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第20話 祈祷師

援軍要請予告の件は、ヴァイス商会にも知らせておいた。


だが、いかんせん不確定要素が多すぎて、動きにくいらしい。


そもそも、食料品は前回の出兵以降、値が上がったままで下がっていない。

武器防具は今後さらに上がるだろうが、そちらは専門商会が強すぎて割って入るのは難しいとのことだった。


「前線が遠いから、ポーションも儲けにくいですしね」


たしかに。


前回は、軍が自前の分を出発地で仕入れたから儲けられたのであって、わざわざ東まで持っていったら赤字だろう。


「あら、リュカくん。ユリウスに用?」


オスカーさんの末娘、ヘレナさんである。

赤毛そばかすの元気っ子。そしてユリウス兄の結婚相手になる予定の人だ。


「あ、ヘレナさん。オスカーさんと雑談してただけです」


「お父さん、店先で何やってるの。お茶を入れるわ。中に入って」


この世界、貴族同士の結婚は面倒だが、庶民同士は案外簡単だ。

いつの間にか一緒に住んでいた、ということすらあるらしい。


特に結婚式も挙げないが、裕福な家では親しい人を呼んで食事会をすることもあるとか。


さて、少し複雑なのが、貴族と庶民の結婚である。


貴族の男が庶民の嫁を取る場合は、普通に結婚式を挙げる。

だが、貴族の男が婿入りする場合は、その貴族の格や、その男が何番目か、いろいろ事情が絡むらしい。


実はオスカーさんから、今回はどうするのがよいか、父に探りを入れてほしいと頼まれている。


「大げさなことをする必要はないそうですよ。うちで顔合わせをするくらいでいいんじゃないかって。特に今、うちは母が戦地に出ていますから。結納金とかも別に、だそうです」


今回は婿入りなので、本来ならヴァイス家がヴァルクレイン家へ結納金を出す形になる。

だが、庶民から貴族へ結納金を出す例はあまりないらしい。


「そうですか。何もしないというのも心苦しいのですが」

そこへユリウス兄とヘレナさんが席につく。

すぐ後ろから従業員がお茶と茶菓子を運んできた。


「お菓子なんてどう?」


ヘレナの無邪気な発言は、きれいに流された。


「なら、ユリウスの天啓の儀を援助、というのはどうでしょう? うちではローゼンフェルト家の血を引く者はローゼンフェルト公が援助してくれますが、それ以外はいろいろと難しくて」


「なるほど。ユリウス君の天啓の儀であれば、ヴァルクレイン家への援助にも見えますし、ヴァイス家に来る婿に箔をつけただけのようにも見える」


ユリウス兄が驚いた顔でこちらを見る。


いや、打算だから気にしなくていいよ。


そのままオスカーさんと少し打ち合わせをして、ユリウス兄と一緒に家へ帰った。


     ◇


「リュカ、さっきはありがとうな」


「どう考えても次はユリウス兄でしょ」


「半分、諦めてたんだ」


「天啓の儀のとき、ユリウス兄と一緒に祭壇に上がりたいんだけど、いいかな?」

「なるほど、それが狙いか」


と、ユリウス兄は笑った。


「いいだろう。でも、リュカはまだ職は得られないと思うよ」


大丈夫。


前回、祈祷師は出ていたから、祈祷師は固いだろう。

僧侶が出れば御の字なんだけどな。


ほどなくして、ユリウス兄の天啓の儀がうちで執り行われた。


ユリウス兄は自然に俺の手を取り、一緒に祭壇へ上がる。


光の柱が立ち上がる。


――祈祷師。


残念ながら、祈祷師のみ。


まあ、巫女から逃れられるなら何でもよい。

俺は迷わず、祈祷師を取った。


「僧侶になりました」


ギルベルト父とフリーデガルト母が静かに拍手する。


マリベルが「冒険者にならない?」みたいな顔をしているが、ユリウス兄はもう商人になると決めている。

ソフィアはフリーデガルト母の腕の中だ。


これからヴァイス家で、ポーション作りでも頑張ってくれ。


     ◇


翌日の夜、ヴァイス家を招いて食事会が開かれた。


俺はもちろん、マリベルもオスカーさんたちのことは知っている。

特にサプライズもなく、食事会は穏やかに終わった。


そのままユリウス兄は、ヘレナさんと一緒にヴァイス家へ帰っていった。


これでユリウス兄が使っていた部屋が俺のものに――とはならない。


アルドリック兄を呼び戻すそうだ。


アルドリック兄は無事アウレリア学院を卒業し、行政庁に見習いとして潜り込んでいた。

都会での華やかな生活の夢に破れ、Uターンで田舎の実家に就職。


……まあ、いいんじゃないだろうか。


その夜も、俺はマリベルと同室の子供部屋で寝る。

マリベル相手には情欲を覚えないから安心である。


さて、ステータスを確認してみるか。


【ステータス】

名前:リュカ・フォン・ヴァルクレイン

年齢:6

職業:祈祷師(巫女)

レベル:1

力:8

速さ:20

体力:13

魔法力:114

神聖力:179

闘気力:4

知性:91

スキル:

・祈祷

・老化軽減 0%

・投擲

スキルポイント:10


巫女レベル40のときと比べて、ステータスがだいぶ落ちている。

そして新スキル――祈祷。


……なんか、祈りと同じ匂いがするな。


試しに発動してみる。


そして、遠のく意識。


やっぱり同じかい!


     ◇


翌朝、いろいろ考える。


まず、ステータスの減少。


たしかに下がっている。

だが、巫女レベル1のときよりは高いような気がする。


転職によってステータスが下がるのは一般的なことなのか。

そこはまだよくわからない。


次に、祈祷師の後ろに続く**(巫女)**である。


このへんは、武闘家に転職したであろうレオン兄にいろいろ聞いてみたい。


さて、もう一つの問題はスキルだ。


まず、消えたスキル。

祈りと予知が消えている。


一方で、老化軽減と投擲は残っている。


投擲は努力で取ったスキルだから、職業と無関係でも納得できる。

だが、老化軽減は?


さらに、この老化軽減には別の謎がある。


取得可能スキル:老化軽減 0%


……え?


また?


普通こういうの、ここで10%とかになるものでは?


そもそも、老化軽減が10%になったらどうなるんだろう。


十一歳で十歳の肉体?

二十二歳で二十歳?


……うむ。あまり美味しくないな。


老化軽減。

老化軽減。


何のためにあるんだろう、これ。

転職しても消えないし。


などと、ステータスを出したまま頭の中で老化軽減、老化軽減と唱えていたら、いつの間にか取得していた。


・老化軽減 0%

・老化軽減 0%


しまったー!


     ◇


レオン兄が裏庭で蹴りの練習をしていたので、声をかける。


「ああ、転職したては大変だったぜ。体に全然力が入らないし、すぐ疲れるし。レベルが上がれば違和感は消えるそうだがな」


そう。

レオン兄は武闘家になってから、まだ十分なレベル上げができていない。


とにかく、ギルベルト父もフリーデガルト母も忙しすぎるのだ。


ステータスを聞いてみたが、教えてくれなかった。


「普通は家族にも秘密って言っただろ」


ケチ。


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