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第102話 夏休みの予定

「私は部屋に戻ってるよ」

次はベッドを買う予定だが、ナマーテさんが言っていた「借金取りがまだ探している」という言葉が効いたのだろう、クララさんは部屋に戻ることにした。

商業街でベッドを注文し、ほかに必要な布団や台所用品なども購入する。

「ベネットとチェリーの服も買おうよ」

この二人、ずっと同じ服を着てるもんな。

「別にいいわよ」

「いや、学校に通うんだし、三着くらいは必要でしょ」

二人を連れて服屋へ行く。

「これなんてどうかな?」

胸元はもちろん、パンツも見えてるぞ。

放っておくと娼婦ルックの服を選んでしまう二人に駄目出しをしつつ、できるだけ無難な服を選ばせる。

「こんな服、退屈じゃない?」

退屈でいいんです。


     ◇


部屋に戻り、買ったものを広げる。

「ベッドは明後日届くから」

「アタシの服はないのか?」

ヴァルクレインから持ってきているのがあるでしょ。

ほかに必要なら、自分で買ってくれ。

「いや、お金は今朝、全部使ってしまったじゃないか」

仕方ない。五千ギルほど渡す。

「さて、ではリュカは今日の分を飲んでもらおうか」

今日の分の闘気力ポーションを飲む。昨日より量が多い。

しばらく待ち、体調に変化がないことを確認すると、クララさんは俺に薬瓶を渡してくる。

「大丈夫そうだな。なら、今から五日間、ここに書いてある分量を飲んでいってくれ。お前たち二人は昨日の毒を、昨日の倍量だ」

クララさんはベネットとチェリーの毒耐性獲得にも協力してくれている。

もっとお金を渡しても良かったかな。

でも、ギャンブルに使われる可能性も警戒しないといけない。


     ◇


次はジェニファーのところだ。

「あ、リュカ。まずはスラム巡りに行こうか」

スラム二か所を巡り、治療をする。南東のスラムにも顔見知りができ始め、スムーズに進む。

治療を終え、ジェニファーの家へ向かう。

「ほら、石鹸できたの。いい香りでしょ」

アロマを入れた石鹸も、全てではないが固まり、香り付きの石鹸が完成した。

「あまり大量に作るつもりはないわ。自分達で使う分だけね。石鹸の生産と販売は貴族の既得権益だから。ちゃんとリュカの分も作るわよ」

アロマ水作りの方が大変なんだよな。

ジェニファーは研究室でそればっかりやっている。

魔道具の研究はどうなった?

「お風呂魔法の方もだいぶ上達したわ。水の量はまだリュカほどじゃないけど、毎回全身を洗う必要もないしね。髪の毛が一番大変かな。すすぎに多めのお湯が必要なのよ」

ジェニファーの髪はロングだからな。

洗うのが面倒だからショートにする、というつもりはなさそうだ。

「というわけで、お風呂魔法をお願いね」

既に湯あみ着になってるから、そうだと思ったよ。今日の湯あみ着は小さめだ。もうジェニファーも慣れて、見られることに抵抗がなくなったのかな?ジェニファーにお風呂魔法を使ってあげるのも、そろそろ終わりだろう。

せっかくなので、お湯の量を倍にしてあげた。日々の入浴で、お風呂魔法の技量が上達しているのだ。


     ◇


「週末、朝から晩まで頑張って、解毒ポーション完売だよ。で、中級解毒ポーションの問い合わせが増えてるんだ。しかも、値が上がってる。今なら中級解毒ポーション一本で三千九百ギルだ」

スタンダー君、朝から元気だね。

中級解毒ポーションは興味あるけど、値段だけで判断するのは難しいぞ。

「素材は何階層くらいまで潜れば集まるんだ? それ次第だと思うんだが」

「ちゃんと調べておいたぜ。二十七層だ」

ソロで行けるっちゃ行けるが、採取もしなければならないことを考えると、時間的にちょっとキツいか?

ダンジョン探索では何が起きるかわからない。前回も途中でミニボアに遭遇したせいで、ずいぶん遅くなってしまった。

「ソロ日帰りだとギリギリだな。儲けは一本で千百ギルくらいか。戻る途中に下級解毒ポーションの材料も採取すれば、美味しいっちゃ美味しいな。でも、帰りはかなり遅くなるぞ」

「確かに、前回は大変だったね。翌日授業があるのに、ほぼ徹夜は避けたい。休みの初日に潜るのはどう?」

こいつ、自分のことしか考えてないな。

「あとはファルマチータさん次第だね。放課後、会いに行ってみようか」


     ◇


「普通のポーション同様、解毒ポーションも初級だろうが上級だろうが、込める治癒力は同じさ。ただ、込めるときの抵抗が違うだけ」

「知ってるだろうけど」という前置きのあと、ファルマチータさんは教えてくれた。

そういえば、ポーションのときもそんな感じだったな。

「私も中級解毒ポーションは作ったことはないんだが、たぶん可能だとは思う。あとは成功率だね」

ポーション作成では、治癒力の通りが悪くなるほど難易度も上がる。

俺の最初の頃は上級ポーションの成功率は五割くらいだった。

今は九割を超えてるけどな。

つまり、練習次第で成功率は上がる。

ただ、失敗すると薬液が無駄になるのが痛いだけだ。

「薬液が完成したら連絡して」

期末試験が近いとかで、ファルマチータさんはそそくさと去っていった。

そういえば、俺たちも期末試験が近いな。


     ◇


嫌な期末試験さえ終えてしまえば夏休みである。レスカが話しかけてきた。

「リュカ君、夏休みの予定は決まった? 私は夏休みが始まったら、すぐに実家へ向かうつもりなんだけど」

夏休みはレスカと共にヴァルムクヴェル領へ遊びに行くことになっている。準備もあるし、早めに決めた方がいいだろう。

「ジェニファーと一緒にヴァルクレイン領へ行く予定もあるんだ。夏休みが始まってすぐにヴァルムクヴェル領へ行って、後半は実家かな」

「あら、ジェニファーさんと? お嫁さん候補の顔見せ?」

「いや、そんなんじゃないよ。ジェニファーは魔法使いの職を得たんだけど、ここらじゃレベル上げができないって。ほら、学生はダンジョンに入れないから」

そういえば、スタンダー君は俺がダンジョンに入っていることに何の疑問も持ってなかったな。自分で潜ろうと思わない限り、あまり気にしないものなのかな?

「そっか。ヴァルクレイン領なら確かに。魔物を狩ってレベル上げ、確かに面白そうね。私も行っていいかな?」

レベルが上げられるということは、何らかの職を持っているということだ。

前衛職ならかなりありがたい。

「前衛職がいなくて困りそうだったんだ。俺が回復役でジェニファーが魔法使いだからな。レスカは前衛職?」

「私も魔法使い……」

レスカは目をそらしながら言う。

魔法使い二人と回復役一人。

これはかなりバランスが悪い。

「本当なら、前衛職が二人くらい入ると安定するんだが。レスカ、知り合いに前衛職はいない?」

「お姉ちゃん達は前衛職だけど、軍の休暇はそこまで長くないから無理ね。あなたのルームメイトはどう? スティーブだっけ?」

「スティーブは無職だったと思うけど、一応前衛職を目指しているみたいだな。せっかくだから誘ってみようか」


     ◇


「夏休み? 特に用事はないけど。チャンブリー領に帰る予定もないし」

「実はさ、夏休みの後半、ジェニファーとレスカがうちの領で魔物を狩ってレベル上げする予定なんだ。でも、前衛職がいなくて困ってて。スティーブは前衛職を目指してるんだろ?」

「ジェニファーはいいとして、レスカって誰だっけ?」

レスカ、覚えられてないぞ。レスカはあまり目立たないからな。俺も全女子を知ってるわけじゃないし、そんなものかもしれない。でも、どう説明したらいいんだろう?

「ほら、髪の毛が肩くらいまでの赤毛でさ、特にどの派閥にも入ってなくて」

「?? まぁ、いいや。ジェニファーが魔法使いなのは知ってるけど、そのレスカの職は何なの?」

「同じく魔法使い。俺が回復役だから、魔法使い二人と回復役になって、バランスが悪いんだ」

「う~ん、わかった。行くよ。ずっとここにいても誰もいなくなっちゃうから、退屈だしね」


一応、前衛役確保だ。

あまり危険なところへ行かなければ、スティーブでも大丈夫だろう。


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