第103話 期末テスト
さて、来週には期末テストだ。
勉強は、ほどほどで良い。上位を目指しているわけではないので、留年しないだけの点数が取れれば問題ない。
授業も午前中で終わり、各自図書館や寮で勉強する。俺は研究室で勉強だ。意外と広いし、静かだし、飽きたらカビの状態も見られる。
アオカビの培養は悪くない感じだ。今回は雑菌の混入が見られない。培養は成功と見ていいだろう。
だが、ここからは簡単ではない。まず、菌体と培養液を分離しなければならないが、布で濾したくらいでは分離できない。やはり、ここは遠心機が必要か。一応、手回し遠心機を作るという手もあるが、非力な僧侶の腕力ではきつそうだ。武闘家あたりなら楽々やれそうなんだが。
次に考えなければならないのは冷蔵庫だ。ペニシリンは熱に強くはない。室温ですぐに壊れることはないらしいが、できれば冷やしておきたい。冷蔵庫があれば、アオカビのプレートも保存できるしな。冷蔵庫は古代魔道具に期待だ。冷凍庫もあればベストだが、高望みはするまい。
◇
ジェニファーも研究室で勉強している。
「香り付きの方の石鹸、お母さんにバレちゃって消費が早いの。テストが終わったらまたアロマ液を作らなきゃ」
夏休み後半はヴァルクレイン領で魔物狩りじゃなかったっけ?
「わかってるわ。リュカは前半、ヴァルムクヴェル領でしょ。その間に作っておくわ。作りたい香りも決まってるの」
前に使った花はもう咲いてないからな。何か別の花を使うんだろう。
「油は提供するよ。俺の分も作っておいてくれ」
「もちろんよ。楽しみにしてて」
同じ香りをさせてると情事を疑われるぞ。
◇
「や、やぁ、リュカ君。ほ、ほら。できるようになったんだ」
ライオネル君、こんなテスト前に魔法力を回転させる練習か?
魔力を回転させることができるようになったらしく、水球が綺麗に回転している。素晴らしい。
「逆回転は?」
「え?」
「どの方向に回転させれば良いのかわからないから、逆回転もできるようになった方がいいと思う」
俺は水球を時計回りに回し、それを止めてから反時計回りに回す。
「あと、強化したい筋肉に回転する魔力を通すわけだから、右腕だけできても駄目だろう」
俺は右腕で時計回り、左腕で反時計回りに水球を回す。
「人体には四百本の筋肉があると言われてる。もちろん、全部の筋肉に回転する魔力を通す必要はないけど、腕だけでなく、せめて脚にも通せるようになっておいた方がいいぞ」
これは俺もできない。俺も練習しておいた方がいいな。魔力を二本の線にする方は肩を過ぎ、もうすぐ終点の丹田だ。いずれ終わるだろう。
「夏休みの間、修行しておくよ」
◇
週末はいつものルーティーンだ。
まずはベネットとチェリーの部屋に行ってみる。
「あ、リュカ。来てくれてありがと」
なんか、ベネットもチェリーも元気がないな。
「毎日毒を飲んでいるんだ、元気がなくなって当然だ。猛毒を飲んでピンピンしている方が異常なんだからな」
クララさんから指摘されてしまう。
「たぶん、毒による体内ダメージは、その非常識な神聖力によって勝手に治療されていたんだろう。今も闘気力上昇薬を飲んでも問題ないんだろう?」
闘気力上昇薬なんて名前になったんだ。
「特に体調に変化はないかも」
ステータスは、若干闘気力が上がっている気がする。レベルアップだけではここまで上がらないだろう。現在のステータスはこんな感じだ。
名前:リュカ・フォン・ヴァルクレイン
年齢:13
職業:僧侶
レベル:10
力:27
速さ:71
体力:40
魔法力:561
神聖力:883
闘気力:30
知性:210
スキルポイント:0
・老化軽減 10%、老化軽減 0%
・投擲
・毒無効
・気配察知
・隠密
・スラッシュ
・啓示
レベルが十になってスキル『啓示』が取れるようになった。これも予知系だったので取得しておいた。あと、せっかく今まで老化軽減を取ってきたので、今回も取得することにする。その代わり、スキル『治癒』はパスだ。僧侶の『治癒』でできることは癒しの手で代替できるし。
授業で習ったが、予知系スキルは重複することで予知の精度や予知できる期間などが重なるらしい。例えば、戦士の『直観』は直後のこと、『虫の知らせ』はその日のことを、巫女の『予知』は数か月以上先のことを予知するが、これらを取れば直後のことも、その日のことも、数か月以上先のことも予知できるようになる。また、期間が重なれば予知精度が上がる。例えば、戦士の『直観』も武闘家の『ひらめき』も直後を予知するが、両方取ると精度が上がるらしい。まぁ、それほど人気のスキルでもないから、あまり検証されていないようだが。
僧侶の『解毒』スキルは取らなくても、ファルマチータさんが解毒ポーションを作っているときの神聖力の動きを真似ればどうにかなりそうなんだよな。すぐにできるようにはならなそうだが、このまま解毒ポーションを作ってもらっていけば、いずれ俺も可能になるだろう。
◇
そんなこんなで、期末テストだ。
今回は夏休みに用事が入っている。赤点を取って夏休みに補習なんていうことにならないよう、ちゃんと勉強している。
幸い、解毒の治癒力を薬液に込めるファルマチータさんもテスト勉強で忙しく、解毒ポーション作りはないため、時間には余裕がある。
俺は特に問題もなく、期末試験を終えた。
◇
期末テストを終えると、結果が出るまで三日間の休みだ。
まずは、休暇前にやっておくべきことを終わらせておこう。
まずは日の出前から森ダンに入り、素材集めだ。今回は中級解毒ポーションの素材以外にも、初級ポーションの材料も採取する。
解毒ポーションは金策のためだが、初級ポーションはスラム民用だ。スラムの人たちの治療を請け負っておきながら、夏休みの間は放置ではジェニファーに顔向けができない。
翌日、さくっと初級ポーションを作成し、次にスタンダー君と共に中級解毒ポーションの薬液を作る。
「ほう、今回は四十本か。これで夏休みの食費は安泰だな。リュカはまた神聖力の流れを見るんだろう? 好きにしてくれていいぞ。さっさと終わらせようか」
ファルマチータさんは片手に薬液が入った瓶を持ち、投げやりに両手を広げる。
せっかくなので、丹田のあたりと背中上部をしっかりと探る。
やはり中級だと神聖力の動きも大きく、わかりやすい。
なんとなくわかってきたので、今度試してみよう。
◇
次はベネットとチェリーだ。
前よりは元気かな?
庶民の学校については、王都では夏入学と冬入学があり、彼女たちが通う学校は夏入学だ。
俺の夏休みが終わる頃に入学となる。
「前もって少し勉強しておくといいよ。せっかくクララさんがいるんだし」
読み書きや計算は学校で習うが、期間が一年ということもあり、かなりのハイペースになる。
予習しておいた方がいいだろう。
「そのことについてなんだが、いくばくか家庭教師代をもらえないだろうか?」
「え? そんな、リュカに悪いよ。アタシ達が払うから」
「学校入学をお願いしたのは俺だし、俺が払うよ」
さて、いくらくらいが相場だろう?
住み込みの家庭教師とか高そうだが、食と住を提供してるわけだし、クララさんの出費はあまりないはず。
「月に一万ギルでどうだろう?」
「助かる。前払いでいいか?」
クララさんにお金を払う。
何に使うのかな?
◇
三日目はジェニファーに初級ポーションを渡し、スラムの人たちを治療する。
「ポーションは明日、学校で渡してくれても良かったのに」
「ポーション三十本は、さすがに重いでしょ。スラムの人たちに、どういうときに使うか教えておいて。夏休み後半はジェニファーも留守にすることになるし」
夏休み後半はジェニファーとヴァルクレイン領だからな。
その間はスラムの人たち自らポーションを使ってもらうことになる。
「売ってお金に換えたりしなければいいけど」
さすがに、そんなことをしたら見捨てるでしょ。




