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第17話 ゴブリン討伐

そんな話をしながら歩いているうちに、ゴブリン目撃現場へ到着した。


探すまでもなく、すぐ見つかる。


……あれ?


七匹いるんだけど。


「いくわよ!」


マリベルが前に出る。

マリベルさん、やっぱりあなたがリーダーなんですね。


ゴブリンたちもこちらに気づき、ナイフやこん棒を手に走ってくる。


マリベルは一番大柄な個体へ向かって剣を振るった。

一刀両断――とはいかない。そいつは後ろへ下がり、代わりに二匹のゴブリンが両側から迫ってくる。


リーゼのほうを見ると、こちらも三匹に囲まれていた。


となると、一匹余るわけだが。


……やはりというか、そいつは俺のほうへ来た。


ナイフ持ちだ。

こん棒じゃなくて少しほっとする。


「速さ」のステータスが高いおかげで、動きは見えている。


俺はナイフを持つ手の指を狙ってショートソードを振り、すぐにバックステップした。


三本の指を切り落とされたゴブリンはナイフを落とし、悲鳴を上げる。

その横手へ回り、頸動脈を切り裂く。


一角ウサギやマッドドッグで鍛えられているおかげで、一匹なら対処は問題なさそうだ。


マリベルのほうを見る。


大きめのゴブリンと対峙している。

他の二匹はすでに切り捨てたようだ。


リーゼのほうは一匹がのびていて、残り二匹と戦っている。

ふむ、一匹は片目が見えてなさそうだ。


俺はそのゴブリンの死角へ回り、首を狙ってショートソードを振る。


ガツ。


ショートソードは頸動脈を切断し、頸椎で止まった。

振り抜けない。


俺はすぐに剣を手放し、バックステップで距離を取る。


そのゴブリンは、こちらを振り返ったあと、地面に倒れた。


残った一匹はリーゼが水面蹴りで足を刈り、そのまま首に蹴りを入れてとどめを刺した。


「リュカ君、ありがとうね」


血のついた靴を嫌そうに見下ろしながら、リーゼが礼を言ってくる。

マリベルのほうも終わったようだ。


「そこはまず、姉を助けに来るべきじゃないの~」

とマリベル姉。


「マリベルは余裕そうだったから」


「そんなことないわよ。ほら、見て」


左腕に、浅くはない傷を負っていた。

俺はすぐに癒しの手を発動し、傷を閉じる。


「乙女の柔肌が~」とか言っているが、無視である。


「私もお願いしていいかな?」


と、リーゼが服を少しめくって言う。どうやら打撃を受けたらしい。


頭の中で「欲情退散」と唱えながら治療する。

夏真っ盛りで、リーゼは薄着だ。目のやり場に困る。


「リュカ君、ちゃんと戦えてるじゃない」


「一匹だけなら、なんとかね」


ゴブリンの首からショートソードを引き抜きながら答える。


……あれ、少し刃こぼれしてる。


「じゃあ次は二匹ね!」


マリベルさん。

後衛には一匹も通さない覚悟でお願いします。


     ◇


ゴブリン討伐は、千七百ギルの収入になった。


ただし、いろいろ差し引かれて俺の取り分は三百ギル。

今回は薬草を探す余裕がなかったが、次からはそっちも頑張ろう。


刃こぼれしたショートソードはマリベルが回収していった。


領兵の駐屯地で、破損・要修理の窓口に出せば綺麗になって戻ってくるらしい。


「研ぎに出したら利益が減るわよ」


それはダメなやつです。


家の中は、なんとなくぎこちない。

だが、カスパルが放逐されたりはしていないようだ。食卓には顔を出さないが、食事はメイドが部屋まで運んでいるらしい。


カスパル、ニート道に入るのはちょっと早くないか?


夜中。

いつもの「祈り」のために一度起きる。


さて、祈るか――と思ったとき、部屋の外から音が聞こえた。


なんだろう、と扉を開けて様子を見ると、ロッテが盆に食事を載せてカスパルの部屋へ入っていく。


いや、部屋に食事を運ばせてるって聞いてはいたけど、それをよりによってロッテにやらせる?


メイド間のいじめか?


しばらくして、部屋の中からロッテの聞いてはいけない声が聞こえてきた。


……これは聞いちゃダメなやつだ。


俺は部屋へ戻り、考える。

だが、何がどうなっているのか、さっぱりわからない。


よし。

こうなったら思考放棄だ。


「祈り」を唱え、とりあえず気絶睡眠に入った。


     ◇


翌朝。


やっぱり納得できなかった俺は、父にどういうことか聞いてみた。


「ああ、実はロッテが揉めてな。契約では“可”のメイドだ。だが、それは嫡男前提であるはずだと主張している。金で解決しようにも、うちは今かなりの金欠でな」


来月、いよいよエレノア姉が嫁入りするらしく、出費が多いらしい。

結納金は出るが、それでも支出のほうが多くなるだろうとのこと。


それにしても、ロッテ。

意外とたくましい。


「幸い、まだレオンの嫡男指名はしていない。そこで、カスパルも嫡男候補だから、厳密には契約違反ではない、ということで押し通した」


いや、それはかなりグレーなのでは?


「でも、カスパルを嫡男指名するつもりはないんでしょ? ロッテだって、それくらいは気づいてると思うんだけど」


「いや、実際の指名までは何とも言えん。レオンに上級貴族から婿入りの打診があるかもしれんし、戦場では何が起きるかわからん。領主になるには合計三年の軍務経験も必要だ。それに……」


父はそこで言葉を切った。


領主になるには軍務経験が三年?

聞いてないんだけど。


……まあ、五男にはたぶん関係ない話だな。


「十年ほど前、ある貴族家で似たようなことがあってな。それは三男だったんだが、長男、次男、四男と次々に病に倒れ、三男が家を継いだ」


嫌な話の入り方だ。


「さすがに不審に思った王家が調査を行ってな。三男と関係のあったメイドによる毒殺だと判明した」


そう言って、父は俺に小さな包みを渡した。


「弱めた毒薬だ。一日一包。これで毒耐性を鍛えておくといい。もちろん、これはレオンとユリウスにも渡してある」


ちょ、怖いんだけど。


     ◇


翌週、マリベルは家を出た。


俺も部屋を見に行ったが、意外と広めだ。


「ギルドから遠いけどね。いずれメンバーも増やしたいし」


たまに家にも帰ってくるらしい。


「武器のメンテもあるし」


ちゃっかりしている。

さすが姉である。


三人での討伐依頼も受けている。

マリベルは、たまにゴブリンを二匹後ろへそらすようになった。


絶対にわざとである。


リーゼはたまに、無手の戦い方を教えてくれる。

基本はリーゼとの組み手だ。もちろん、向こうはかなり手を抜いている。


「ヒップ・アタ~ック!」


それ、絶対に武闘家の戦い方じゃないでしょ。


     ◇


次の週、父が王都へ向けて出発した。


そう。エレノア姉の嫁入りである。


今回は出産からまだ日が経っていないため、セシリア母は欠席だ。

王都社交では失言に気をつけるよう、セシリア母にきつく釘を刺されていた。


父、社交は苦手らしい。


さらに二週間後。


今度はフリーデガルト母が、レオンを連れてローゼンフェルト領へ帰省することになった。

西の砦付近では、すでにレオンのレベル上げ効率が悪いらしく、ローゼンフェルトの迷宮でレベルを二つ上げ、天啓の儀に挑むのだとか。


ローゼンフェルト出発の日、セシリア母がフリーデガルト母に、


「私に何かあったら、子どもたちをよろしくね」


と言っていたのが、妙に印象に残った。


普通、旅に出るほうが言う台詞なのでは?


それにしても、家が急に居心地悪くなった。


父とフリーデガルト母がいなくなると、カスパルが部屋から顔を出すようになったのだが、これがまた妙に偉そうなのである。


「俺が次の領主だからな」


と、こちらを見下ろしてくる。


……もしかして俺、もう毒盛られてる?


自然と家を出て、マリベルたちとの冒険者活動に精を出すことになる。


家が居心地悪いのはユリウス兄も同じようで、ヴァイス商会の手伝いに入り浸っている。

俺は週に十二本、ヴァイス商会へポーションを卸しているので、商会の人たちにもだいぶ顔が売れてきた。


今日も納品に行くと、商会の主人オスカーが出てくる。


「いらっしゃいませ。ああ、リュカ様ですか。今日も納品ですか?」


「はい、いつも通り十二本です」


通常、冒険者が商会へ直接商品を納品することは少ない。


ポーションの場合、普通は薬草などの素材を冒険者ギルドへ納品し、薬師ギルドが冒険者ギルドから素材を仕入れ、薬師は素材を薬師ギルドから購入する。

大きな工房は出来上がったポーションを直接商会へ持ち込むが、個人や小規模工房は薬師ギルドへ売却する。

商店は薬師ギルドから買う場合もあるし、商業ギルド経由で買う場合もある。


場合によっては、間に四回もギルドを通るわけだ。


俺が自分で作ったポーションを自分で売れば、いちばん利幅は大きい。

だが、さすがに路上でポーションを売るのは面倒である。


ヴァイス商会はもともと食品メインだったが、薬師ギルドが投げ売りしていたポーションを自社の流通網で南部へ流したら、そこそこ儲かったらしい。

そのため、最近は試験的にポーション商売も始めていて、俺からも買ってくれているのだ。


「日持ちする小麦なんかがいちばん安全なんですけどね。やっぱり利幅は小さい。売れれば儲かるけど、ポーションは難しいですね」


たしかに。


消費期限までに売らないといけないし、運搬中の破損もある。

だから、ポーションは基本的に地産地消だ。


ただ、ヴァルクレイン領は薬草が近場で採れるため、ポーション単価が安い。少し運ぶだけで利益が出る。

その意味では、王都は需要が大きく供給が少ないので魅力的だが、王都は大手ギルドがひしめいていて、ヴァイス商会が入り込む余地は少ないらしい。


「中級ポーションなんかどうですか?」


そう。

ここからが本題だ。


少し前、マリベルたちと討伐依頼をこなしていたら、たまたま中級ポーション素材を見つけた。採ったら早めに処理しないといけない素材なので放置してきたが、買ってくれる場所があるなら採らない手はない。


「何本くらいでしょう?」


「二十四本でどうでしょう?」


「いいでしょう」


少し考えたあと、オスカーさんはOKしてくれた。


単価と納期を決め、ヴァイス商会をあとにする。


……よし。


次は中級ポーションだ。


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