82.襲撃(レオンハルト)
前国王夫妻がゆっくりと立ち上がって部屋から出ていく。
それを見届け、ドアを閉めた。
「……お前たちはどこの所属の騎士だ?名乗れ」
「っ!!」
企みがバレたと思ったのか、その場にいた騎士三人が剣を抜く。
国王と宰相に剣を向ける騎士なんているわけがない。
「やはり偽物か!」
「偽物ではない!!」
俺に切りかかってくる騎士をユリウスが魔術で吹き飛ばす。
向こう側の壁にぶつかって、手から離れた剣が転がる。
その剣を拾い、次に向かってきた騎士の剣を受けて衝撃をいなす。
この程度の腕の騎士が相手なら切り捨てることは簡単にできるが、
殺してしまっては何を企んでいたのか聞き出せない。
手加減できるか悩みながら相手をしていたら、その間にユリウスがもう一人を倒していた。
「レオン、何遊んでいるんだ!」
「遊んでなんかない!殺してしまったら首謀者がわからなくなるだろ!」
「殺さなくても魔術で無力化すればいいだろうに」
そう言いながら、俺に切りつけようとしてきた騎士に向かって火炎をぶつける。
相手は一瞬で火に包まれ、転がって剣を落とした。
俺よりもユリウスのほうが実戦慣れしているからな……。
最近、平和だったし忙しかったせいでまともに訓練していなかった。
これが終わったら、反省して真面目に訓練に出ようかな。
「とりあえず、捕縛しておこう」
「ああ」
騎士たちを縛り上げた後、ドアを開けようとしたが動かない。
誰かが向こう側で押さえつけているようだ。
「閉じ込めるつもりか!」
「レオン、もしかしたら狙いはここじゃないのかもしれない」
「なんだと!?」
「私とレオンを狙うにしては人数が少なすぎる。
ここが本命だとは思えない。もしや、ルシールなのか!?」
「っ!!ルシールを狙わせてたまるか!」
身体強化させた足でドアを蹴とばすと怒りのあまり力が制御できず、
思った以上の破壊力で吹き飛んだ。
向こう側で押さえていた騎士だと思う者が離れた場所で倒れている。
それを見ていたのか他の騎士が腰を抜かしていた。
「わ……」
「ここで何をしている」
座り込んだ騎士の胸倉をつかみ、問いただす。
「首謀者は誰だ?狙ったのは俺たちだけか?」
「……あ、あの……俺は何も……」
「何も知らない、と?」
「こ、ここで待機していただけで……何もしていません」
「王族の控室近くにいて、ドアを押さえ込んでいる不審者を見ても、
何もしていない騎士がいてたまるか。ユリウス、こいつも縛って」
「了解」
ユリウスに渡すと、すぐに縛り上げて控室の中に放り込んだ。
あとからきっちり調べさせてもらうか。
これだけ大騒ぎしたなら騎士が駆けつけてくるはずなのに、静かすぎる。
誰かがこのあたりの警備を薄くしていた?
この襲撃は王宮内の者が手引きしている……。
まずいな。ただの賊ではないな。
「ユリウス、とにかく一度戻ってルシールと合流しよう」
「ああ、それがいい」
走り出そうとした時、後ろから女の声がした。
「陛下、宰相様、ルシール様は避難しています!こちらです!」
「本当か!」
そこにいたのは王宮女官だった。
「ルシール様もお命を狙われていると思い、先に避難していただきました」
「そうか」
「案内しろ」
「はいっ」
王宮女官が急ぎ足で奥に向かうのを追いかける。
ルシールのそばにはガイオとジニーがいるし、
避難しているのなら大丈夫だろう……だが、この胸騒ぎはなんだ?
「レオン……おかしくないか?」
「お前もそう思うか」
ユリウスもそう感じたようで小声で聞かれる。
この奥には貴族の控室がいくつかあるが、ルシールがなぜそんなところに?
王族の控室で事件があったのなら、そこから離すべきなのに、
大広間からこちら側に連れてきたことになる。
これは罠かもしれない……。
引き返して大広間に向かうことも考えたけどやめた。
ルシールのことは護衛たちが守っている。
ならば、俺とユリウスで首謀者を捕まえるほうが先だ。
敵が待ち構えているのをわかった上で、女の後をついていった。
「この部屋です」
「ああ、わかった」
どこかの貴族の控室のドアを開け、女が微笑む。
見覚えがない女だ。王宮女官ではないな。
わかった上で部屋の中に入る。
すると、すぐにドアは閉められた。
「やはり罠か……」
騎士が隠れているのかと思ったが、応接間には誰もいない。
奥の部屋に誰かいるのかもしれない。
ふと、足元から煙があがってくるのに気がついた。
「ユリウス、煙だ。火事か!?」
「……いや、毒物かもしれない。レオン、吸わないように。
窓を吹き飛ばすから」
袖で口をおおい、煙を吸わないようにする。
ユリウスが圧縮した風を窓にぶつけ、吹き飛ばした。
と同時に部屋の中をぐるりと風がまわり、外に煙を運んでいく。
ほんの少し煙を吸ったのか、指先がピリピリする。
「どうやら身体をしびれさせて弱まらせるものだったようだ。
レオンの身体は問題ないか?」
「ああ、ほんの少し吸っただけだ。問題ない。
おそらく外に数名、敵が待機しているな」
「私たちが弱まるのを待つつもりだったんだろう。
さっさと片付けてしまおう」
窓枠がなくなるほどの威力で吹き飛ばしている。
ドアの向こうにもそれは聞こえていたはずだ。
なら、俺たちが弱体化していないとわかっているはず。
出てくるのを待ち構えているかもしれない。
「行くぞ、油断するなよ」
「ああ」
ドアを蹴とばして開け、廊下に出る。
「……は?」
「なんだ……?」
敵が待ち構えていると思っていた廊下には、
数名の騎士と王宮女官の制服を着た者たちが転がっていた。




