第92.5話 女子寮でのガールズトーク
「でさ、リュカ君ってどうなの?」
女子寮の夜は、テスト前でもない限り、誰かの部屋に集まって四方山話に興じることが多い。
最近はだんだんメンバーも固定され始めている。私は、いわゆる“中立派閥”とみなされている。
アレクシア様の派閥が最大勢力だが、実は第三王子に密かに憧れている女子もいる。これが第二勢力だ。この二つの勢力以外が“中立派閥”とみなされているが、特に派閥を作っているつもりはない。
ただ、アレクシア様の派閥に合わず、第三王子にも興味がないだけだ。
◇
「さすがに田舎の子爵家はね~。ヴァルクレイン領って南西の外れよ。町中に魔物が走り回ってるって話だし」
最初、リュカ君は平民だと思われていた。最初の自己紹介も変だったし、服装もいかにも冒険者っていう感じだった。
ちなみに、今では服装も改善され、裕福な庶民か男爵くらいに見える格好をしている。リュカ君が実は子爵家の出身であることは、すぐに広まった。
本人はバレていないと思っているようだが、女子たちの情報網を甘く見てはいけない。
「さすがに町中で魔物ってのは誇張だと思うわよ。特に狙ってる子もいなそうだし、田舎暮らしが嫌じゃなければ狙い目かもね」
「でも、お金はなさそうよね。あまり良い暮らしはできないんじゃないかな」
着ている服も安物だし、いつも食堂で食べているのはコスパ重視のメニューだ。
「リュカ君は優しいよ。お金持ちじゃないかもしれないけど、幸せってお金だけじゃないし」
これは、最近リュカ君に婚約者との仲を修復してもらったユリの発言だ。
「女性に優しそうってのは重要ね。でも、誰にでも優しい男は危険よ。そういえば、リュカ君ってどの派閥にも属してないわよね」
◇
男子にも派閥はある。
アレクシア様に擦り寄る人たち。アレクシア様はヘインケル様と婚約されているから、彼らの狙いはヘインケル様だ。ヘインケル様が国王になったとき、美味しい目にあおうということだろう。ただ、国王になれるかどうかは微妙だ。
巷では第二王子が国王に一番近いという噂だ。第三王子の派閥は小さい。国王継承レースでは三番目で、利を得られる可能性が少ないからだろう。ただ、公爵家に入る可能性もあり、そうなれば得られるものもある。実家が商家の子とかは彼にすり寄ってる人もいる。
「リュカ君ってアレクシア派じゃないの? この前、アレクシア様と二人で食事をしてたって」
「あれは、ダイアナがヘインケル様とコース料理部屋に入っていったから、仕方なくよ。あのとき私も近くにいたけど、皆、アレクシア様を遠巻きにしてて。リュカ君だけが普通に接してた感じね」
女子寮の夜は、姦しく更けていく。




