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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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97/102

97.卒業

たわいもない話で二人でくすくすと笑いあう。

こんな時は護衛たちは少しだけ離れていてくれる。


「あと一週間もすれば卒業なのね」


「思ったよりもあっという間でしたね」


次の授業の教室へと移動しながら話しているのは、

学園に三学年から編入してきたティナ様だ。


後宮で他にすることがなかったからと、

ずっと勉強ばかりしていたというティナ様は、

優秀な成績で最終学年に編入することを許されていた。


最初は遠慮がちに挨拶されていたティナ様だが、

次第に授業のことなどを話すようになり、

今ではかけがえのない友人となっている。


ティナ様が編入してくるまで、

同じ学年で友人と呼べるほど仲のいい令嬢はいなかった。


それでも顔見知りの令嬢は多く、話すこともある。

学園の他では社交しているから令嬢や夫人とのつきあいもきちんとしている。


だから特に問題には思っていなかったけれど、

こうしてティナ様と過ごすようになって、

それがどれだけ間違っていたのかを知った。


学園で友人と過ごす時間がこれほどまで楽しく、

輝かしい思い出になるなんて思っていなかった。


「ティナ様がいてくれて、とても楽しい一年になったわ」


「それはこちらこそです。本当ならもう卒業している年齢ですし、

 今まで社交もしていませんでしたから、

 一年間一人で過ごすことになると思っておりました」


「そう?ティナ様なら私がいなくても大丈夫だったと思うわよ」


「買いかぶりすぎです」


ほんの少し照れくさそうに笑うティナ様に微笑み返す。


「私はティナ様がいなかったらずっと一人のままだった。

 本当に頼りにしているの。卒業してからもよろしくね」


「はい。精一杯務めさせていただきます」


ティナ様は卒業したら私の側近になる事が決定している。

役職としては王妃の相談役となる。

未婚の令嬢がなるのはめずらしいけれど、できないわけではない。


ティナ様の家族は側妃候補だったことを理由に、

辛い思いをするのではと反対したそうだけれど、

最終的には認めてくれたらしい。


ティナ様はレオンのことを本当の意味で慕っているわけではなかった。

恋物語の登場人物として見ていただけ。

それは私のこともそうだった。


一年、私の友人としてつきあった結果、

レオンが物語のように完璧な人間ではないとわかっているし、

私が友人を作るのが苦手なのもわかっている。


それでもレオンと私を支えるために側近になると言ってくれた。

それが自分の夢だからだと。


「卒業したら、すぐに結婚の準備で忙しくなりますね」


「そうね。あっという間だと思うわ」


「陛下も待ち望んでいますものね」


「ええ」


ルシールとして再会してから八年、

ずっと待たせてしまっている。


「本当に……ようやくだわ」


十八歳になって、学園を卒業する。

もうレオンとの結婚を阻むものは何もなくなる。






卒業の日から二週間。

ついに、レオンとの結婚の日を迎えた。


さすがに結婚式の前は同じ部屋で寝るのは止められ、

私はアルベール家に帰ってきていた。


昔と何一つ変わらないリアーヌの私室で目を覚ますと、

すぐにレナとユーリが朝の準備を始める。


「おはようございます、ルシール様。

 外は素晴らしく晴れていますわ」


「良かったわ。雨なら夜会に集まるのも大変になるもの」


「ルシール様の日ごろの行いがとっても良いからですね」


にこにこと笑いながらも準備の手は休めない二人を見ながら、

差し出されたお茶を飲む。


久しぶりにアルベール家で迎えた朝だけど、

懐かしいはずなのに、しっくりきすぎていて、

あのままリアーヌとして生活していたみたいに思える。


着替えていると、お兄様が来たことを知らされる。


「おはよう、ルシール。朝食に行こう」


「ええ」


準備が終わったとたん、お兄様に抱き上げられて食堂に向かう。


「一人で歩けるのに」


「そう言うなよ。レオンがいないことなんてめずらしいからな。

 ここにいる時くらいはお兄様に甘えなさい」


「もう。お兄様まで過保護なんだから」


レオンがいれば、レオンに抱き上げられてしまう。

お兄様が言うのもわかってしまって、納得するしかない。


食堂ではもうお父様とお母様が待っていた。


「お父様、お母様、おはようございます」


「おはよう、ルシール」


「おはよう、よく眠れた?」


「ええ」


「そう、良かったわ」


そういうお母様の方が眠れなかったのか、目が少しはれている。


着席して食事を始めると、懐かしい味がする。

ああ、これ。私が大好きだった根菜のスープだ。

小さく刻んだ根菜が柔らかくなるまで煮こまれている。

食欲がない時でもこれだけは食べることができた。


やっぱり美味しい。


「ふふ。そのスープ、好きよね。料理長が張り切って作ってたそうよ」


「そうなの?うれしいわ」


「デザートもお前が好きな果実の冷菓だ」


「わぁ、それもうれしい」


昨日の夕食も私が好きなものばかりだった。

何の憂いもなく、アルベール家で過ごせたのはすごくうれしかった。


食事を終えたら、四人で王宮に向かう。

結婚式の準備は王宮ですることになっている。


それまでは家族だけの時間を楽しんでいた。





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