86.背後には
内乱を起こそうとしていた騎士たちとマリアンヌ様たちは牢に入れ、
一人ずつ調べていくことが決まった後、
問題なのはペルラン伯爵のことだった。
「知らないわけはないよな」
「でしょうね。夜会には来ていなかったわよね?」
「ああ。社交を禁じたわけではないが、貴族順位が下がっている。
さすがのペルラン伯爵でも気を落としているのかと思ったが、
マリアンヌのことを考えるとわざと出席しなかったのかと思う」
ペルラン家は公爵家から伯爵家に降爵され、貴族順位も下げられた。
積極的に出てくることはないだろうと思ったけれど、
夜会にまで出て来なくなるような性格はしていない。
「失敗したら自分は関係ないと言い張るために来なかったとか?」
「ありえるな。としたら、今頃は焦っているだろう」
「すぐさま屋敷に捕まえに行く?」
「……いや、牢にいる者たちからペルラン伯爵の名前が出てから、
確実に捕まえに行こう。
屋敷から逃げ出さないように監視はつけておく」
全員の調べが終わるまで何もできないかと思っていたら、
夜になって報告が入る。
「ペルラン伯爵家から報告が来ました」
「ペルラン家から報告?」
「領地にいた娘の行方がわからないと。
王家に恨みを持っているかもしれないから警戒してほしいとのことです」
「……わかった」
報告した騎士がさがる。
レオンもお兄様も険しい表情のまま。
「何が報告だ」
「監視していたが逃げてしまったとでも言いたいのか。
計画には自分は関わっていないと潔白を訴えるつもりだろう」
「そんな見え透いた嘘を信じるわけないだろう」
前回の処罰は私の実父だからと甘いものだった。
だが、内乱を起こしたとなれば許せるわけはない。
「レオン、どうするつもりだ?
処刑するとなると、ルシールにも影響はでるぞ」
「わかっている。処刑は避ける。
……処刑されたほうがましかもしれないな」
「そういうつもりなら、いい」
「ねぇ、処刑されるよりも重い処罰って?」
「そうだな……いくつかあるんだ。
決まった時にはきちんと教えるから」
「……わかったわ」
また子供扱いされているのかもしれない。
王妃になるのだから、そういうことも避けないでいたいのに。
ふくれていたのか、お兄様から頭をなでられる。
「まだ決まったわけじゃないから」
「それはわかっているの」
できれば一人で悩んでほしくない。
苦しいこともつらいことも全部を聞きたい。
それはわがままな望みなんだろうか。
次の日から、牢に入れた者たちは厳しい調べを受けた。
何度も何度も同じことを聞かれ、黙れば殴られる。
他の者と証言が違えば、また最初から聞かれる。
いつまでたっても取り調べは終わらない。
六日後、ようやく全員の証言がそろった。
やはり裏にいたのはペルラン伯爵だった。
ペルラン伯爵はレオンと王位継承権を持つお兄様を同時に殺害し、
王宮を乗っ取ろうとしていた。
そして、何も知らないお父様も呼び出し、
騎士たちに殺させるつもりだった。
この国の国王になれるのは龍人の血を持つ者だけ。
だから、他の者を全員排除する予定だったらしい。
自分こそが国王にふさわしい。
そして、自分の息子を王太子にすると。
その考えだけで動いていた。
ペルラン伯爵が国王になると言った場合、反発する者がでる。
自分が国王になることを認められなかった場合は、
幼い息子を国王にして後見するという念入りな計画だった。
他に龍人の血を持つ者がいなければ、
貴族たちもそれを認めるしかない。
レオンとお兄様が薬入りのお茶を怪しまずに飲んでいたら、
その通りになっていたかもしれない。
私が狙われたのは、身ごもっている可能性があるからだった。
もう十七歳。レオンと同じ部屋で寝ている。
そう思われても不思議ではない。
もし私が子を産んで、その子が龍人の血であれば、
身分の高さから私の子が国王になる。
それを恐れたからだ。
すべてはペルラン伯爵と、その息子が国王になるため。
マリアンヌ様は父親に命じられていた。
もっとも、ペルラン伯爵が国王になれば、マリアンヌ様は王女になる。
レオンが命じた社交禁止もなかったことにできる。
社交界に返り咲くために、それに懸けていた。
騎士たちも同じようなものだった。
王宮騎士に戻れたものの、近衛騎士には戻れない。
マリアンヌ様に従って、内乱を成功させたら、
近衛騎士として取り立てると言われていた。
中には成功したらマリアンヌ様の婿になれると思っていた者もいた。
どちらにせよ、自分たちの欲望のためにあんなことをしたようだ。
減刑される理由は一切なかった。
「よし、騎士団をペルラン伯爵家に向かわせる」
「捕まえにいくのね」
「ああ。これでペルラン家は終わりだな」
全員の証言を証拠に、ペルラン伯爵家が調べられることになる。
屋敷内の証拠は捨てているだろうけれど、かまわない。
「ユウリ、ラルフ、騎士団と一緒に行ってきてくれ。
執務室の書類なども全部押収してほしい」
「やったぁ!行ってきます!」
「全部、持って帰ってくればいいんですね!」
「ああ、頼んだ」
なぜか監視を頼まれた二人が喜んでいる。
でもまぁ。これでペルラン伯爵家に悩まされることはなくなる。
そう思えば喜んでいても当然なのかも。




