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第15話 採取依頼

最近、マリベルは俺とつるむ時間が増えている。


カスパルはというと、ここしばらく部屋にこもることが多くなった。

本来ならエレノア姉が使っていた個室はマリベルが使うはずだったのだが、いつの間にかカスパルに占拠されていた。マリベル自身もあまり気にしていないらしく、俺と一緒に子供部屋で寝起きしている。


とはいえ、今や子供部屋を使っているのは俺とマリベルだけなのに、まったく広々とはしていない。


なぜなら――


俺が買った二千四百本の薬瓶が、部屋の一角を占拠しているからである。


邪魔である。

実に邪魔である。


だが、自分で買った以上、文句のぶつけ先がない。


そんなわけで、今日はマリベルと採取依頼だ。


将来は薬師でも悪くないかな、などと考えている俺としては、薬草にじかに触れられるこういう依頼はかなりありがたい。依頼料は安いけど。


薬草採取なら、だいたい三十本で二十ギル。

移動時間も含めると四時間ほどかかる。日の出とともに出発して、日暮れ前に帰るとして、日給四十ギル程度。


Fランクで独立は無理すぎる。


まあ、五歳児の小遣い稼ぎとしては悪くないのか?

マリベルは十二歳だが。


中学生の小遣いが三千円だとして、七、八日で稼げる額か。

スタバも課金ゲームもないこの世界では、中学生の小遣い稼ぎとしてもそこまで悪くないのかもしれない。


ちなみに、マリベルは薬草の見分けがまったくできない。

薬草が生えていそうな場所も知らない。


そこで、俺の出番となる。


クララさんから薬草の見分けは教わったし、生える場所もだいたい聞いている。

こういうとき、知識は強い。


「リュカ、来たわよ」


そう。採取依頼では魔物との遭遇もある。


マリベルが指差す先を見ると、角の生えたウサギがこちらへ向かってきていた。


角ウサギ。


ラノベだと、思ったより速くて初心者を殺しかけるやつである。


マリベルは剣を鞘から抜かず、向かってくる角ウサギの側頭に鞘をぶち当てた。


ごっ。


角ウサギ、一発で気絶。


そのままマリベルは拾い上げ、素早くナイフで首を切る。


「角は無傷で倒すようにね。買取価格がかなり下がるの」


なるほど。

そういう現実的な話、大事。


この採取依頼において、マリベルはただの護衛役ではない。


「次はリュカよ。ほら、来た」


そう、俺も木刀を持たされている。


今の筋力で金属剣を振るうのは、まだ無理がある。

ただ、速さのステータスはそこそこあるので、一角ウサギの動きを見切るのは難しくない。


コン!


軽い音がして、木刀は一角ウサギの側頭部に当たる。

しかし、軽い木刀と非力なステータスでは、気絶させるには足りない。


角ウサギはほとんど効いた様子もなく、再び突っ込んでくる。


ガン!


もう一度、側頭部を狙う。

だが、今度は変な角度で入ってしまった。少し手が痺れる。


角ウサギは着地し、またこちらを狙う。


やばい。


体勢が悪い。

このままだと食らう――


ドン!


そのとき、マリベルのフックが角ウサギの頬に入った。


角ウサギ、吹っ飛ぶ。


「もう、ダメじゃない。リュカは一発で倒せないんだから、次の動きも考えながら攻撃しないと」


マリベルさん。


もうそれ、剣いらないんじゃ?


結局、この日の一角ウサギは計四匹。

マリベルが三匹で、俺が一匹扱いである。実際はほぼ介護付きだが。


薬草採取の報酬と合わせて、四百四十ギル。


マリベル、ほくほく顔である。


     ◇


その夜、夢を見た。


夢とは思えないほど、やけにリアルな夢だった。


夢の中では、母――セシリアが棺の中に横たわり、父はむせび泣いていた。


嫌な夢だ。


恐ろしく生々しかった。

だが、しょせんは夢。現実は現実で続いていく。


     ◇


苦戦していた土魔法だが、ようやく発動した。


五歳ともなると、さすがに抱っこも肩車もねだりにくい。

なので最後は、コンラートに普通に教えてもらっていた。


「ぼっちゃん、おめでとうございます」


さすがに、ここまで来ると隠せない。


風・水・火の生活魔法が使えることはまだばれていない。

なので表向きには、「土魔法に適性がある」ということになった。


ちなみに、癒しの手は生活魔法ではない。

というか、魔力依存ではなく神聖力依存なので、そもそも魔法ですらない扱いらしい。


ノーカウント。

便利なのに、制度上は不便である。


「うむ。土魔法の使い手は軍では重宝されるぞ」


バレット! とか叫んで土の弾丸で無双するのだろうか。

それはそれで格好いいな。


「輜重隊に土魔法士は不可欠だからな」


……はい?


聞けば、馬車による物資輸送中、不具合が出た道の補修で重要な役目を負うらしい。

特に王国と帝国では馬車の規格が違い、王国仕様に轍を整備するのは戦略上かなり重要なのだとか。


「あと、城壁の補修や架橋、簡易的な隊舎の建造でも重宝される」


土建業か!


俺つぇー、どこ行った?!


     ◇


今日はマリベルに「紹介したい人がいる」と言われて、ギルドへ連れて来られた。


「あら、この子がマリベルの言ってた子? 可愛いじゃない」


マリベルと同じく冒険者で武闘家、Fランク。

そしてマリベルと違って――いや失礼、かなり素直に可愛い子だった。


名前はリーゼ。

マリベルと同い年らしい。


採取依頼で、必要な薬草がわからず困っていたところを、マリベルが「知り合いに詳しい子がいる」と言って、俺を紹介する流れになったようだ。


「やっぱりね、今後を考えると前衛は二人は欲しいのよ。カスパルは今あんな感じだし。リュカは無職でも、癒しの手が使えるし、治癒役としては十分よ」


いや、勝手に俺をマリベルのパーティー構想に組み込まないでほしい。


だが、マリベルに逆らえるはずもなく、三人でパーティー登録することになった。


「少しは戦えるの?」


リーゼが聞く。


「非力だけど、目はいいわ。ここらの魔物なら、後ろにそらしちゃったとしても、瞬殺はされないと思う。後ろに魔物をそらさない前衛の動きを練習するには良いんじゃないかな」


後ろにそらさないでください。


一角ウサギでも普通に怖いんだから。


実際、パーティーでの採取依頼は順調だった。


ただし。


「後衛のバックアップ練習」とか言いながら、犬型の魔物マッドドッグをわざと後ろへ流すのはやめていただきたい。


リーゼは気さくで話しやすい性格だった。

マリベルと気が合うのも納得できる。


「庶民の中では、武闘家は当たりの職よ。戦士より高評価。やっぱり、戦士は武器と防具にお金がかかるからね。どっちもメンテが欠かせないし」


なるほど。


一番人気の職はモンクだそうだ。


低ランクのうちは戦闘で稼げて、ある程度レベルが上がったら治癒術やポーション作成で比較的安全に稼げる。引退後も小銭が稼げる。


そりゃ人気だ。


ただし、モンクは非常に出にくい職らしい。

闘気力、魔法力、神聖力、知力がどれも、ある程度なければ駄目だという。


ヴァルクレイン家では、モンクは「中途半端」として低評価だ。

だが、場所が変われば評価も変わるらしい。


……やっぱり、家の中の常識だけで世界を見ちゃいけないな。


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