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幸せになるために私ができること  作者: gacchi(がっち)


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81.前国王夫妻との話し合い(レオンハルト)

まさか夜会の最中に話したいと言われるとは思っていなかったが、

焦っているようにも見えるのはこの国に長期滞在したくないからか。


前王妃の体調がと言っていたように顔色が悪い。

話してしまって早々に帰国するつもりなのかもしれない。


王族の控室に入り、ソファに座る。

身分としては現国王の俺の方が上だが、向こうの方がはるかに年上だ。

前国王夫妻は俺に許可を取ることなくソファに座る。


「それで、話というのは?

 夜会の最中に話したいほど緊急なことが?」


「緊急というか、夜会が終わったらルシールを連れて帰りたい」


「連れて帰る……?」


「ああ、そうだ。結婚するまでまだ二年あるのだろう?

 だったら、それまで母国で過ごさせるのが当然だ」


母国ね……生まれただけだが、前国王にとってはそれが当然だと。


「ルシールはもうすでに妃として認められている。

 王妃を連れて帰るなんてできるわけないとわかるだろう?」


「なぜもう仕事をさせているんだ。まだ学生なんだぞ?」


「それをルシールが望んだからだ。

 俺やユリウスを助けたいと」


実際には一人だけ何もしないなんて耐えられないと言い出したのだが。

俺やユリウスが忙しければ、ルシールは一人で過ごさなくてはならなくなる。


そうなるくらいなら一緒に仕事をして、

三人で過ごす時間を作り出したほうがいい。


「そうするように誘導したのだろう。

 あぁ……なんてことだ。ルシールが不憫でならない」


「不憫?」


「そうだ。メリザンドがいなくなって放り出されてしまった。

 メリザンドが生きていれば、ルシールは今もアンペール国で幸せに暮らしていた」


「私たちはメリザンドの代わりにルシールを大事にしたいのです。

 だから連れて帰らせてちょうだい」


前国王夫妻は何も知らないのかもしれない。

元第三王女がどういう風にルシールを育てていたのか。


「元第三王女が今でも生きていたら、ルシールは不幸なままだっただろうな」


「なっ!?」


「何を言うのですか!!」


「ルシールは十歳で解放されるまで部屋から出してもらえなかった」


「……は?」


「何の話なの?」


やはり知らなかったのか。


「ルシールはその存在を知られないように部屋に閉じ込められて育った。

 母親とはたまにしか会えず、そばにいたのは乳母だそうだ。

 家庭教師はつけられても、途中から来なくなっている」


「そんなはずはないだろう!王族の血を引く子だぞ!」


「だが、誰もその存在を知らなかったのだろう?

 祝福もされず、家族と交流もせず、窓のない部屋で一人。

 十歳で外に出された時はまぶしくて目を開けられなかったそうだぞ」


「嘘でしょう……まさか、メリザンドがそんな」


「よほど知られたくなかったんだな。

 別邸だからといって自由にさせていたら噂になる。

 信頼できる者にしか会わせなかったんだろう。

 で、母親の代わりになんだって?」


「……まさかメリザンドがそんなことをしていたとは知らなかったんだ。

 なら、その分も我々が愛情をかけて育てよう!だから!」


「ふざけているのか!!」


ルシールがどんな境遇で育ったのかを知っても、

まだ連れて帰ろうとする前国王に思わず怒鳴ってしまう。


「ルシールはこの国にきて、ようやく家族ができたんだ。

 今、やっと幸せに暮らせているのに、また引き離す気なのか!」


「そんなっ。私たちは家族なのよ!?」


「二度しか会ったことがない者を家族と思うわけないだろう!」


「……だが」


「何を言われてもルシールが嫌がることはさせない。

 アンペール国が何を言ったとしても、ルシールはこの国の貴族だ。

 そちらが親権を持つことはない」


「我々の孫なんだぞ!」


「アンペール国でも親権を持つのは父親だろう?

 だったら、母親が誰であっても関係はない。

 祖父母なんてもっと関係ないだろう」


「……」


これは貴族法だ。

父親がよそで産ませた子を引き取れるようにそうなっている。


もっとも、愛人の子を引き取るための法であって、

不貞の子のためではないと思うが。


元第三王女が亡くなっていることもある。

親権を持てるのは実の父親であるペルラン公爵だけ。


そして、養女となったルシールの親権はアルベール家の前当主が持っている。


「ルシールを連れ出すことは俺だけじゃない。

 今の父親である元アルベール公爵も認めないだろう。

 そうだろう?ユリウス」


「ええ、そうですね。父も母も認めないでしょう。

 兄である私も認めることはありません」


「君が家族だというのなら、我々の気持ちもわかるだろう。

 孫と一緒に暮らしたいと思って何が悪いのだ!」


「思うだけならいいのでは?

 それをルシールが嫌がったら終わりということでしょう?」


「っ!!では、ルシールに聞こう。

 メリザンドの子なら、我々の願いを聞いてくれるはずだ!」


どうしても納得する気はないのか。

仕方ないな。ルシールを呼びに行かせるか。


近くにいた騎士にルシールを呼びに行かせる。

その騎士が外に出た後、別の騎士が俺たちの前に飲み物を置いた。


「これは?」


「話し合いで喉が渇いたのではないかと思い」


「必要ない。下げてくれ」


「……そうですか」


なぜ侍女でもない騎士が飲み物を置くのか?


普通、王族の飲み物は専属の者に用意させる。

喉が渇くような状況であっても、勝手に用意するなんてありえない。


そういえば、この騎士は近衛騎士ではないのにどうして王族の控室に?


先ほどルシールを呼びに行かせた騎士とこの部屋にいる三人、

予定していた配置にはいなかった騎士だ……。


疑問に思ったのは俺だけではないようで、ユリウスと目が合う。


「……前国王夫妻、夜会の会場に戻ろう」


「なぜだ?ルシールを呼びに行ったのではないのか?」


「戻ったほうが早い」


「……休ませてほしかったのだがな。仕方ない」


前国王夫妻がゆっくりと立ち上がって部屋から出ていく。

それを見届け、ドアを閉めた。


「……お前たちはどこの所属の騎士だ?名乗れ」


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