカは一年耐えた。
驚くべきことだ。
正直、あり得ん。
我が子カスパルは、四日で音を上げた。
しかもリュカは、一度だけ、逆回転の魔法力を相殺してみせた。
あれには驚いた。
あの逆回転の魔法力は、闘気浸透撃に伴う物理的損傷を軽減するためのものだ。
つまり、相殺したあの瞬間、リュカは闘気の螺旋をまともに受けたことになる。
魔法力の浸透に抵抗を感じ、私が完全には振り抜かなかったからこそ、両腕の開放骨折だけで済んだ。
あれは危なかった。
リュカは他にも、いろいろと子どもらしくないところがある。
だが、あれは放っておいても問題なさそうだ。
最優先は、やはりソフィアだろう。
……そういえば、カスパルも最近は少し落ち込み気味だったな。
今度、組手にでも誘うか。
肉体言語が、いちばんわかり合える。




