第103.5話 チェリーの独り言
リュカ君は夏休み、あまり王都にはいないらしい。
北の方にある領地へ遊びに行ったり、故郷の領へ帰省したり。
ベネットは今から拗ねている。
本当は引き止めたいんだろうけど、それを堪えてるのが丸わかり。っていうか、頻繁に愚痴られている。
「寂しくなるよ~。本当は毎日リュカ君に会いたいのに~。帰省はしょうがないと思うよ。でもさ、北の温泉地に遊びに行くって。絶対女の子と一緒よ」
それはどうなんだろう?
◇
ベネットは既にリュカ君にベタ惚れだ。
隠そうともしていない。
私たちはインキュバスの嫁。体では繋がれないから、余計に恋心が募るのかもしれない。
私は、どうなんだろう?
リュカ君には感謝している。
二度も命を救われたし、今、生きていけているのもリュカ君のおかげだ。
そう考えると、一生かけて返さないといけないほどの恩だ。
健康体なら、リュカ君に尽くしているだろう。
でも、あと数年で死んでしまうこの身では、もう仕方ない。
いや、たぶん私は感情を高ぶらせることを避けているんだろう。
◇
私とベネットは、実はそこそこ仲が良い。
感情をあけっぴろげに表に出すベネット。クールに見せている私。
よくしゃべり、よく笑うベネット。無口な私。
でも、私たちは案外相手のことをわかっている。
何回か一緒に買われて、いろいろした仲だしね。
私だって女の子だ。
こうなる前は夢も見た。
いつか、私のことをわかってくれる貴族が私に恋をして。
もちろん、正妻なんて夢にも見ない。でも、私のことを正妻よりもかまってくれるような旦那様と出会う。
いや、周りの女の子と同じようなミーハーな夢だとはわかってるんだけどね。
◇
ベネットはリュカ君とそうなることを夢見ている。
もちろん、何らかの奇跡で健康体になって、だ。
それって、奇跡×奇跡な出来事だよ。
神様にそんなことを願ったら、腹を抱えて笑われるよ。
◇
ベネットは何だかんだいって優しい。
毒の摂取で弱っている私をよく介抱してくれる。
食事も、見た目はイマイチだが、味はかなり美味しい。
それこそ、客と入った高級レストランの味を超えるほどだ。
私とクララさんに毎食、かいがいしく作ってくれる。
普通の庶民として生きていけてたら、良い奥さんになっただろうな。
いつまでもベネットだけに食事を作らせているわけにもいかないし、最近、料理を習い始めた。
すると、意外と食材の切り方とか、スパイスの配合とか、火の入れ方とか、気を付けていることがわかった。
適当に料理してるように見えてたのにな。
◇
ここから二か月、リュカ君がいない日々だ。
仕方がない。
愚痴くらいは聞いてあげよう。




