84.襲撃犯
おとなしく待っていようとしたら、勢いよくドアが開いた。
そこにはぽかんとした顔のレオンとお兄様がいた。
「……は?」
「なんだ……?」
「レオン!お兄様!」
ジニーの手を放して駆け寄ると、二人が抱きとめてくれる。
「ルシール!ってことは、こいつらを倒したのはガイオか?」
「ええ、そうよ」
ガイオは少し離れた場所で倒れている女性を縛り上げている。
「おう!陛下たちも大丈夫そうだな」
「ああ、その女が俺たちをここに連れてきたんだ。
それにしても、どうしてルシールを連れてきたんだ」
「そんなの、ここが一番無事だって姫さんが言うからさぁ」
「なに?」
「ルシール、そういう時はおとなしく待っていろと言っただろう?」
レオンとお兄様が怒るのはわかるけど、今回は仕方ない。
「だって、おとなしく大広間で待っていたら、
知らない女に外に連れ出されそうになったんだもの。
女官の制服を着た偽物が王宮内にいたのよ?
どこにいたって危険じゃない」
「……それはそうだが」
「……待つのも危険だったのか?」
まだ納得がいかないような顔をしているけれど、
大広間も危険だったことは理解してくれたようだ。
「もう陛下たちと合流したから、俺は捕まえに行ってきてもいいよな?」
「捕まえに?誰をだ?」
「姫さんを連れ出そうとした偽物の女官」
「顔を覚えているのか?」
「いや、さっきあやしいってわかった時に目印つけといたんだ。
魔術で追っかけて捕まえてくるから」
「そうか。頼んだ」
「はいよっ」
ガイオがものすごい速さで走っていくのとすれ違うように、
騎士団長がこちらに向かってきた。
どうやら私たちを追いかけてきたらしい。
「あ!陛下!ご無事でしたか!!」
「ああ、騎士団長。あの者たちは牢にいれてあるな?」
「そ、それなんですが、あいつらは何をしたんですか?」
「ん?知っている者なのか?」
「知っているも何も、騎士団の一員です!」
「偽物じゃなかったのか……」
さきほど王族の控室で縛られていた者たちは、
本物の騎士団員だったのか。
「本物です。以前は近衛騎士でした」
「以前は?」
「あの香の事件で離宮に飛ばされた者たちです。
最近王宮勤務に戻しましたが、外宮の警備をしています」
「あぁ、あのおかしくなっていたやつらか」
思い出した。
マリアンヌ様が後宮で香をたいたせいで、
殴り合いをして順番を争った者や、後宮に居座ろうとしていた者たち。
香が原因だとしても処罰しなければならず、
全員を離宮に配置変えしていた。
あの時の騎士たちが戻ってきていたとは。
「今は香の影響もなくなり、元に戻っているはずです。
いったい何をしたというのですか?」
「俺とユリウスに剣を向けた」
「ええっ!?」
「本気で切りかかってきた。
だから、倒して縛り上げておいた」
「そんな陛下に剣を向けるなんて……」
「偽物の騎士ならまだマシだったな。
あれは襲撃ではなく、内乱だ」
「……本当なのですね?」
「ああ。本当だ。
そもそも近衛騎士じゃない者がどうして王族の控室にいたんだ」
「……はい。そうですね……わかりました。
一人ずつ牢にいれるように手配します」
「ああ、頼んだ。背後関係もふくめて聞き出してくれ」
「はい……」
自分の部下が内乱を起こしたことに衝撃を受けたのか、
騎士団長は肩を落とした。
それでも自分の責任を忘れていないからか、
自分の頬をパーンと音がなるくらい叩いてからテキパキと指示を出し始めた。
「さて、どうするかな。とりあえず夜会をどうするか。
ルシール、大広間の様子はどうだった?」
「偽物の女官が声をかけられた時は、ちょうど人を遠ざけていたの。
だから、周りには聞こえていなかったはずよ」
「何かが起きていることはわかっているのか?」
「私がガイオとジニーを連れて大広間から出たのは見ていたでしょうね。
何事か起きたんだと気がついていると思うわ」
「そうか。
では、俺の体調不良により夜会は途中だが閉会ということにしよう」
「わかった。そう手配してこよう。
レオンとルシールは執務室に行っていてくれ。
むこうのほうが安全だろう」
「ああ、頼んだ」
夜会のことはお兄様に任せ、レオンとジニーと執務室に戻る。
騎士団長が警備を強化しているのか、慌ただしく動く騎士たちを見かける。
「……まさか、本物の騎士だとはな」
「処罰はより重くなるわよね」
「ああ。本人だけの処罰ではすまないな」
ただの賊なら本人だけの問題で済むが、
レオンに忠誠を誓っているはずの騎士が内乱を起こすとは。
何を思ってそんなことをしたのか。
香のせいで出世が遅れたとしても、レオンにそれを向けるのは間違っているのに。
執務室で待っていると、先に戻ってきたのはお兄様だった。
「夜会のほうはお開きにしたよ。
うすうす何かあったことはわかっていたからか、不満の声はでなかった。
だが、アンペールの前国王夫妻が怒っていたな」
「そういえば、大広間で話そうと言ってたな」
「あとで連絡すると言って客室に戻ってもらった。
何かあったらまずいから、近衛騎士に警備させるように命じてきた」
「そうだな、それがいい」
そういえばアンペールの前国王夫妻と話し合うために出て行ったんだった。
どうやら話は途中で邪魔されたようだ。
「話し合いは終わってないのね?」
「ルシールの意見が聞きたいそうだ」
「私の?」
「ああ。このままノヴェル国にいるか、
結婚までアンペール国に行くか」
「そんなのこのままここにいるに決まってるじゃない」
「そうだよな。あとでそれを言ってくれればいい。
それよりも、先にこっちを落ち着かせないとな」
「捕まえた奴らから首謀者が聞きだせるといいんだが」
「そうだな……」
レオンとお兄様がため息をついた時、
窓からコンコンと音がした。
「え?……えぇ??」
「何してんだ!ガイオ!」
「ちょっ、どこから入ってこようとしているんだ」
ガイオが窓の外から入ってこようとしていた。
廊下から入ってくればいいのに、と思ったが、
女性二人を捕まえたらしく担ぎ上げている。
「そいつが犯人か?二人いたのか?」




