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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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94.話し合い

あきらめて待った三日後。

アンペールの前国王と、少しやつれた前王妃が応接室に入ってくる。


二人は挨拶もなく、いきなり私へと駆け寄ってきた。


「おお、心配していたんだ、ルシール。

 大丈夫だったのか?」


「え?」


「王宮で騎士が暴れるなど前代未聞のことだ。

 やはり、こんな場所にお前を置いておけぬ。

 婚約は白紙にしてもらおう」


「は?」


「レオンハルト国王、孫は返していただく!」


突然のことでレオンとお兄様が対処できずにいると、

前国王は私の腕をつかもうとしてきた。


「おっと、それはダメだろ」


とっさに私を引き寄せ、レオンの後ろへと移動させたのはガイオだった。


「おい!何をするんだ!」


「それはそっちのほうだろ。

 何を勝手に姫さんにさわろうとしているんだ?

 王族だからって、そんな真似許されるわけないだろ」


「孫なんだぞ!!」


血筋としてはそうなのかもしれないけれど。

他国の妃に勝手にふれようとしたらダメでしょう。


「いいかげんにしてください。

 話し合いをするのではなかったのですか?

 話し合いをする気がないのなら、今すぐに退席してください」


「る、ルシール?ただ、お前が心配で」


「勝手に呼び捨てしないでください。

 身内でもないのに」


「身内でもない……?」


いいかげん、はっきり言わないとどこまでも要求してくる気がする。

レオンもお兄様も全部言っていいと言ってくれたし。


「あなたがたが私の祖父母だと言うのは自由ですが、

 私があなたがたを祖父母だと思うかどうかも自由なんです」


「そんなわけないだろう!お前はメリザンドの娘なんだから!」


「それが事実だとしても、関係ありません。

 今の私はアルベール家の娘です。それだけです」


「……やはり、離れて暮らしているのが悪いのだ。

 今すぐにでも連れて帰らせてもらう」


はぁぁぁ。話を聞く気がないのかしら。


「嫌です」


「なっ!?」


「だから、嫌だって言っています。絶対に嫌です。

 アンペール国には二度と行きません」


こんな話を聞かないような者たちがいる国に行ったら、

この国に帰ってこれないかもしれない。


驚きのあまり、言葉が出なくなった前国王夫妻を見て、

レオンが咳ばらいをする。


「とりあえず、座ったらどうだ?

 話がしたくて来たのだろう」


「あ、ああ」


ふらつきながら、二人はソファに座る。

私たちもその向かい側に座った。


「以前も言ったが、ルシールが嫌がるようなら帰さない。

 今、はっきり意思表示されただろう?」


「レオンハルト国王がそう言えと強要したのではないのか?」


「そんな必要なんてない。

 うちの妃は自分の意見くらい自分で考える」


まだ見た目が幼いのか、成人していないからなのか。

無理やり言わされていると思うらしい。


「では、もう一度はっきり言わせてもらいます。

 この忙しいのに他国に行っている暇なんてありません。

 私はもう王妃としてここにいるんです。

 学園の卒業時には結婚するので、その準備も始まります。

 いいですか!私はそんなに暇じゃないんです!」


「……暇じゃないからだなんて」


ようやく事態が飲み込めたのか、前王妃が寂しそうにつぶやいた。


「あのね、私たちは孫と一緒に暮らしたいだけなの。

 いつまで生きていられるかわからないし……。

 だから、お願いよ。成人するまででいいから……」


「では、お二人がこちらの国で暮らせばいいのでは?」


「え?」


「我々がこの国で?そんなわけにはいかないだろう」


「なぜですか?もう国王でも王妃でもないのですよね?

 私がこの国を離れることができないのは確定しているのですから、

 会いたいのならお二人がこちらに来るべきでしょう?」


「それは……」


以前に聞いた時にも不思議だと思った。

私がこの国の王妃として動いている以上、離れられないのはわかっているだろうに。

なぜ、前国王夫妻という身分の者が理解できないのかと。


「それ以外に会う方法はありません。

 それが無理だと言うのなら、話し合いは終わりです。

 帰っていただけますか?」


「そんな乱暴な!」


「そうですか?一緒にいたいと思っていない者を、

 無理やり連れて帰ろうとする方が乱暴でしょう?」


「だが、孫なら……」


「血のつながりなんてさほど大事だと思っていないので」


今、アルベール家のお父様とお母様、お兄様とは血のつながりはない。

それでも大事な家族だと思っている。


ペルラン伯爵を父だと思えなかったように、

この二人も祖父母だとは思えないのだから。


「私のことは他人だと思ってください」


「……どうしても?」


「はい」


無理だと理解できたのか、前王妃が顔を手でおおった。

それを支えるように前国王が背中に手を置く。


それを見たレオンが話を終わらせようとする。


「……もういいだろうか。

 無理な話だとわかっていて、それでも押せば何とかなると思ったのかもしれないが、

 ルシールは頑固だぞ。絶対に言い負かされたりしない」


「……そのようだな。

 だが、安心はした。

 これなら国王に良いようにはされないだろう」


「逆だな。俺が良いようにされている」


「なるほど。それはいい」


なぜかスッキリした顔で前国王が立ち上がる。

そして、まだ泣いている前王妃に手を貸して立ち上がらせた。


「アンペールに帰ろう。たまに会いにくればいい」


「……はい」


「ルシール、時間をとらせて悪かった。

 また会いに来た時には会ってくれるか?」


「……たまにでしたら」


「わかった。では、元気でな。

 困ったことがあれば、いつでも連絡を寄こしてくれ」


そう言って、二人は出て行った。


「これでもう大丈夫よね?」


「あれだけ言われたら大丈夫だろう。

 最後はうれしそうな顔していたしな」


「きっとルシールが孤立しているかどうか不安だったんだ。

 他国の者が妃になって大丈夫なのかと」


「それならそうと、素直に聞いてくれたらいいのに」


「まぁ、あわよくば連れて帰ろうと思っていたんだろうよ」


そういうことなら、やっぱり優しくしなくてよかった。





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